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神様とのキャッチボール
1.落ちてきた
 少年はいつも一人だった。しかし少年は一人でも淋しくない。大きな大きな空がいつもキャッチボールの相手をしてくれるから。


 少年は日に日にボールを投げる腕前を上げていった。今ではおもいっきり投げるとキャッチするまで5分も待つほどである。しかしだれもその才能を知らない。少年さえ自分のすごさを自覚していない。


 少年はめったに本気を出すことはない。落ちてくるまで待ちぼうけとなってしまうからだ。その才能ゆえの悩みである。


 ある日少年はいつものように大空とキャッチボールしていた。今日の澄んだ青空にはぽつんとぽつんと白い雲が浮かんでいる。少年はなんだかその雲目がけてボールを投げたくなってしまった。ちょうどいいぐあいに自分の真上に雲が来そうである。



 少年は構え、そしておもいっきり投げた。ぐんぐん昇っていく。ボールの白と雲の白が重なり合いどこにボールがあるか分からなくなってしまった。


 少年の首が痛くなり、雲が位置を大きく変化させたころである。青空の中に白い点が一つ浮き出てきた。少年はボールをなんともなくキャッチした。そしてボール以外にも何かが落ちてきていた。少年はそれを目視して気づいていたが特に気にしていなかった。




 ――ズゴーン




 轟音とともに砂ぼこりがたち周りが見えない状態となった。少年の顔には砂がかかり口に入った砂をぺっぺと吐き出した。


 ほどなくして砂ぼこりは落ち着いた。少年は精一杯砂埃をはらったがまだ若干ざらつきが残っている感じがした。それは仕方がないなと思い、落ち着きを取り戻したころ一つ気づいた。



 そういえば落ちてきたものは人型ではなかったか、ということだ。



 少年は降ってきたものが墜落した場所に近づいた。そこにあるのはただのヘコミではなく、ある程度の深さのある穴だった。少年がその穴を覗き込もうとしたその瞬間――


「イタたたた……」


 にょきっと穴から手が生えてきて地面をつかんだ。


「よっこらしょ」


 掛け声に続けて頭、身体がその穴から生えてきた。そして最後には足で直立し衣服についた砂をはらっていた。


 今は後ろ姿で顔が見えないが背丈や雰囲気から年は少年と同じくらいのようだ。髪は短髪、服は白いワンピースのようなものを着て少年か少女か判断しにくい風貌である。


「君は誰?」


 少年が疑問を投げ掛けるとともに目の前の人物はこちらに振り向いた。少年はもう一度同じ疑問を繰り返した。すると目の前の人物は答えた。


「ボク? ボクは神様だよ」

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あきゅろす。
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