TickeT
待ち受ける壁(3)
「御免下さい。チケットの件でなんですが……」
そんな言葉が聞こえて来るのも期待していた。
しかし、扉の向こうの人は何もしなかった、何も言わなかった。
そこに在るのは、僕と、扉を挟んだ向こう側の存在だけ。その他は無。
僕が近くにいる事に気づいた様子さえ見せない。その人も扉の向こうで、ただじっと立っていた。
それを感じて、僕は忽ち不安に襲われた。
「どうして立っているだけで何もしないんだ」
「これがチケットの齎した『運命』なのか」
「目の前にいる人は、僕を待ち受けている『死』なのかも知れない」
「────」
僕の頭の中は、そんなたくさんの小さな泡で一杯になっていった。
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