詩集 そらまめ そら豆はたまねぎとか根菜みたいにしゃべらない 口をきかずにずっと縁側の椅子に座っている 夜になれば横になって眠る 朝が来れば目を覚まして起き上がる そうやって座っているうちにしなびて ひび割れてかれていく 茶色のかさついたさやが雨をはじく ぼくは、一度だけそら豆に声をかける 「きみはよく燃える?」 そら豆は座っている椅子の前足を少し浮かせて、 またもどす かたん それから彼はもう一度椅子の前足を浮かせる その足がまた鳴る前に、 僕はそら豆の手をひいて焼却炉へ行く 彼の座っていた椅子はそのまま倒れた がたん。 ごう。 晴れた日に、彼はよく燃えた 彼を焼いた焼却炉は、夜には冷えてつめたくなった 椅子はまだ縁側にある 朝も夜も、あの縁側で倒れたままだ ←→ |