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詩集
飴玉
ぼくのいるここは内側だと聞いた。
学校の帰り、ろうちゃんが言ったのだ。
ここは内側で、つまり僕のいるここも内側だと、
ろうちゃんは少しくぼんだ目のおくで言ったのだ。
内側のひとたちはいつも外側のひとたちに見られていて、
外側のひとたちは、むしゃくしゃしたり、ひどく辛いものをたべたときに、
内側のひとたちをつまむのだ。
ふれんちふらいを、指でつまむみたいに、
ぼくらがときどき頭からうきあがったり、のどのおくをつきとばされたりしたときは、
外側のひとたちが内側をながめているときなのだ。
そして外側は、とりたての青菜のようなくすぐったくてこぎれいなにおいでいっぱいなのだという。
そのにおいのなかで、外側のひとたちはきらきらひかるキャンディを買ってたべる。
たべながら、内側のひとたちをつまむのだ。ぼくたちを。
らっきいすとらいくをすいながら、ぴあのをひきながら、ぶらんでーをのみながら、
マッチの火を消すみたいに。
それからいいにおいのするちいさな部屋で、きちんと上を向いて眠る。
ひとりか、ふたりで。
そんなことを話して、ろうちゃんはぼくにきらきらのあめ玉をくれた。
それはみがいたたまむしみたいにまん丸で、
知らないくだもののあまいにおいがした。

ぼくがあめ玉を受けとると、急に雨がふった。
晴れた空に、たちまち虹ができた。
ろうちゃんを見ると、雨にあたってずぶぬれになりながら、
空に向かって何か話していた。
くぼんだ目のおくに、雨がたまっていた。
ろうちゃんは目を開いていた。
まばたきをするたびに、ぱしゃん、ぱしゃんといって、
目にたまった雨がはねた。
ぼくはすこし目を細めながら、ろうちゃんに、帰ろう、と言った。
なんだかいいにおいがしていた。
みずみずしくて、鼻のおくがきらきらするようなにおいだった。
そうか、これが外側のにおいなのだな、と思った。
外側の雨がふっているのだ。
ろうちゃんがぼくを呼んだ。
くぼんだ目から、たまった雨が流れ出していて、
ろうちゃんははんぶんわらいながら涙を流しているような、へんな顔をしていた。
ぼくがろうちゃんのほうへ歩きだすと、
えりくびにだれかが触れたような気がした。
ぼくは鼻から大きく息を吸って、ぐっと空のほうを見ながら、
ろうちゃんのくれたあめ玉を口に入れた。
ろうちゃんはまだあのへんな顔のまま、ぼくを待っていた。



あきゅろす。
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