詩集
平成-
「ねえ、暗いね」
「ろうそくももうないよ」
「明るい曲がいい」
「明るいのを弾いてよ」
「あぶらのつぶみたいに」
「明るいのを弾いてよ」
「アルミホイルはここにあるから」
「どこかに水のボトルがないかい」
「ライターがあればそれも」
「それにおいでわかるの?」
「わかるよ」
「においにだって明るいのと暗いのがあるんだ」
「鼻のおくで白ごまみたいに光るのが明るいほう」
「鼻のおくで
「黒ごま?」
「黒ごま」
「水はあった?」
「これ」
「ライターも」
「白ごまはあった?」
「あるよ」
「もう弾ける?」
「弾けるよ」
「大きな音だ」
「きっと明治時代の午後二時みたいに明るくなる」
「昔」
「昔だ」
「ずっと昔の太陽」
「こわくはない?」
「うん」
「でもなんだかあついね」
「窓をあける?」
「逃げない?」
「逃げないよ」
「歌もけむりものぼるだけだ」
「昔に」
「昔の空に」
「ねえ、外もあついね」
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