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詩集

火の揺れる
ウオトカに触れた
綿のカーテンに火がつき
火の揺れる
白のカーテンに触れた
綿の絨毯が炎にまみれる
燃え立つ白の絨毯から
火は死体に燃え移り
瞳孔が
ひらききったまま眠る
彼女の眼が黒く焦げて
じっとした
火のうつる
瞳が崩れ
それからようやく
もうひとりの彼女が
オレンジ色の舌を
振り回しながら
ふたりで
死んでいくのね
と言った
漸く
と付け加えて
言った
壁に寄りかかったままの
死体とぼくと
きみは
三人で燃え出して
死んでいく

僕は思った
これから
と付け加えて
影のない床を見つめ
思った

ちらちらと
膨張する部屋の中で
僕は彼女と
性交をしながら
母に向け
膨張の中で
燃えていこうとする
母に向け
それでは
と思った
この部屋は暗いから
気をつけて
と付け加えて
火の揺れる
死体を見つめて
思った

彼女は痙攣していた
ちらちらと
膨張する部屋の中で
われわれは
強く痙攣していた

はげしく窓が弾け
おびただしいガラス屑が
僕の背中に刺さり
そのいくつかは
あらぬほうへ
母や
その瞳へとび
僕はふたたび
この部屋は暗いから
気をつけて
と思った
眼に
煤が痛い
と付け加えて
崩れゆく部屋の中で
燃え盛る三人とともに
僕は
強く痙攣しながら
思った
いつのまにか眼を開けた
彼女が
これから
燃えていく三人を
つぎは
どこで
誰が産むのかしらね
と言った
この部屋は暗いから
誰も知らない
けれど
と付け加えて
言った

僕はグラスを握り
母に
一杯のウォッカを
さばさばと掛け
この部屋は暗すぎる
と思った
あなたの顔が
見えない
と付け加えて
思った

床の染みのような恋人には
それじゃあ

言った
何も付け加えずに
それじゃあ

言った



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