二次創作/夢 どうせなら、興味を抱いたその先、知識の渦にのまれて死にたいのだ。そうして私は未知へと手を伸ばす。 「おねーさんが最近噂の“奇人スポンサー”?ただの美人さんにしか見えないけどな〜」 「これはこれは。 私は岸川朔という特別開発室の責任者兼スポンサーさ…その徒名についてはあえて口を閉ざすとしよう」 「おお、ご丁寧にどうも。俺は玉狛支部所属のエリート隊員、迅悠一という者です」 「ほほう、自らエリートと名乗るとは…大層自信を持ってらっしゃるようだ。しかし、驕っている様子もない…君も中々の人材じゃあないか。 知り合いついでに一つ聞きたいのだが、良いかな?」 「どうぞどうぞ〜。」 「君はサイドエフェクトの持ち主か?はいかいいえだけでいいぞ」 「…何でそう思ったの?」 質問に答えず質問で返した迅を怒ることなく、朔は至極簡単な推測さ、と言った。 「なに、私は本来研究者であって開発はその延長上という事さ…興味ある物は全て頭に入れておきたいタイプなのでね。 今この組織に属する者の持つサイドエフェクトは、全て把握している。加えて、このような早朝に私が此処の通路にいると知ることの出来るサイドエフェクトは未来視だけだ」 「すごいね、俺のサイドエフェクトまで当てちゃうなんて…読み逃したかなあ」 「ついでにもうひとつ言っておこう。 真偽の分からない噂の人物に、わざわざ早朝から会いに来る君も奇人の類に入っているぞ」 「あらら。じゃあ俺達似たもの同士か… コンビでも結成しちゃう?」 「ふふ、それはまたの機会にかな」 会話がとぎれて、互いに薄い笑みを交わしながら探るように見つめ合う。 朔は迅がわざわざ自分に会いに来た目的を理解っていたし、彼もまた彼女にその目的が見破られている事を理解していた。 「心配しなくても、私は君の描く予想図に干渉することはないさ。君がそれを望むなら話は別だけどね」 「え、じゃあ協力してって言ったら?」 「私の好奇心をくすぐる何かがあれば」 「なーるほど。 今日会いに来て良かったよ、どうやら岸川さんとは仲良くやれそうだ」 「それは光栄だな。私も君からの楽しい誘いを待つとしよう」 朔は近くにあった自販機に小銭を入れて缶コーヒーを二つ取り出し、その片方を迅に投げ渡した。それを受け取って礼を言った迅だったが、何故自分にくれたのかを尋ねるような目をしている。 訝しげなその顔を見て笑いを零した朔は、自分のコーヒーのプルタブを開けた。 「荒船くんと同じ顔だな、迅くん。 彼もコーヒーを投げたらそんな感じだったよ」 「荒船と既に会ってたの?それは知らなかった」 「ふふ、彼は良い目を持っている。 私はあの子が気に入ったようだ…新たなオプショントリガーの開発とそれに伴う戦術の変化について小一時間語り合うくらいにはね」 「へえ、じゃあ俺もそれに準ずるって思っていいの?このコーヒーは」 「好きにとれば良いさ。 そもそも私は面白く感じなければ興味を持たないのでね…私の気を引きたいなら、よくよく観察してからにしてくれたまえよ、迅くん?」 「……肝に銘じておくよ」 「好きこそ物の上手なれと言うが、私はその言葉に全面同意しよう。好きだからもっと知りたい、やってみたい、上手くできるようになりたい…そう思うのは必然、だって好きなんだから。 そもそも、好きという感情は先立って興味を抱くということだ。興味はその人の意識をそちらへ向ける、いわば誘導装置みたいなものさ。大事だろう? 例えば会議のプレゼン、しっかりと自分の意見を聞いてもらえるかというのは、イコール興味を持ってもらうという事。またある絵画が目当てで人々が展示会に足を運ぶのは、その絵画が持つネームバリューなり歴史価値なり、何かに興味を持ったことが理由だ。 私の全ての興味は、面白さに直結している。悲しむより、憎むより、面白さを求めた方が何倍も人生は輝く…そうやって私は生きてきたし、これからもきっとそうだ。 否定するか?それもいい。これはあくまで持論であって、押し付ける為の考えではないからな」 [*前へ][次へ#] [戻る] |