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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story66 謎の土地 謎の屋敷



カラーカウンティーを出発してから早5日。


天気はすべて快晴。


何もかもがうまくいっていたはず。


いや
うまくいくはずだった。


「・・・・・で、ここどこ。」


「あはは。何処でしょうか。」



本来なら3日でコットンカウンティーにたどり着いているはず。


なのに5日たった今
リオナ達の目の前にあるのは明らかにコットンカウンティーではない。


"国"というより"村"だ。


しかも村のくせに周りは高い塀で覆われており、
入り口と思われる所には警備員らしき若い兵士が何人もいた。



こんな得体の知れない国だか村だかにやすやすと入るのも気が引けたため
リオナ達はとりあえず入り口付近の野原に腰を落とした。


「はぁ〜。またやっちまった。だから俺を先頭にするのは間違ってんだって。」


「・・・・・・・。」


「リオナくん何その目。もしかして責め立ててる?やっぱあの時左に曲がっとけばよかったって思ってるんでしょ?」


「・・・・いつものことじゃん」


《確かにぃ。》


「マー兄はほーこーうんちだからね」


「うんちじゃなくて方向音痴ねクロード君。」


全員から非難を浴びるマーシャだが
それは自業自得であった。


カラーカウンティーをでてから
マーシャは得意気に地図を片手に前を歩いていた。


だが彼の稀におこす方向音痴が心配で
リオナも後ろから地図を確認しながら歩いていたのだ。


しかし
マーシャはリオナが道が違うと言っても「いや、こっちだ。」と言い張り
案の定こんなわけもわからない場所にたどり着いてしまったのだ。


「悪かったってぇ。それにしても俺って方向音痴だったんだな。」


「・・・・・・・そう。」


「それにしてもここはなんなんだ?地図にすらのってねぇぞ?」


確かに地図にはなにもかかれてはいない。


だがこれで1つはわかった。


今目の前にあるのは"国"ではないということ。


しかし自分たちが今どの辺りにいるのかが全くわからない状況だ。


《ねぇねぇ!オイラがビューンって飛んで見てきてあげよっか!》


「普段リオナの頭の上で楽してる奴が無事に帰ってこれるわけがないだろ。落下して"助けてぇ!"ってことになっても俺助けねぇから。」
「・・・・・俺も。」
「僕も・・」


《ヒドッ!!!》


「せめてここがどこだかわかればなぁ。勘で行ってみるか?」


「・・・・冗談」


「あはは。じゃあさ、あそこに立ってるイカツイ青年さん達に聞いてみるか。」


リオナ達はマーシャが指差す"村"っぽい入り口の兵士達を見た。


確かにあの人たちに聞くしかなさそうだ。


「・・・・・・じゃあマーシャ行って来て。」


「エッ。皆で行かないのか?」


「・・・・当たり前だ。・・・・元々マーシャが聞く耳持たないせいでこうなったんだ。」


そう言われたら言い返す言葉も見つからず。


マーシャは少し頬を膨らましながら渋々立ち上がり
地図を片手に兵士たちの元へ行った。


リオナたちはのんびり野原に寝転がりながら待つことにした。


「マー兄大丈夫かな・・」


だがクロードは少し心配のようで
うつ伏せになりながらもじっとマーシャの姿を目でおっていた。


「・・・・大丈夫だクロード。・・・・アイツに何かあるわけが・・・」


ギャァァァァァァァァ〜!!   ドスーン!!!!!


「・・・・!!?」


しかしその瞬間
あたりにものすごい悲鳴と共に
地面に何かが叩きつけられる音がした。


「マー兄!!!」
「・・・・・!!」
《ぇえ!?》


クロードは真っ先にマーシャに駆け寄る。


もちろんリオナも立ち上がった。

しかし
向かう場所は違った。


「アイタタタタタタタ・・・・ってあ゙!!!!!リオナ君!?」


マーシャが気が付いたときには
リオナは兵士達を全員なぎ倒していた。


再び立ち上がろうとしてくる兵士も
容赦なく叩きのめす。


《あーらら。》
「お兄ちゃんかっこいい・・」
「確かに。じゃねぇよ!!ちょっとリオナくん!?」


マーシャは痛む腰を押さえながらリオナを止めにいく。


リオナの両腕を押さえると
リオナは少し不満そうな表情を浮かべてマーシャをみた。


「・・・・・。」


「リオナくん手加減なしにやっちゃダメだってぇ。」


「・・・・・・・・・だってこいつらマーシャに怪我させた。」


「うわぁなんか嬉しいんだけど。嬉しすぎて抱き締めたいんだけど。でも俺は全然大丈夫だからさっ。こいつら許してあげてよ。」


そういわれ
リオナは品定めするように地面に倒れる兵士達を見ると
仕方ない的なため息をついて兵士達から離れた。


ただし最後に余計な蹴りを入れていたが。


《てかなんでマーシャ吹っ飛ばされたの?》


「そんなの俺が知りたいわっ。地図広げてココドコデスカァって聞いて気付いたら地面にズシーンってね。今思えば腹立たしいな。」


「・・・・・あ。」


するとリオナがボソッと声を出し、
何やら右の手の平を見つめていた。


《何してんの?ってウァアアァァァ!!!!》


リオナの手のひらには何やら得体の知れない緑色をした液体がべっとりとこびりついていた。


「なっ!リオナお前鼻ほじるなよ。」


「・・・・・違うから。」


リオナは顔を引きつらせながらもタオルで綺麗に拭き取った。


・・・・・いつついたんだ?


だいたいこの得体の知れない液体はなんなんだよ・・・・


そんなことを思っていた時だった。


『おやおや・・お客様ですかな?』


「!?」


リオナ達は声のした方を見た。


声の主は"村"の入り口から出てきた。


黒のタキシードをきちんと身につけ
まるでどこかの執事みたいな格好をした初老であろうその男の表情は
とても穏やかだった。



『あらら・・皆様方なぜここに倒れていらっしゃるのですか?』


執事は笑顔のまま地面に倒れる兵士達を見ている。


そこでようやくリオナとマーシャが顔を見合わせた。


「やばくね?これ謝っとく?それとも逃げる?」


「・・・・・・・いや、ここは逃げ」
『いやぁお客様方、大変失礼いたしました。』
「・・・・・・ぇ」


しかし予想外の展開にリオナ達は思わず執事を二度見した。


「ぇ・・・・・・・・あの・・・・・・」


『こちらの兵士は少し凶暴なんですよ。見知らぬ者に話し掛けられるとついつい攻撃してしまう悪い癖がありまして。』


はたしてこれが悪い癖で片付けられてしまっていいのだろうか。


『そこで失礼をいたしましたお詫びといってはなんですが・・今晩は我が屋敷にお泊りにはなりませんか?もうすぐ日も暮れることですし。』


にこやかに話す執事に対し
少し戸惑いを覚える。


確かにあと数時間で日が暮れる。


今から違う国を目指して歩くには危険が多いだろう。


だからここは執事の言葉に甘えて泊まらせてもらうのが一番なのだが
なぜか頭が拒否している。


「いやぁ我々はただの旅人ですのでお気になさらず。」


やはりマーシャも同じようだ。


いつもなら喜んで飛び付くくせに今日はやけに表情がぱっとしない。


『おやおや。遠慮なさらないでください。我が主人もそれを望んでおります。』


「いやぁでもねぇ」
『さぁ遠慮なさらず。』


執事は案外言葉巧みで
リオナ達はさらに戸惑う。


「どうするよ。」


「・・・・・・・仕方ない、か」


ここは執事の言葉に甘えるしかないようだ。


じゃないと絶対しつこく付きまとってきそうだからだ。


『うれしゅうございます。ではどうぞお入りください。』


リオナ達は小さくため息をつきながら
執事の後をついていった。






「うわっ。これ村じゃなかったのかよ。」


《ひろーい!!》


入り口を抜けてまず目にしたのは
店が立ち並ぶ商店街でも
人々が暮らす住宅でもなかった。


そこには長く続く庭があった。


もちろん奥の方に巨大な屋敷が見える。


『ここはビンクス伯爵のお屋敷です。よく村や国と間違えられますよ。』


「そりゃなぁ。この広さだからな。」


マーシャはまるで自分の敷地のように堂々と歩く。


だが逆にクロードは
まるで宝探しをしているように目を輝かせていた。


かなりの距離を歩き続け
ようやく屋敷の玄関にたどり着けた。


『どうぞお入りくださいませ。』


そう言われて
リオナ達はマーシャを先頭に屋敷に入った。


《うぉー!!!すごいのだぁ!!!》


「・・・・・すご」


興奮して飛び回るB.B.を叱るのも忘れて
リオナは呆然としてしまう。


それもそのはず。
屋敷内はまるで城のような広さで
床も高級そうな石で作られていた。


だが
ただ一つ気になることがあった。


「すごくさみしいね・・・・」


少し怯え気味にクロードはリオナの足にしがみつく。


確かに屋敷内は変なくらい静まり返っている。


こんなに広い屋敷だからだろうか。


『実はこの屋敷にはわたくしと主人しかいないのですよ。』


「!?」


その瞬間
マーシャの眉が少し歪んだ。


『なのでお客様も久しぶりで主人も大喜びなんです。さぁお部屋にご案内いたします。』


そう言ってゆっくり歩きだす執事のあとを追いながら
マーシャが小さく呟いた。


「なんだかなぁ。ひっかかる。」


「・・・・・・俺も。」


無駄に広い屋敷に初老の男と金持ち1人。


周りに何もないこの場所で一体どうやって生活しているのか。


考えれば考えるほどおかしな点が出てくる。


『こちらがお部屋になります。電気は少々壊れておりますので蝋燭をご用意させていただきました。夕食時にお呼びいたしますのでしばらくごゆっくりなさってください。』


そう言って執事はリオナ達を部屋にいれると
にこやかな表情で去っていった。


そこでようやく緊張の糸が切れ
リオナとマーシャは部屋のソファーにドスンと座った。


もちろん若いB.B.とクロードは元気に部屋を探索し始めた。


「・・・・・・元気でなにより。」


「ですよねぇ。」


部屋はもちろん広々としていて
個室にもかかわらず
風呂完備。
さらにベッドがすぐあるのではなく、ベッドルームが別にあった。


しかも四部屋。


今いるのはどうやらリビングルームのようだ。


このような部屋がまだ何部屋もあるから驚きだ。


そんな部屋を一望しながら
リオナとマーシャは同時にため息をもらした。


「変だな。」


「・・・・・ああ、おかしすぎる。」


「だいたい身内の兵士をなぎ倒した奴らをそうやすやすと泊めたりするか普通。」


「・・・・・・絶対しない。・・・・・・そもそもこんな広い屋敷がなんで何もない場所にあるんだ?」


「まさかここもかつては国だったとか?」


「・・・・・・・嫌な思い出だな。」


以前何もない場所に家がたっていて
そこはかつて国だったということがあった。


しかしオチが最悪で。


その家にいた老人が悪魔狩りメンバーでリオナ達はさんざんな目にあった。


まぁそのおかげでクロードとジークに出会えたのだが。


「伯爵ってさ、病弱かな?」


「・・・・・・・・なんで?」


「だってよくあるじゃん。"わたくしの坊っちゃんは心臓をわずらっていて・・・残り少ない人生を最後までお供するつもりでございます"ってね。」


なぜか少し期待した目で話すマーシャ。


彼は一体何に憧れ何を追い求めているのか。


「・・・・・・・ドラマの見すぎ。・・・・でもなんであんなに警備が厳重なんだ?」


リオナはさっき倒した兵士達を思い出す。


たかが屋敷ひとつにあの人数はおかしい。


「何か隠してる、とか?」


「・・・・・・あり得る。・・・・もしかしてローズ・ソウルだったりして」


「まさか。それはないだろ。あるとしたら宝とかそういうのじゃなくて世界の重要機密だな。」


「・・・・・そんなものがあってたまるか。」


リオナは呆れてため息をもらし
彼の話に付き合い切れずにソファーにゆっくり体を横にした。


・・・なんだか・・・疲れた・・・


こうやって何度も眠ろうとしても眠ることができない。


あの日からずっと。


目を瞑るたびに
彼らの・・・トラヴァースやナタリアの声や表情が浮かんできて

最後には必ずムジカが泣いていて・・・・



あぁ・・・・・苦しい・・・・





いやだ・・・忘れたい・・・




あんな記憶・・・





・・・・苦しいよ・・・・ウィキ・・・・




なぁ・・・・・



「・・・・・・・ウィキ」


「ぁあ?」


「・・・・・・・・何でもない」


首を傾げてのぞいてくるマーシャの膝をポンポン叩きながら
リオナは体を起こす。




・・・届かない





何度呼んでも・・・





もう君は俺の前に現われてくれない・・・





"さよならだよ。リオナ。"


「さよならしてぇなぁ。」


「・・・!!!?」


すると突然マーシャがウィキの言った言葉と同じようなことを言ったため、
リオナは少し動揺した。


「な・・・・なにと!?」


「んぁ?そりゃこの屋敷だよ。なんか気味悪いじゃん。」


その言葉にリオナは表情には出さないが
内心ものすごい安心していた。


"リオナ"じゃなくてよかったと。


「・・・・・まぁこの一晩を乗り越えれば解放される。・・・・むしろこの伯爵を利用して何かしらルナでもローズ・ソウルでも情報仕入れられればこっちのもんだ。」


「腹黒いねぇ。リオナ。でもそんなキミが好き。」


「・・・は・・・腹黒い・・・だと?」


聞き捨てならない・・・・。


・・俺はいつだって純す・・・


「うぁああぁぁあぁあぁあぁあぁ!!!!!」
《ギィャァァアアァァァァアァァァアァァアア!!!!!!!!!!!》


そんなことを考えてるのも束の間。


今まで楽しそうに部屋を探索していたお子ちゃま達が
なにやらものすごい形相でリオナとマーシャの元に走ってきた。


目と鼻からは色んなものが出てるが
彼らはお構いなしに膝に体当たりをしてくる。


「いてぇよ!!!ばかウサギ!!!」


《だっでぇ〜!!!!!》


「・・・・・・・クロード?」


「怖い・・・・・!!!」


クロードはリオナの膝に抱きつき
体を震わせている。


「・・・・・何かあったのか?」


《おばかがぁあぁぁぁ!!》


「はぁ?おバカはお前だろ?」


「違うの・・・・!!!お庭にお墓があるの・・!!」


その言葉でリオナとマーシャは顔を見合わせる。


まさかな。


そんなことを思いながらも二人は立ち上がり
庭が見えるラウンジにでた。


だが次の瞬間
二人は息を呑むことになる。


なぜなら目の前には期待とは裏腹に
沢山の墓があったからだ。


そして2人は同時に呟いた。


「「ベタだなぁ〜・・・」」


なんというありがちな光景。


こういう大きく不気味な屋敷には必ず墓があるというお決まりがある。


「・・・・・・これさ、絶対一族の墓だよな。・・・・・伯爵のご先祖様だよな。」


「間違いない。この一家はきっと吸血鬼だ。どうりで屋敷内が暗いわけだ。そして夜な夜な俺たちの血をすすって生き長らえるんだ。ぁあ!だから伯爵は体が弱いのか!!」


「・・・・・いや、まだ伯爵が体が弱いとは決まってないんだけど。」


勝手に盛り上がるマーシャはすでに遠くまでいってしまっている。


せめて自分だけでもまともでなくては。


そう心に刻み
リオナは1人意気込んだ。


そして未だに足にしがみつくクロードを持ち上げて抱きよせ
背中をなでてやった。


「・・・・・大丈夫大丈夫。何にもないから・・・・。」


「うぅ・・・・・・」


それを見てB.B.も同じようにマーシャの足にしがみつく。


《オイラも怖いぃ〜!!》
「キモい。そして俺に触れるな。」
《グピァァ!!!!》


しかしすぐに蹴り飛ばされた。


「だいたい悪魔のお前が何で恐がって・・・」


コンコンッ


するとその時
部屋の扉をたたく音がした。


部屋の中が一気に静まり返る。


『失礼いたします。』


どうやら執事がやってきたようだ。


部屋の扉が開き
何やら執事は手に色々抱えていた。


『ご夕食の準備ができました。その前にこちらのお洋服にお着替えいただけますか?』


そう言って一人一人に配っていく。


しかしマーシャは手に取った瞬間に
一気に顔を引きつらせた。


「な!ダサッ!」
「・・・・こらマーシャ」
「だってよぉ!」


マーシャは口をパクパクしながら言葉にならない叫びを表現している。


彼は普段髪は整えないくせに
服にだけはこだわりがあるらしい。


リオナにしてはどちらもどうでもいいようだが。


だがマーシャの言うことはわからなくもない。


なぜなら渡された服はまるで民族衣装で
どこか独特の匂いを発していたからだ。


本当にこれを着るのかと
皆顔を引きつらせていたが
執事のあの悪気のない笑顔を見てしまったらもう引き返せない。


『気に入っていただけましたかな?こちらは我が主人であるビンクス家の一族伝統衣裳です。』


あ・・・やっぱり民族衣装なんだ


『それでは外でお待ちしております。』


そう言って執事はゆっくり部屋を出ていった。


4人はもう一度自分の手にある衣裳を見る。


着なきゃダメなんだよな・・・・・・


そう思いながらも
しぶしぶ着替えをはじめた4人なのだった。




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