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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story74 来客




"ムジカ"



今でも・・・あの時のことを思い出す・・・



"はは・・・・・・助けにきちゃった・・!!"



初めてだった・・



"・・・・・生きよう"



こんなに暖かい人は・・・



"・・・・・・俺は・・・・・お前の友達だ・・・・なのにまだお前に何もやってやれてない・・・"



こんなにも・・・心惹かれた人は・・・


"・・・だから・・・・生きろ!・・・俺がお前に生きる楽しさを教えてやる・・・!!!"



・・・私は・・・・・・悪魔なのに・・



"・・・・・だから?俺も悪魔だよ。ほら・・・・羽生えてるし。おそろい。"



そう言ってくれるあなたが大好きだった・・・・



さりげなくつかんでくれる手・・・


・・・あったかかった



"ムジカ・・・"



もっと呼んで



"ムジカ"



また笑って



"ムジカ"



もっと・・・








「リオナ・・・」


「またリオナかよぉ」


「!?」


ムジカはバッと目をあける。


すると突然目の前が明るくなって
思わず目を細めた。


「ははは!寝呆けてやーんの!」


「アンリ!!?」


横からアンリの声が聞こえ
ムジカはガバッと起き上がった。


まさかアンリがいたなんて・・・


ムジカはさっきの寝言を思い出して
顔を赤くする。


まわりを見れば
どうやら自室のベッドの上のよう。


昨日あれから一体どうなったのか。


少し混乱気味のムジカを
落ち着かせるようにアンリが笑いかけた。


「ムジカのおかげで子供たちが助かったよ。」


「・・ほんと?」


そう言えばさっきから子供たちのにぎやかな声が聞こえる。


「ああ。ムジカがあの時いなかったら子供たちは死んでいた。」


アンリは目を瞑り
ムジカの手をやさしく包む。


「本当にありがとう。」


アンリの優しい笑顔に
ムジカは思わず涙をためた。


なんだか今になって怖くなってきて。


でもね・・・


「私ね、わかったよ?」


「え??」


「強くなるための大切なこと。」


その言葉に
アンリは期待を膨らませるように笑顔をみせる。


「答えはなんだった?」


「答えはね・・自分を信じること。」


自分だけじゃない・・・もちろん皆も。


今までとは目の色が違うムジカに
アンリはうれしそうに頷いた。


「そう。大正解。よくわかったなぁ!」


「アンリのおかげだよ?」


「またまたぁ〜!」


ムジカはアンリの笑顔をじっと見つめる。


「・・・よかった」


・・・この笑顔が二度と見れなかったら・・
私は絶対に後悔していた。


だからこの"今"がすごく嬉しい。


・・・生きている"今"が・・・すごく嬉しい


それもこれも・・・すべて"彼"の存在があったから・・・


「・・ねぇアンリ?」


「ん?」


ムジカは少し恥ずかしそうに顔を上げる。


「あのね・・・リオナの話・・・聞いてくれる?」


アンリになら・・・


ううん


アンリだから・・・聞いてほしい


「おう。それを待ってた。」


アンリはうれしそうにニッと笑う。


だからムジカも少し軽くなった気がした。


「・・・リオナは17歳の魔族の男の子で、昔からダーク・ホームにいたんだ。リオナはね、私の初めての親友なの。私が天上界から逃げてきたときに命懸けで助けてくれた・・・"生きろ"って言ってくれたの。それから私のせいでダーク・ホームから逃げることになっちゃったんだけど・・・でもリオナは嫌な顔とか全然しなくて・・だから私本当に嬉しかった・・」


「うん。」


「だから私・・リオナに置いていかれてすごく寂しかった・・・悲しかった・・・もう嫌われちゃったのかなって・・・でもサラさんが言うの・・リオナを信じてあげてって・・・。」


ムジカは迷い
目を下げる。


だが次に聞こえてきたのは
アンリの笑い声だった。


「はははは!!!」


「アンリ!?」


また笑われたと
さすがに二度目は頬を膨らます。


だがアンリは笑い続け
指でムジカの頬をつついた。


「ムジカは考えすぎ!」


「な!!」


「もっと楽に考えなきゃ!」


アンリはひとしきり笑うと
ようやく落ち着いたのかベッドの前の椅子に座りなおした。


「怒んないで聞いてくれよ?」


「??」


「実はジーちゃんからリオナの話聞いてんだ。」


「え!?」


一体ジークはどこまで話しているのか。


ムジカはガックリしてため息をついた。


「でもムジカの口から聞きたくてさ。ごめんな?」


「・・ううん。」


「でもさ」


アンリは腕組をしてわざとらしく笑いながら首を傾げた。


「リオナはムジカを守りたかったんじゃないか?」


「・・・え?」


「もう戦いに巻き込みたくなかったんだろ。きっと。誰だって好きな相手には傷ついてほしくないさ。」


「な・・・でもリオナは私を嫌いって・・・」


「だぁかぁらぁ〜、それはムジカを離すためだよ。ちょっときつめに言わないとムジカは絶対にリオナから離れなかったろ?」


「ぅ・・・」


真意を突かれた気がして
思わず目を逸らした。


「な?だから俺もサラと同感。リオナを信じてやったら?」


アンリに顔をのぞかれては目を逸らせない。


自分でもわかるけど
・・けど恥ずかしくて認めたくない。


でも・・・信じたい。


「じゃぁ・・・考えてみる。」


「ははは!まぁゆっくり考えてみて。」


アンリはムジカの頭を撫でて
椅子から立ち上がる。


「じゃあ俺とジーちゃんでサラ送りに行ってくるから。」


「え・・サラさん帰っちゃうの?」


「仕事だってさぁ。すぐ帰ってくるから。あとリビングにパンあるから食べろよ?」


「うん。サラさんによろしく言っておいてもらえるかな?」


「はいよ。」


そう言って部屋を出ていくアンリを見送り
ムジカは再びベッドに横になった。


両手を伸ばし
手を握り締める。


「私にも・・・できるんだ」


なんだか嬉しくて
顔がほころぶ。


「皆に会いたいな・・・・」


マーシャと・・・B.B.と


クロードと


・・・リオナに。


「・・・会いたいよ。」


しばらくベッドでゴロゴロする。


どうすればリオナたちに会えるか。


きっとジークに言えば連絡をとってくれるだろう。


でも・・
もしリオナがアンリたちが言うように私を・・・守るためにそうしたなら・・・


「・・ダメだよね」


リオナの思いを・・ふみにじることになるもんね・・・


どうすれば・・


ムジカが悶々と考えている時だった。


・・カランカラン!


突然家のベルが鳴り響いた。


そういえば今
アンリとジークはサラを送りに行っていていない。


つまりこの家には今ムジカしかいないのだ。


ムジカは早足で部屋を出て
階段をおり
玄関の前で様子をうかがう。


できれば今はひきとって欲しいのだが。


・・・カランカランカランカラン!!!!


しかしかなりしつこくならしてくる。


帰る気がないようだ。


「・・・私パジャマなんだけど・・・」


ムジカは仕方ないと意を決して
扉のドアノブに手を掛ける。


そしてゆっくり扉を開いた。


「あの・・・今みんな留守にしていて・・・」


だが途中でムジカは言葉を切った。


「な・・!!!?」


驚きと動揺で目を見開く。


扉の前に立つ2人の男女。


その2人も今にも目が落ちそうなくらいに驚きにあふれていた。


そして3人は叫んだ。


「ラード!?!ユリス!!?」
「ムジカ!?」
「ムジカぁ!?!?」


まさかの遭遇に3人はただただ立ち尽くす。


ユリスとラード
最後にあったのは一年半以上も前のダーク・ホーム。


2人とも変わりばえしない。


だがなぜ・・・


「なんで2人が!?」
「なんでムジカが!?」
「なんでムジカが!?」


訳が分からず混乱する。


すると一番最初に落ち着きを取り戻したユリスがムジカとラードを一旦制した。


「とにかく!中に入りましょう?ここで話してんのもなんだし。」


「そ・・そうだな・・!!!」
「そうだね・・!」


ムジカはぎこちない動きでユリスとラードを入れた。


3人はリビングに入り
ソファーに座る。


なんだかまだ信じられない。


またこの二人に会えるなんて。


そこでようやく喜びを感じた。


「それにしてもムジカぁ!!生きててよかったぜ!!!」


ラードはムジカを抱き締める。



すぐにユリスにはがされた。


「ちょっとラード!軽いセクハラよ!?ってムジカ!!また会えて嬉しいわ!!」


ギュッと抱き締めてくるユリスに
ムジカも嬉しそうに抱きついた。


「私も・・!でもなんでユリスとラードが・・」


「そうね、まずはそこから話すわ。あのねムジカ、簡単にいうと・・・」


ユリスは脚を組み
ニコッと笑った。


「ここ、私の実家なの。」


「・・・・・。」


一瞬頭が真っ白になる。


・・・実家


ユリスの・・


ここが


「・・ユリスのおうち!?」


ムジカは思わず立ち上がる。


そう言えばアンリが言っていた。


ダーク・ホームに姉がいると。


「じゃ・・・じゃぁ!!!!アンリのお姉さんって・・・!!!!」


「アンリは私の弟よ?」


どうりで見たことがあるわけだ。


ということは、
仲の悪いというジークとはいとこということだ。


「俺たちムジカ達を探してたんだぜ!?でもお前らの生存情報的なのが全然なかったからよぉ!!」


「だから一旦私の家で情報を集めようと思って。そしたらムジカがいるんだもの!」


2人は再びまじまじとムジカを見る。


「でムジカはなんでユリスんちにいるんだ!?マーシャとかリオナはどうしたんだよ?」


「そ・・それは・・・」


ムジカはとりあえず
ダーク・ホームをでてからの一通りの出来事を話した。


それを聞きながら
ラードとユリスは何度も驚いたり顔を歪めたりしていた。


「じゃあ結局リッちゃんとマーシャとその他もろもろが今ルナを探してるってわけね。でもまさかムジカたちがあのジークと出会うなんて。」


ユリスはあからさまに嫌そうな顔つきをしている。


「ジークってのが元・悪魔狩りでユリスのいとこってか!また複雑な!」


「ジークも帰って来てたなんてぇ〜!最悪。」


「でもそいつに聞くしかないんだろ!?マーシャ達の居場所!」


「でもこれじゃああっという間にシキが殺されちゃうわッ!」


その言葉にムジカは息を呑んだ。


「シキ・・・!?殺されるって!?」


「シキがフェイターの一味だって疑われてるのよ。」


「・・・・まさか」


そんな事をできるのは


・・・お兄様だけ

ムジカは必死な表情で2人を見る。


「どうやったら・・・シキの疑いは晴れる?」


「ダークホームにフェイターがいるのは間違いないのよ。だからその真犯人を突き出せばシキの疑いは晴れるとは思うんだけど・・・」


「問題はその犯人の手がかりなんだよなぁ〜!!」


「・・・?」


「シキが言ってたの。"鬼は静かに夢を見る。"って。」


「鬼は静かに・・・・夢を見る?」


意味がわからない。


「な!?わからないだろ!?でもマーシャならわかるみたいなこと言ってたんだよアイツ!」


「だから私たち急いで飛び出してきたんだけど。でもムジカにだけでも会えてよかったわ!それにしてもマーシャ達もいい判断をしたわ。」


「なんで・・?」


「だってムジカの中にローズソウルがあるなら旅に連れていくのは危ないものね。」


その言葉になんだか複雑な思いが入り交じる。


・・やっぱりリオナは私を守ろうと・・・


「それにムジカはビットウィックスに狙われてるもんな!」


「・・・!?」


いきなりのことにムジカは目を見開く。


「お兄様が・・!?」


「ええ。なにがなんでもムジカを連れ戻したいみたいね。」


ムジカの表情がだんだんと青くなる。


気が付けば頭の中には昔の記憶がよみがえって・・


暗い部屋


首と足に繋がれた鎖


毎回のように打たれた注射


苦痛に泣き叫んでは抱き締められ


抱き締められては突き放された日々


思いだしたくもない忌まわしの過去




でも・・お兄様はなぜ
まだ私をおいかけるのか・・・


丁度いい実験体だから・・?


それとも憎いから・・・?


だったらあの時・・・


リオナが助けに来てくれたあの時に・・


・・・殺してくれればよかったのに。



ムジカの暗い表情に
ユリスとラードは少し戸惑う。


だがすぐにラードがいつもの調子で空気をさいた。


「とにかくよぉ!ジークとか言う変態に話し聞かなきゃいかんってことだろ!?」
「誰が変態だ!」
「ぁあ!?」


突然背後から聞こえてきた声に
3人は振りかえる。


そこにはいつの間に帰ってきたのかアンリとジークがいた。


「姉貴!?」


アンリは驚きで目を見開いている。


「あらアンリ。久しぶりね。元気にしてた??」


「元気にしてたじゃねぇよぉ!五年前から連絡もしないで心配したんだぜ!?」


「悪かったわ。忙しかったのよ。」


不機嫌な顔をするアンリの頭をユリスはあやすように撫でる。


だがそんなユリスを鋭い眼光で睨む者がいた。


「今更なんのようだ貴様。」


「あらジーク。久しぶりじゃない?私よりも老けちゃって。」


「なぬ!?それは貴様がルナと不老の契約を結んだからだろーが!実年齢は33のくせに。」


その言葉にムジカとラードが反応する。


・・見た目は二十歳くらいなのに


ショックを受けているムジカに対し
ラードは大声で笑った。


「ガハハハハハ!!!!まさか30過ぎてたなんてな!!」


「ラードッ!!あんただって見た目は若いけど中身は似たようなものじゃない!」


「俺はまだ30歳だもんねぇ!ガハハハハハ!!」


くだらない言い争いが始まり
アンリはため息を吐く。


「どうでもいーけどさぁ・・姉貴たちは何しに来たわけ?」


「そうそう!私たちマーシャたちを探しに来たのよ!」


マーシャの単語に反応したジークは訝しげな表情を浮かべた。


「なぜだ?ダーク・ホームをぬけたマーシャに何の用がある?まさか連れ戻しにきたのか?」


「違うわよ。私たちの仲間が身に覚えのない罪で殺されそうなのよ。」


「そいつを助けるためにマーシャと少年に協力してもらう気か?」


「だからそうだって言ってるじゃない。」


また喧嘩が始まりそうな2人に
ラードが割って入る。


「だからマーシャ達の居場所を調べにここに来たわけなんだよ!!そしたらナイスにムジカがここにいたってわけ!」


軽いノリのラードに
ジークはさらに睨みをきかす。


「なぁアンタはマーシャの居場所知ってんだろ!?教えてくれよ!!」


「断る。」


「はぁぁ!?なんだとてめぇ!!!」


なぜか取っ組み合いが始まった2人を
ムジカは心配そうに見つめる。


でももし・・・本当にシキが殺されてしまったら・・・


そう考えたらいてもたってもいられなくて。


気が付けばジークとラードの間に割って入っていた。


「2人とも喧嘩してる場合じゃないでしょ・・・・!?」


初めてムジカに怒られたジークとラードは
呆気にとられた表情をしていた。


「時間がないんでしょ!?だったら早くマーシャに会いに行かなきゃ・・!!!ジーク!!」


「は・・はい・・!」


「いくらユリスが嫌いだらって今は見栄はんないで!!あとユリスとラードも!!」


「おう・・」
「そうね・・」


ヨシッとガッツポーズをするムジカ。


それを見たアンリは大声で笑った。


「ハハハ!!ムジカも成長したなぁ!」


「え!?」


するとユリスもうんうんと頷いた。


「ダークホームにいるときはどこか自信なさそうだったものね!!」


そう言ってもらうとうれしいが
何だか恥ずかしい。


ムジカは少し照れながらジークの後ろに隠れた。


そんなムジカにジークも少し微笑みながら
はぁっとため息をついた。


「仕方ない。少女からの頼みなら聞いてやるか。」


「ありがとうジーク・・!!」


「なら急がねばだな。」


するとラードは引き出しから地図を取出しテーブルに広げた。


「マーシャ達はUWの隣にある国に向かうと言っていた。着いたら連絡するとは言っていたんだが連絡かない。」


「じゃあまだ着いてないってこと?」


「まさか。もうかれこれひと月だ。おそらく道に迷ったかあるいはトラブルに巻き込まれたかだな。」


「じゃあ結局マーシャたちの居場所がわからないってこと!?」


ユリスは呆れたようにため息をついた。


「仕方なかろう。そもそも貴様らは私がいなかったらどうやって探そうとしてたんだ?」


その言葉にラードは少々イライラしながら答える。


「ユリスがここにくれば何かしら探す方法があるって言ったからよぉ!」


「私は嘘言ってないわ。実際そこにいるじゃない。情報源が。」
「私をもの扱いするな!!」


一歩も進まない話し合い。


だがムジカは1人考えていた。


「ねぇユリス?」


「なーに?」


「あのさ、私B.B.となら通信できるかも知れないよ??」


何を言いだすのかと一同半信半疑でムジカを見る。


だがラードがすぐに大きく手をたたいた。


「ああ!その方法があった!!」


「どういうこと??」


ラードは自信満々にムジカを前に出す。


「ムジカは生身の悪魔だろ!?生身の悪魔なら遠く離れた悪魔にも電波みたいなの飛ばせるんだよ!」


「すごーい!」


「だけど電波飛ばすだけで話せはしないんだけどな!!ガハハハハハ!!!」


一気に全員肩をおとす。


「・・だけどもし感がよければ・・」


「気が付いて連絡してくるかも!!!」


「ならそれにかけるしかないだろ!!!!」


そうだ・・それしかない


ムジカは力強く頷く。


「私・・頑張ってみる!!」


「頼んだぜムジカ!!!」


「うん!」


するとアンリが後ろから肩にポンポンとしてきた。


振り返ればいつもの笑顔があった。


「無理はするなよ?」


優しさで溢れていて・・


本当にアンリが兄だったらよかったのに。


「大丈夫っ!」


ムジカも笑顔で答えた。




そう・・・



信じてる




自分にならできるって





だからもう逃げないよ




自分からも




あなたからも



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