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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story71 アンタの横
71



リオナ=ヴァンズマンを探しはじめてもう二ヵ月がたつ。


奴らがいると思っていたUWは
俺が着いた頃には壊滅していた。


あいつらは死んだんだ・・・


爆発に巻き込まれたに違いない。


俺は途方にくれていた。


だが
トボトボと森を歩いてた俺は
不覚にも意味不明の穴に落下してしまった。


最悪だった。


しかも出口が見当たらず
何日も歩き続けた。


そんなある日
突然目の前に1つの大きな扉があらわれた。


イライラしていた俺はその扉を蹴りあけた。


扉の向こうは普通に部屋があった。


なんでこんな穴に部屋があるんだ?


そんなことはどうでもよかった。


そして俺のイライラはピークに達した。


それはなぜか。


それは部屋の中で変なピエロが1人で歌っていたからだ。


しかも音痴。


俺は我慢ならなくて
そのピエロを追い払った。


いい気味。


俺はしばらくこの穴で過ごすことに決めた。


でも穴にいると時間の経過が全くわからない。


だからかなりいただろうこの穴の部屋を
俺は今日、出ようと思った。


だが予想外の展開がすぐに起きた。


俺が出口と思われる階段を登ろうとすると
突然扉を叩く音がした。


もしかしたらあのピエロだろうか?


確かにあの時のピエロに対する俺の態度は悪かったと思う。


だから俺は一言謝ろうと扉を開けた。


それがビックリ。


「リ・・・リオナ=ヴァンズマン!?」












リオナは口をポカンとあけたまま立ち尽くす。


そんなリオナを見て後ろからマーシャも扉の中を見た。


「リオナどうし・・ってお前!?」


マーシャも驚きながらコールを指差す。


「なんでお前がここに!」


「それはこっちのセリフだ!!なんで生きてるんだ!?」


「・・・はぁ?」


お互いに意味のわからない会話が続く。


だがコールは罰の悪そうな顔をしてため息をつきながら
扉を大きく開いた。


「とにかく中に入れ。聞きたいこともあるし話したいこともある。」


「・・・そうだな。」


そう言われて
リオナ達は部屋の中へ入った。




「うぁ〜!!!ボクちんの部屋だッチョ〜!!!!」


クラッピーは久々の帰宅に喜びながら部屋中を駆け回っていた。


それにしてもクラッピーのいう"敵"がコールだったとは。


とりあえず話し合いを有意義にすすめるためにも
子供達には遊んでもらっていよう。


「・・クロードとB.B.はクラッピーと遊んでて。」


「うん」


クロードは素直にクラッピーの元に駆けていった。


だが


《えー!!!オイラはやだ!!》


こいつが言うことを聞くはずが無い。


リオナはもう面倒くさくなって。


「・・・じゃあ騒ぐなよ。」


《オッケー!》


仕方なく参加させることにした。


リオナ達は部屋にあった椅子に座る。


「あのガキはなんだ?」


するとコールが訝しげな表情をクロードに向けた。


「・・・あれはクロード。色々あって一緒に旅してるんだ。」


「へぇ。ってそんなこと話してる場合じゃねぇ!!!お前ら今までどこフラフラしてやがった!!!」


一年半ぶりに会うが
コールの迫力は変わっていないようで。


「いやぁコール君。俺たちも色々あってだね。」


「色々ってなんだ!!一から説明しろ!!」


なぜか怒鳴り散らすコールに
リオナとマーシャが苦笑を浮かべた。


とりあえずリオナたちはクロードと出会ってから、UWに行き、そこで悪魔狩り本部を壊滅させてサラとジークに出会い、ローズ・ソウルを奪うために学校に侵入して試行錯誤したがフェイターによってUWが壊滅させられ仕舞にルナを誘拐されて今にいたるまでを簡単に話した。


「なんだかすげぇ旅してんなぁ。でも生きててよかったぜ。てっきり死んだかと思ってた。でも結局ローズ・ソウルは見つからなかったんだろ?」


「ああ。なんかデマだったくさいし。それよりキミはこんな所でなにやってんだ?」


「そうだよ!!俺はお前らに警告しにきたんだよ!!」


そう言うとコールは四枚の写真を取り出した。


どれも一人ずつ写真に映っている。


そのうちの3人は髪が真っ白で
顔もそっくりだ。


そして残りの1人が・・


「・・・ビットウィックス」


ムジカの兄・・・


「今ダーク・ホームはこの4人によって動かされている。ビットウィックスが今のマスター。この白髪頭のキャロル三兄弟がスペシャルマスターだ。」


「キャロル三兄弟だと?」


マーシャは聞き覚えのある名前に眉をひそめる。


「・・マーシャ知ってるのか?」


「知ってるも何もこいつらはサタン直属の部隊にいた奴らだ。最強で最悪の殺戮兄弟だよ。一回ダーク・ホーム代表みたいな感じで手合わせしたんだがボロ負け。あの時ほど屈辱的なことはなかったぜ。」


マーシャが負けるなんて・・・


リオナは少し身震いする。


《じゃあラードとかはスペシャルマスターからおろされたのか!?》


「ああ。そのおかげで今じゃダーク・ホーム内がビットウィックス政権だ。」


その言葉にマーシャはさらに顔を歪める。


「それって最悪だな。」


《なんで??》


「今までダーク・ホームは悪魔の住む天上界とは数年に一度交流を持つ程度だった。それはサタンが悪魔、マスターが悪魔を操るエージェントたちを支配し、お互いの陣地を侵さないためだ。それが今はどうだ?サタンの息子であるビットウィックスがマスターをやってる。ということは悪魔が俺たち人間よりも勝手がよくなるってことだ。」


《え??どーゆーこと!??》


頭の悪いやつめと悪態をつきながらマーシャはため息を吐く。


「いいか?簡単に言うと悪魔が今まで以上に天上界とこの人間界を行き来するようになる。ということはローズ・ソウルとか神の復活とかそれ以前に世界の均衡が崩れて破滅するのさ。」


《じゃあビットウィックスは人間を全滅させる気なのかぁ!?》


「違うな。」


コールは首を横に振る。


「アイツはサタンを殺す気だ。」


「・・・?」


「お前達は知らないだろうがビットウィックスのムジカへの愛は半端ない。なんでだか知らねぇが。だからムジカを殺そうとしたサタンをマスターとしての力を利用して逆に殺そうとしてんじゃねぇかな。まぁあくまで予想だけどな。」


・・でもそれはあり得る。


リオナは表情を暗くした。


「あ!!いい忘れてたがお前らもビットウィックスにねらわれてるぜ?特にヴァンズマン。お前なんか生死問わずだ。」


「・・・俺?」


「ああ。ムジカを誘拐した張本人だからな。」


「・・・。」


そこまでムジカを取り戻したいなんて・・・


一体なにが目的なのか。


「ビットウィックスはヴァンズマンを殺してでもムジカを取り返す気だ。だからそれだけのためにキャロル三兄弟率いる部隊を出したくらいだ。」


その言葉にリオナは顔を歪ませる。


「・・・俺たち狙われてたんだな。」


「それにお前がローズ・ソウルを持ってるって知れ渡ってる。」


「・・・!!!」


まさか。


一体どこから・・・


「とにかくダーク・ホームのキャロル三兄弟の部隊には気を付けろ。俺はそれを警告にきた。」


突然の警告にリオナ達は呆然としてしまう。


しかし能天気なマーシャはなぜかケラケラ笑いだした。


「超ウケる。リオナやべぇな。指名手配犯じゃん。しかも最悪ランク。あはは。」


「・・・笑い事じゃない。」


「まぁでも気にしたところで仕方ないしな。」


「・・まぁ。」


確かにそれはそうだ。


だがなんとしてでも逃げ切らなければ・・・。


・・・こんなんで死にたくない。


だが呑気な事を話す2人に対し
コールは少しイライラしていた。


「ッケ!!俺がでかいリスク背負ってわざわざでてきてやったのによ!!なんだよその緩さ!!」


顔をプイッとそらしてしまう。


さすがにそれは悪いことをしたと思ったのか
リオナは小さく頭を下げた。


「・・・本当感謝してるよ。ありがとう。」


「な・・なんだよ気持ち悪いな!別に俺が勝手に・・ってそうだ・・!!!」


すると今度はコールはリオナに掴み掛かるように前に出てきた。


「・・・なんだよ」


「シュナが死んだんだ!」


「・・・。」


あー・・・そのことか。


リオナは無表情のままラードから逃れるように体をずらす。


「・・・知ってる。フェイターからきいた。」


「知ってたのか・・。でも犯人は知らないんだろ?」


「・・・犯人?」


そんなこと
考えもしなかった。


いや、
考えたくなかった・・。


リオナは少し顔を下げる。


それに気が付いたマーシャは
リオナの代わりに話を進める。


「それで?キミは知ってるわけ??その犯人を」


「知ってるというかアイツしかいないじゃねぇか!!シキだよ!あいつしかいねぇ!」


シキ・・・


少し心臓が跳ねた。


リオナの頭のなかにシキの顔がよみがえる。


記憶の中のシキは笑ったり怒ったり悲しい表情をしたり・・・


だけどシュナを殺すシキの表情なんて浮かばない。


だって・・・だってシキは・・・


シュナを愛していた


「・・・シキじゃない。」


「は!?」


「・・・シキは殺したりしない。」


リオナは顔を上げてコールを見る。


「な!だってシュナが死ぬすぐ前までアイツが一緒だったんだぜ!?死体も見つかってない!それにシキはフェイターのスパイの可能性があんだ!」


「・・・それでも」
「はははははは!」


すると突然
この思い空気を破るようにまたマーシャが笑いだした。


「・・・マーシャ?」


だれもが訝しげな表情を浮かべる。


「あのシキがフェイターのスパイねぇ。あはは傑作。」


「な!!!あんた!バカにしてるのか!?」


「いやいや。まぁスパイってところまではいい考えじゃない??ただシキはフェイターなんかじゃないしシュナを殺したりする奴じゃないってこと。あー面白かった。」


マーシャはひとしきり笑うと
便所と言ってトイレに行ってしまった。


「・・・・」


「おいヴァンズマンもなんとか言えよ!!」


・・・・何とかって


「・・・でもマーシャがそう言うんだからそうなんだよ。俺はマーシャを信じるよ。」


《じゃあオイラも。》


「・・・・っち!!勝手に言ってろ!!」


しばらくの間沈黙が続く。


コールがやっと口を開いたのはB.B.が飽きてクロード達の元へ行った時だった。


「ところでムジカはどうした。」


その言葉にリオナは体を震わせる。


絶対に聞かれると思ったが
実際に聞かれるとビックリする。


リオナは目線を下に向けながらつぶやくように話す。


「・・・ムジカは・・・今フラワー・カウンティーにいる。」


「は!?」


「・・・俺の仲間になったっていう・・ジークにムジカを預けたんだ。」


「てめえ!!」


コールは体を乗り出してリオナに掴み掛かる。


「なんで見ず知らずの男にムジカを預けた!?ジークってやつは悪魔狩りだろ!?なんで悪魔のムジカをあずけるんだ!!」


「・・・ジークはもう悪魔狩りじゃない。」


「何ほざいてんだよ!!!たかが数ヶ月一緒にいただけの人殺しによくやすやすと」
「・・・人殺しなんて言うな!!!!」
「!!!!」


リオナは声を張り上げてコールの腕をつかむ。


「・・・ジークは変わったんだ!!!もう悪魔を殺したりしない!!!!何も知らないくせにジークを悪く言うな!!!」


息を荒げて怒鳴るリオナにコールは少しあたふたする。


リオナもハッと我に帰り
気まずげに腕を放した。


「・・・・それに・・人殺しは俺たちだってそうだ。」


化神だって・・・
元をたどれば人間だ。


それを当たり前のように殺す俺たちは・・・


・・・汚らわしい・・・・


「でも何でだよ・・!!!」


コールは行き場を失った手で自分の服を握り締める。


「何でムジカを置いていった!!!俺言ったよな!?おまえにムジカを任せるって!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・仕方なかったんだ。」


「何がだよ!!!」


「・・・そうするしかなかったんだ!!」


リオナはせきを切ったように再び声を荒げる。


・・・そうするしか・・・なかったんだ・・・


弱い俺には・・・ムジカを守れない・・・・


傷だらけの彼女を・・・癒すことはできない


「なら、俺がもらっていいのか?」


「・・・・・・」


コールはリオナに近寄る。


「なぁ?いいだろ?」


「・・・だろ。」


「は!?」


リオナはまっすぐコールをみる。


「・・・・勝手にすればいいだろ。」


「・・・んだとてめぇ!!!!」



また突然怒りだしたコールはリオナを押し倒し、
リオナの頬を思い切り殴った。


何度も何度も殴る。


「なんでだよ!!なんでなんだよ!!!大体お前の左手はどうしたんだよ!!ぇえ!?それでムジカを守れねぇってか!?だったら俺には両手がある!!俺だったらムジカを傷つけない!!!幸せにできる!!!お前みたいに問題ばっか抱えた絶滅危惧種には無理なんだ、よッ!!!」


「・・・っ・・・」


コールが殴るのをやめても
リオナは何も言わない。


「なんとか言え!!!!リオナ=ヴァンズマン!!!!!!」


コールは顔を近付けて叫ぶ。


リオナは顔をそらしながら
目をつむる。


「・・・・・・・・・俺には・・ムジカを守ることは・・・」
「無理じゃねぇ!!!!!!」
「・・・・・・コール?」


コールはリオナを無理矢理起こす。


「お前が諦めたら誰がムジカを救うんだ!!!ぇえ!?俺でもお前の相方でもウサギでもピエロでもガキでも悪魔狩りでもないんだよ!!!!!お前なんだよ!!リオナ=ヴァンズマン!!!初めてムジカの世界を動かしてやったお前だけなんだよ!!!」


「・・・!」


リオナは目を見開く。


「初めてムジカの手を握ったのは誰だ!?初めてムジカの親友になったのは誰だ!?初めてムジカを笑わせたのは誰だ!?初めてムジカに空を見せたのは誰だ!?初めてムジカを喜ばせたのは誰だ!?全部全部お前だろ!!!!!」


その瞬間
リオナの頭の中に走馬灯のようにムジカとの思い出が駆け巡った。


泣いた顔・・・すねた顔・・・・笑った顔・・・喜んだ顔・・・寂しそうな顔


"リオナ・・!!!!!リオナァ!!!!"


・・別れぎわに最後までずっと叫んでた・・・


なのに俺は・・・


「・・・・・・」


「ムジカはな・・!少なくとも俺なんかを求めてないんだ!!悔しいけどな!!!たとえお前より俺の方が強くてもムジカは絶対にお前が必要なんだよ・・・!口に出せないことくらい分かってやれよバカヴァンズマン!」


・・・・・必要・・・・


ムジカには・・・


俺が・・・




コールは立ち上がると
リオナに背をむけ歩きだす。


だがすぐにリオナが手を伸ばす。


「・・・・コール待って!!」


「なんだよ。」


コールは少しだけふりむく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう」


あと・・・・ごめんな。


リオナは少し腫れた両頬を押さえながら小さく笑った。


そんなリオナを見て
コールも珍しく口元をゆるませる。


「ケッ!!これが最初で最後だからな!次に会った時はまたいじめてやるから覚悟しとけ!!!じゃあな!」


そう言いながらコールは出口の階段に向かっていった。


「・・・・・・」


リオナは頬をさすりながらコールの言葉を思い出す。


「・・・・・・・ムジカが求めてるのは・・・俺・・・か」


でもそれは前の話であって。


別れ際には最悪な言葉を言い放ってきた。


だから今は本当に嫌われてるかもしれない・・・・


でも・・・・・・




リオナは右手を握りしめ
何かを誓うように胸に押しあてた。















コールは地上に向かう階段を登る。


実際時間がなかった。


数ヶ月もダーク・ホームを離れてしまい
今度は自分が狙われかねない。


うまくベンが言ってくれてればよいのだが。


そんなことを考えていたら
突然目の前に人の気配がした。


コールは顔をあげる。


「・・・アンタ!!!」


「よぉ。」


階段の途中に座っていたのはマーシャだった。


「なんでアンタがここに!?便所に行ってたんじゃねぇのか!?」


「行ってたけど帰ってきたらムジカの話してたから。」


マーシャはよっこらしょと言って立ち上がる。


「リオナの奴、前と変わったでしょ?」


「え?あ・・ああ。弱くなったというか何というか・・・」


「臆病になった。」


「そんな感じだ。」


マーシャは壁に寄り掛かりながら腕を組む。


「実力的にはかなり強くなったんだけどね。心がね、脆くなった。」


「・・何があったんだ?」


「そりゃ色々。大切なものを見つけたりなくしたり。仕舞には死んだ弟に会えるとか会えないとか。」


「は?」


「まぁとにかく。コールがリオナに喝を入れてくれて助かったって話。おかげでリオナも少しは自信がついたんじゃないか?」


ありがとうと言ってマーシャはコールの頭をポンポンと軽くたたいた。


「べ・・別に俺は何もしてねぇよ!!!」


「あはは。照れ屋なんだ。昔から変わんないねぇ。」


その言葉にコールは思わず顔を上げる。


「な!!!あんたまさか覚えて・・!?」


マーシャは何もいわずにただ優しく笑っていた。


そしてそのままコールに背中を向けて
階段を降りていく。


「また生きて会おうぜ。コール。」


「・・な!!!おい!!」


コールは目でマーシャを追う。


背中が見えなくなるまで
ずっとみつめた。


「・・マーシャ・・・ロゼッティー・・・」


コールは拳を握りしめ
再び階段をのぼりだす。





10年前・・・



町が化神に襲われたとき


アイツが助けに来てくれた


アイツは泣きじゃくる俺に言ったんだ。


"泣く暇あったら全力で逃げてみろよ。"


俺は走った。


全力で。


その後
アイツは生きてる俺を見て、こう言ったんだ。


"お前は強い男だ"って。


俺あの時の言葉が忘れられなくて。


アイツみたいにもっと強くなりたいって思った。


だからあの時からアンタが俺の目標だった・・・


アンタの横に立ちたかった・・


だからダーク・ホームにも入ったんだ


でもその時にはもう
アイツの横にはヴァンズマンがいて・・・


それでもよかった。


俺は確実にアイツに近づくことができたから。



「・・俺・・・・アンタの横に並べたかな。」


しばらくすると
階段の終わりが見えた。


コールは一気に階段を登りきる。


「・・・久々だな。」


久々の日光を浴び
コールは背中をのばす。


と言っても外はすでに夕方で。


とにかく1日も早くダーク・ホームに戻らなければ。


だからコールは歩く足を早めた。


その瞬間。


「・・・・!?」


いい知れぬ悪寒が体を駆け巡る。


何かが近づいてくる・・・


化神・・・?



いや・・・・


・・・この波長は



「が・・・ぁ!!!」


しかし次の瞬間
突然
胸に痛みが走る。


コールは震える手で胸にふれる。


胸にはナイフが貫通して刃先が見えていた。


「・・ゴフッ・・・・」


口からも胸からもとめどなく血が流れだす。


意識が遠くなる。


だがコールは力を振り絞って振り返った。


「・・・!!!!!」


後ろにたっていた男に
驚きで目を見開いた。


「・・・・・・・・!!!な・・・・・・んでア・・・・ンタが・・・・・・・!!!」


信・・・・・じて


たのに・・・・・・


コールはドサッとその場に倒れこんだ。





・・苦しい・・・・・・・










俺・・・・










まだ死ぬわけには










・・・・いかないんだ










・・・・まだなんだよ・・・











恋人も・・・・








ライバルも・・・・










仲間も・・・









ちゃんと作れてないんだよ・・!!!







アイツの横にも・・・・・・・まだ!!!










これから・・・なんだよ・・・




世界が・・・変わるのは・・・










これからなんだ・・・








ヴァンズマンと・・・わかりあえるのは・・・











まだ・・・











まだ・・・・










死にたくない













死にたく・・・ないのに























男はコールが動かなくなるのを見ると
すでに心臓が止まっているコールに火を点けて燃やしはじめる。


その眼差しは冷徹で恐ろしい。


「・・・・」


そして男は通信機のような物をとりだした。


「アシュール様」


すると通信機の向こうから声が聞こえてきた。


"ヒュウか。どうだい?すばしっこいガキは殺したかい?"


「はい。今からダーク・ホームに戻ります。」


"そう。なら作戦通りに進んでいるんだね?"


「はい。恐らくうまくいけばダーク・ホームは自ら壊滅を迎えるでしょう。」


"クスクス。楽しくなってきたね。リオナへの<プレゼント>も完成したことだし。どう?その<プレゼント>は僕の意志通り動いてくれそうかい?"


「大丈夫だと思います。まだ少し記憶に障害があるようですが・・・・ウァッ・・!!!!!」


するとその瞬間、
ヒュウは悲鳴を上げて右足を押さえた。


突然右足に痛みが走ったのだ。


ヒュウはバッと振り返って見ると
足の腱にナイフが刺さっていた。


そのナイフはさっきまでコールの胸に刺さっていたはず。


「この・・・!」


ヒュウは燃え盛る炎に目をやる。


真っ赤に燃え盛る炎の中で
すでに体が焼けてしまっているコールが笑った顔が目に入った。


そして何かを呟いていた。


その口の動きにヒュウは怒りで目を見開いた。


<お前とは地獄ですぐ会える>


「・・・・・・くそが」


"ヒュウ?どうかした?"


「・・いいえ。何でもありません。でわまた連絡します。」


"待ってるよ"


そう言って通信がプツリと切れる。


ヒュウは右足の痛みに顔を歪ませる。


「ムダ死にはしたくなかったか・・・ッ・・・・・・!!!」


跡形もなく燃えきったコールの跡を足で踏みつける。


「・・・ざんねんだが・・・俺は地獄に行く気はない・・。」



例え死んでも・・・



俺は神に救われるのだ・・・・


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