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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story43 クロノスロード







「わー・・・明るいね。」




ターミナル500は先日前までいたターミナルとはまた違い、
雲一つない晴天が広がっている。


町の造りはあまり変わりはないが
言うまでもなくターミナル500の方が綺麗に整えられている。


「・・ムジカは雪がなきゃ嫌だろ?」


「そ・・・そんなことないよ。私ただの地面も好きだよ・・・」


「地面って・・・ははっ!」


頬を膨らませるムジカを
リオナは軽く小突く。


「さぁて、フォルトはどーこだ。」


マーシャはターミナル内を見渡す。


「・・・?あの人じゃない?」


すると遠くから手を振りながらこちらに向かってくる一人の影が見えた。


「あっ・・!」


《あー!!》


リオナとB.B.が走りだした。


「フォルトさん!」
《フォールトぉ!!!》


「リオナ君!ウサギさん!」


リオナとB.B.は勢いよくフォルトに抱きつく。


「フォルトさん久しぶり!」
《久しぶりぃ!!》


フォルトは青い髪を後ろで結い、
顔つきはすっかり大人っぽくなっていた。


「はい!お元気そうで何よりです!!というかリオナ君随分大きくなりましたね!!」


「そうかな?フォルトさんは大人っぽくなったな」


「ははは!そりゃあ今年で32歳ですから」


「でも中身はかわんねぇよなぁ。」


するとリオナの後ろから
マーシャたちがやってきた。


「よぉフォルト。」


「お久しぶりですマーシャさん!そーゆーマーシャさんはホントに見た目も中身も昔のままですね!」


「嫌味か?」


「い・・・いえ決してそういうわけでは・・!!」


「ははっ!!嘘だよ。相変わらずだなぁ。」


マーシャはフォルトの肩に腕を回す。


するとフォルトは
ルナとムジカに目を向けた。


「こちらのお嬢さん方は?」


「・・ああ、コッチがルナでこっちがムジカ」


「・・・はじめまして・・・」
「こ・・コンニチワ・・!」


ルナとムジカは深々とお辞儀をすると
フォルトもそれにあわせて頭を下げる。


「ホントわざわざこんな駅で下車させてしまってすみません。」


「いやいや。むしろこんな重要なことを頼んじまってわりぃな。」


「全然かまいませんよ!僕子供は大好きですから!ところでクロード君は・・・」


フォルトがあたりをキョロキョロ見渡す。


「・・ほらクロード。フォルトさんに挨拶。」


恥ずかしかったのか
リオナの後ろに隠れていたクロードは
ちょこっと顔だけを出した。


「・・・・・・・こんにちわ」


「はい、こんにちわ」


フォルトはニッコリ笑いかけるが
クロードはすぐにリオナの後ろに引っ込んでしまった。


「・・こらクロード。」
「いいんですよリオナ君」
「でも・・・」


するとフォルトはリオナの後ろに回り込み
クロードと目の高さを合わせた。


「ぇ・・・・ぁ」
「クロード君。ちょっと僕の用事に付き合ってくれませんか?」


突然の申し出に戸惑うクロード。


しかしフォルトは返事を聞かずにクロードの手を取った。


「マーシャさん、いいですか?」


「おお。好きなだけ連れまわせ。」


「ありがとうございます。じゃあいこうか。」


「・・・え」


クロードは手を引かれ
チラチラ振り返りながら街角に消えた。


「いーなー・・クロード。俺ももっとフォルトさんと話したかった・・」


リオナは羨ましそうに
フォルトとクロードが行った方を見つめる。


「まぁまぁ。まだ何日かは一緒だから。さぁて、俺たちはどうする?ムジカはどこいきたい?」


「私はどこでもいいよ」


「じゃあとりあえずフォルトが用意してくれたホテルにでも」
「・・・・あ・・マーシャ・・・・・」


するとルナがマーシャの腕を引っ張る。


「・・・・ムジカとB.B.と・・・ちょっとお散歩してくるわ・・・・」


「?」


首を傾げるマーシャに
ルナはちょいちょいと手招きをし
マーシャの耳に囁く。


「・・・・リオナと話をしたいでしょ・・・・?」


「ルナ・・」


ルナはニコッと笑って
ムジカとB.B.の手をつかむ。


「・・それじゃあ行きましょう・・・・・」
「あっ・・ルナ姉?」
《ひゃっほー!!》


そのまま三人も町へ繰り出していった。


「ははっ、ルナのやつ・・・気ぃ使いやがって。」





・・・・ありがとな





「・・あれ?ムジカたちは?」


「散歩だとさ。ほら俺たちも行こうぜ?」


「行くって・・・どこに?」


「デートだよ、デート。」


リオナは訝しげな表情で
先を歩くマーシャを追いかける。


「さぁて・・・じゃあとりあえず」


マーシャは振り返ってニヤッと笑った。


「リオナの行きたいとこで。」






















「さて、この公園ならイイかな?」


「・・・・?」


フォルトに連れられてきた所は
緑あふれる公園だった。



しかし周りには遊具もなにもない
ただの広場だ。



「そこに座ってクロード君。」


「・・・・」


クロードは言われたとおりに
腰を下ろす。


するとフォルトはなにやら黒いスーツケースを開け始めた。


「・・・・がっき?」


クロードは初めて見るものに興味を示す。


「そう、バイオリンって言うんだ。」


そしてフォルトは目をつむり
弓で弦を弾きはじめる。


「・・・・・」


自然とクロードの目も閉じた。


その音は澄んでいて
まるで大空を飛んでいるような感覚をおぼえる。


「・・・・・すごい」


「ありがとう。触ってみる?」


「・・いいの?」


「もちろんだよ!」


フォルトはクロードにバイオリンを渡す。


「・・・・うぁ」


「これはね、僕の宝なんだ。僕はこれがなければ生きていけない。それほど大切なんだ。」


「・・宝」


クロードはバイオリンをじっと見つめる。


「今僕は世界中で演奏会をして毎日楽しい生活を送っているんだ。でもね、こんな生活を送れるのもマーシャさんやリオナ君やウサギさんたちのおかげなんだよ?」


「・・・・・え?」


クロードは驚いた表情をする。


「僕はね、昔死刑囚だったんだ。でもリオナ君が国王に直接訴えてくれたおかげで今がある。リオナ君たちは僕の命の恩人なんだ。」


少し照れくさそうに笑った。


「・・・・・・怖くないの?」


「はい?」


「・・・・悪魔なんだよ?」


苦々しい視線を向けてくるクロードに
少し困ったように笑いかける。


「初めて会ったときは僕も知らなかったんだ。ただ強いとは思ってたけどね。あの時は本当に驚いたよ。まさか悪魔がこの世に存在するとは思わなかったからね。」


フォルトも地面に腰を下ろし
クロードの頭をなでる。


「確かに悪魔は正義か味方か僕にはわからない。けれどリオナ君たちは間違いなく悪い人たちではないってわかるよ。」


「・・・・・」


「クロード君は悪魔が嫌いかもしれないけど・・・すべての悪魔がクロード君が嫌いな悪魔ではないと思うんだ。」


「・・・・・うん」


「リオナ君たちはイイ人たちだよ。だからキミには僕と来る前にちゃんとリオナ君たちをわかって欲しかったんだ。」


フォルトは優しく笑いかける。


「・・・・・・ありがとう」


「いいえ。さっ!何か食べにいこうか!」


「・・うん。」



クロードはフォルトに手をさしのべられ
そっと握った。










・・・・確かに僕は・・・悪魔は嫌いだ・・・・・










だって悪魔は・・・・・僕から大切なものばかりを奪っていく・・・・・











でも
あの人たちはいい人たちだってことはわかってる・・・・













それでも・・・・自分でもどうすればいいか・・・わからないんだ・・・














・・・・僕は・・・・・・いつもひとりだったから・・・・









いつも・・・・・いつも・・・・・













だからわからないんだ・・・












接し方が・・・・














あんなに優しい人たちへの・・・・接し方が・・・・






















その頃
マーシャはリオナの後をついて行っていた。


リオナはマーシャに任せると言われ
取りあえず町をぶらぶら歩き回る。


すると大分歩いた頃に
ようやくリオナが足を止めた。


「あっ・・ここがイイ。」


「まじ?ここでいいのかよ。」


「うん。」


マーシャはゲッとした表情をした。


そこは今にも崩れそうなボロ屋。


人が住んでいる様子はなく、
中はがらんとしている。


しかしリオナは表情一つ変えずに中へ入っていく。


だからマーシャも仕方なく後を追った。





「懐かしいな・・・」


リオナは少し嬉しそうに中を見渡す。


まるで我が家にいるかのように。


「・・・マーシャ」


「ん?」


「俺ね・・・昔・・・マーシャに出会う前まで・・・こういうボロ屋に住んでたんだ。」


「ラグの町か。」


「そう・・。俺の両親はビンボー生活が好きでさ、やっぱり俺もすきだった・・・・」


リオナは壊れかけのソファーに座る。


「父さんと母さんと・・・まだ思い出しきれてないけど・・俺の兄弟と・・・幸せに暮らしてた。」


「・・・・」


「父さんと母さんはいつまでたっても恋人気分でさ・・・見ててこっちが恥ずかしくなるくらいだった。」


「なんかリオナと全然違うな。」


「確かに。でもそんな感じの2人だから俺が悪いことしても全然怒らないんだ。むしろ誉めるくらいだった。でも・・・1回だけものすごく怒られたことがあった・・・」


リオナの表情が一気に暗くなる。


「俺が・・・トランプで金儲けをしたんだ。あの時の父さんと母さんの顔・・・すごく・・・悲しそうだった・・・。でも俺なんでだかそのあと家飛び出してさ・・・気づいたら王宮に乗り込んでた・・・しかもその後すぐに事件が起きたしね・・・」


マーシャはあの日の光景を思い出す。


リオナが弟を抱え
泣きながら父親に謝っていた姿を・・・・



マーシャは思わず息をのんだ。


「・・・・・・そうだったのか」


「俺・・・バカだよなぁ・・・なんであの時・・・・父さんと母さんに反発しちゃったんだろ・・・・なんで最後の最後で悲しませちゃったんだろ・・・・」


リオナはソファーに寄りかかり
天井を仰ぐ。


「最後に・・・ちゃんと謝りたかった・・・・」


・・・・ごめんなさいって・・・


ちゃんと謝れば・・・父さんと母さんは戻ってくる・・・・



そう思ったんだ・・・・・





すると上を見続けるリオナの前に
マーシャが立った。


「お前は謝る必要はない。」


「・・・・え」


予想外な言葉にリオナは少し訝しげな顔をする。


しかしマーシャはいつもの口調で話し出した。


「考えてみろよ。お前みたいな口ベタに謝られたって気味が悪くて気分が悪くなる。」
「な・・・!!!」
「お前の両親だってそう思ってるさ。」
「・・・・・!」


マーシャは勢いよく立ち上がったリオナを引き寄せ、
力強く抱きしめた。


「でもお前の両親は幸せだよなぁ。」


「・・・・・?」


そしてマーシャはニカッと笑う。


「こんないい息子に育ってよ。」


「・・マーシャ・・・・・」



「それにお前にはまだやることがあるだろうが。謝るならその後だ。」


マーシャはニヤッと笑い、
リオナの頭をクシャクシャッとなでた。


「・・うん。」





ココロの中の・・・わだかまりが・・・一瞬にして消え去った。







・・・・・マーシャ・・・・・・・・・







本当は・・・・照れくさくて・・・・言いたくないけど・・・






「ありがとう・・・マーシャ。」


「ははっ。いいっての。」


するとリオナはマーシャの後ろから腕にからみつき
人なつっこそうな表情をした。


「・・・・マーシャ、大好き」
「あっ、やべぇ。今もう一人の俺がいけないことに」
「ばっ・・・・バカやろっ!!なに言ってるんだ!!」
「一緒に新たな世界を切り開こうか?」
「勝手に言ってろ・・・!!」
「ジョーダンだって。ってあっ待ってよリオナ君」





なぁマーシャ・・・・・









いい息子になれたのは・・・
自分のおかげなんかじゃないよ・・・・







マーシャと出会ったから・・・・








マーシャが俺のすべてを・・・・








・・・・マーシャが俺の世界を









変えたからだよ・・・・・・・















それから何日かをフォルトと過ごし
出発前日の夜、
フォルトがリオナ達を高級レストランへ招待した。




キッ・・・キッ・・・キッ・・・




ムジカはナイフとフォークをつかったことがなく、
危うく食べ物を周りにとばしそうになる。


そんな危なっかしい様子に
リオナは食事ものどを通らずに
心配そうにムジカを見ていた。


キッ・・・キッ・・・キッ・・・ガシャン!!



「ぅ・・・・・・!!」


やっぱり・・・・やっちゃったよ・・・


「あーあ。またムジカがやらかした。」


「・・・・ごめんなさい」


「いいんですよムジカちゃん!僕が食べやすく切ってあげます!」


そういってフォルトはムジカの後ろに回り
料理を食べやすく切り刻んでいく。


ムジカのちょっと頬を赤くする表情に
リオナは少し妬いた。


「へぇ、フォルトはそうやって女を口説くのか。」


ニヤッと笑うマーシャ。


「な・・・・なに言ってるんですか!!あなたって人は!!!」



フォルトの手つきが少し危うくなる。


「・・・でもフォルトさんは・・・マーシャと違って女性の扱いがうまいわよね・・・」


「今ルナ、俺の名前強調したでしょ。」


「・・さぁ・・?」


「・・・。だってフォルトは経験豊富だから俺とはくらべもんになんねぇよ。」


「なっ!!!だからマーシャさんってば!!」


しかしマーシャのいじりはこれだけで終わるはずがない。


「俺知ってるぜぇ?確か最後に会ったのは3年前だっけ?そん時フォルトの家に行こうとしたら家の中からめちゃくちゃ綺麗な女の子が出てきてさ、アツーイキッスを交わしてたぜ。」


マーシャの話に思わずリオナはむせる。


もちろんフォルトは顔を真っ赤にさせ
マーシャにつかみかかった。


「み・・・見てたんですか・・!?!?!?!」


「一部始終拝見させてもらった。」


「・・・・・・・!!!!」


フォルトは顔から蒸気を発しながら
席に戻りワインを一気に飲み干す。


そしてさらに顔を赤らめながら
恐る恐る口を開いた。


「じ・・・実は・・今年の夏に・・・・・結婚するんです。」


「・・・・本当?フォルトさん!!」
《ヒューヒュー!!》
「なんだよ。早くいえよ。」


「だっ・・・だだだだだだって言ったら今みたいにからかうでしょ!?だから後日手紙で送ろうと思っていたんです・・!!」


フォルトは再びワインをグイッと飲む。


「悪かったよ。でも本当におめでとう。」


「ありがとうございます。」


「・・そっかぁ・・フォルトさん結婚するのかぁ・・・じゃあクロードは二人の子供みたいなもんか。いーなークロード。」


リオナが羨ましげにクロードに話を振ると
クロードは動かしていた手を止めた。


「・・・」


「・・・・?クロードどうしたの・・?」


「・・・何でもない」



しかしクロードはただ首を横に振り
再び手を動かし始める。


「・・・・?まぁとにかくクロードをよろしくな。」


「はい!あっそういえばマーシャさんたちはどちらを目指しているんですか?」


「UNKNOWN WORLDだよ」


「UWですか・・!?あのA.R.ユニオンのある!?」


「ああ。」


「そうですか・・・」


急に暗くなるフォルトの表情に
マーシャが訝しげな顔をする。


「あんま良くないか?」


「い・・いえ!そんなことは・・・・!!最近ではUWが急激に発展していてですね、どうやら経済力は世界第三位らしいですよ!ですが・・・ちょっとマーシャさんたちにはオススメできないかも・・・」


「なんで??」


「噂なんですが・・・どうやら"悪魔狩り"の本部があるそうで・・・」


マーシャはその言葉にため息をつく。


「やっぱりな。UWは世界政府とダークホームの目から逃れるにはもってこいの場所だし。」


「はい・・・でもそれだけじゃないんですよ・・。つい先日UWのA.R.ユニオンが光妖大帝国およびローズソウルを所持する森羅四大帝国と武練大帝国にテロ指定国家宣告をだしたんです。」


「ってことは・・・・・・・戦争が起きるってことか・・?」


「それはまだわかりませんが・・。」


「でも起きてもおかしくねぇな。なんつったってA.R.ユニオンは国家極秘武装組織も兼ねてるからな。」


・・・・A.R.ユニオン・・・か・・・・


「俺たちの敵かな・・・」


「どうだろうな。利用の仕方によっては敵にもなるし味方にもなる。ただこれ以上は敵を作りたくないよな。」


《切実な願いなのだぁ!!》


「そう。切実な願いだ。」


その場が少し静まり返る。


「あ!」


するとなんとか料理を食べていたムジカが沈黙を破るように急に声を上げた。


「・・・どうしたんだよムジカ?」


「・・・昨日の夜のお祈り忘れてた・・」


ムジカは顔を真っ青にし
手で口を押さえる。


「は?お祈り?」


「・・・ムジカは寝る前に必ずお祈りをしてるんだよ。」


「へぇ。てか誰にだよ。まさか神様じゃないだろうな?天敵だぞ?」


マーシャはからかうようにニヤッと笑う。


「は・・・・!!」


「って図星かよ。」


「ち・・・違うよ・・・ルナにだよ・・・」


「・・・・わたし・・・・・・!?」


「だってさ。どーするルナ?」


「・・・おいマーシャ、あんまりムジカをいじめるなって」


楽しそうに話す様子を
クロードはじっと見つめる。


しかしその表情は自然と柔らかくなっていった。


「あっ、クロードがわらったぁ。」
《笑った笑った!!》
「・・ホントだ」
「・・かわいい・・・・」
「ひ・・・ひどいよ・・・・クロード・・」


「ぼっ・・・僕は笑ってないよ!」


クロードは顔を真っ赤にする。


「で・・・でも・・・ちょっとだけ楽しかった・・」


「・・・クロード」


リオナは思わず、可愛いと思ってしまった。


「うぅぅぅぅぅ!!!」


「てかなんでフォルトは泣いてんだよ。」


「だっでクロード君がちゃんと会話しでるがらぁ!!!」


わんわんと泣き続けるフォルトに
一同が笑った。


もちろんクロードも。








こんな時が永遠に続けばいいのに








いつもそう思う









だから今度は思うだけでは終わらせない









みんながずっと笑ってられる世界を・・・



いつまでも一緒に暮らせる世界を・・・



出会いを恐れることのない世界を・・・




俺は造っていきたいな・・・・



























ついにクロードと別れの日が来た。



フォルトはまだ一回講演が残っているため
クロードと共にリオナ達の見送りにきていた。



「なんか寂しいね・・」


ターミナルに向かう道中
ムジカは悲しそうにため息をつく。


「でもまた会えるよ。」


「そうだね・・。」


そのクロードはというと
朝からずっと黙ったまま。


やはりまだ悪魔が嫌いなのだろうか。








リオナ達はあっという間にターミナルに到着し
荷物をスタッフに預ける。


「じゃあフォルト。クロードをよろしく頼むな。」


「はい!皆さんお体には気をつけて!」


「・・・・結婚式には絶対呼んでね、フォルトさん」


「もちろんです!」


フォルトとの別れをすますと
リオナは最後にクロードに近づく。


「・・・・クロード」


「・・・・?」


リオナはしゃがんでクロードと目線を合わせる。


そしてなにやらポケットから取り出した。


「・・・・これあげる」


「・・・?」


そう言ってクロードの首にかける。


「・・・・鍵?」


そう・・・バルトからもらった・・・


大切な・・・・鍵


「これは俺のお守りみたいなものだ。それをクロードにあげる」


「え・・・でも」


「俺は十分守られた・・。だから今度はクロードの番。」


そう言って、
リオナはギュッとクロードを抱きしめた。


「・・・・クロードに会えてよかった。元気で。」


「・・・お・・兄ちゃん・・・・」


「じゃあいいかお前ら。出発するぞ?」


そう言ってマーシャ達はターミナルエントランスに向かう。


「それじゃあまた。」


「はい!また!」


そうしてリオナ達は
ターミナル内に消えていった。




フォルトは振り続けていた手をおろす。


「行ってしまいましたね。さて、じゃあ僕たちも・・・・」


そう言ってフォルトがクロードに目を向ける。


「・・・ぅ・・・・ぅぅっ・・・・」


「・・・・クロード君」


いつの間にか、クロードは涙を流し
リオナからもらった鍵を握りしめた。


・・・もう・・・・泣かないと決めたのに・・・




・・別れるのって・・・・・




こんなにつらいんだ・・・・・



「クロード君・・」


するとフォルトはクロードの手を引き歩き出す。


そしてなぜかターミナルのエントランスに入っていく。


「すいません!子供一人のUW行きのチケットください。」


「・・・!?・・・・・フォルトお兄さん・・・?」


フォルトはチケットを受け取ると
クロードに無理矢理持たせてターミナル内に押し込んだ。


「行きなさいクロード君。」


「・・・・!?・・・・でも」
「その代わり約束してください!」
「・・・・・?」


フォルトはいつものように優しく笑いかける。


「自分の気持ちをちゃんと彼らに伝えてくださいね!」


「フォルトお兄さん・・・」


「さっ!早く早く!!」


「・・・!!」


フォルトは涙をグイッと拭き取り
深く頭を下げた。


「あ・・・・・ありがとうございます!」


そう言ってクロードは駆け出した。



・・・・そうだよ・・・・伝えなきゃ・・・・・


自分の気持ちを・・・・


本当の・・・・気持ちを・・・・




クロードは全力で走る





大きく腕を振りながら






大切な者を求めて








クロードは出発間際のUW行きファストラインにたどり着いた。


そしてきれる息を整え、
思いっきり叫ぶ。


「おにぃぃぃぃちゃぁぁぁぁん・・・・!!!」


万事休す

少し離れたところに
乗り込む寸前のリオナたちが足を止めた。


「・・・?・・・・クロード!?」


リオナたちは驚きで目を丸くする。


「・・・おま・・・、なんで・・!?」
「僕・・・!!!・・・・お兄ちゃんたちが悪い人じゃないって・・・わかってた・・・・!!!!」


「・・・・」


「僕・・・・ぼくね・・・!!お兄ちゃんたちが・・・・」


クロードは再び息を吸い込む


「お兄ちゃんたちが大好きだよ・・・・!」


「・・・!」


クロードはたまりだす涙を堪えるように
歯を食いしばる。


「ぼ・・・ぼく・・・!!やっぱり離れたくないよ・・・!!寂しいよ・・!!せっかくぼくをわかってくれる人ができたのに・・!!離れたくないよぉ・・!!」


「・・・・・・・」


リオナはただ呆然と立ち尽くす。


そんなリオナを見かねて
マーシャはリオナを小突いた。


「ほら、何とか言ってやれ。」


「で・・・でもさ・・・」


しかしそんなリオナをお構いなしに
クロードは叫び続ける。


「僕・・・何でもやるよ・・・!!!言うこと何でも聞く・・!!利用されたっていいんだ!!だから・・・だから・・・・!!!」


・・・これが・・・・・僕の気持ちだから・・・・・



「一緒に・・・いざぜでぐだざい・・・!!!!!!!!!!!」



堪えていた涙がどっと流れ出す。


泣かないって決めたのに・・・


お兄ちゃんみたいに・・・・強くなろうって決めたのに・・・・



やっぱり・・・・僕じゃだめかな・・・・



クロードは下をうつむく。


「はぁ・・・やっぱりお前も俺と一緒で弱いな・・。」


いつの間にか目の前に立っていたリオナに
クロードは目を丸くする。


「・・・!・・お兄・・・・ちゃ・・・」


リオナはしゃがみこんで
クロードの体を抱き寄せた。


「あんまり泣くと・・俺まで泣きたくなる・・だから泣くな。」

「・・・ゥ゙ン・・!!」


「・・・・よし。」


そう言ってリオナはクロードを持ち上げた。


「言っとくけど・・・命の保証はできないよ?」


「それでもいいよ・・!!」



「・・・・マーシャは変態だ。」


「わかってる・・・!」
「ひどいよリオナ君。クロードも。」



「それに・・・」


リオナは目を細める。


「俺たちは・・・悪魔だぞ?」


「関係ない・・!」



クロードは強いまなざしをリオナに向けた。


リオナもにらみ合うようにじっと見つめるが
やがてため息をもらし
小さくほほえんだ。


「・・・・。仕方ないな。じゃあ行くか。」



「・・・・うん!!」



リオナはクロードを抱えてマーシャたちの元へ戻る。


「・・・・って事だ。いいマーシャ?」


「異議なし。ただ変態には異議を申し立てる。」
「却下。」


すると突然
クロードはムジカとB.B.の元へ行き
さっと頭を下げた。


「あの時は・・ごめんなさい。」


「・・!!やめてよクロード・・!わたし謝られることされてないよ!?」


「でも・・・」


《オイラも気にしてないよーん!!》


「ね?よろしくねクロード」


そう言ってクロードの手を握った。


「・・ありがとう」



「よーし。さぁてお前ら早く乗り込め。あっ一番最後のやつは終点までトイレだめな。」


そう言ってマーシャが真っ先に乗り込む。


「アイツは変態か・・・しかも地味にいやだし・・・・いくぞクロード」


「ぁ・・・うん・・!」








パパ・・・・・・ママ・・・・・・


"クラッピー"










僕ね・・・・もう寂しくないよ・・・?








新しく家族ができたんだ







しかも僕がずっとほしかったお兄ちゃんがいるんだ









だからもう泣かないよ・・?
















次泣くときは・・・・












すべてが終わったそのときだから











第五章 革謎Quintetto!

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あきゅろす。
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