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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story42 証の世界




リオナ達はアイスカウンティーをあとにし
再びファストラインに乗車してUWを目指していた。




ファストラインは揺れが全くなく
ゆったりとくつろぎながら数日が過ぎた。






しかし、
途中途中で様々なところには止まったりするが
終点まで乗りっぱなしのリオナ達にとっては
少し外の空気が恋しくなってきた頃だった。




「・・ねぇ、あと何日乗ってればいいの?」



「そうだなぁ、軽く五日くらいか?」



「軽くないし・・。」



誰だよ・・・数日で着くっていった奴は・・・



「いーじゃんいーじゃん。歩いてたら一ヶ月じゃすまないぜ?」



「・・・・。」



まったく・・・マーシャのその前向きさを分けて欲しい。



リオナはため息をもらしながら
隣で眠るムジカを見た。



「・・ムジカはイイよなぁ。どこでも寝れて。」


「なになに?膝枕して欲しいのか?」
「・・・・違うって。」


すると突然
リオナ達の部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「どーぞ」


サッと姿を現したのは
ファストラインのスタッフだ。


『おくつろぎ中のところ失礼します。お手紙をお届けにまいりました。マーシャ=ロゼッティ様宛でございます。』


「おっサンキュー。」


『失礼しました。』


スタッフがいなくなると
マーシャは手紙を開ける。


「フォルトからだ。」


その名前を聞いてか
クロードは少し目を見開く。


一応これからお世話になるかもしれない人物だから
多少は気になるのだろう。


マーシャはざっと目を通していく。


「・・なんだって?」


「ああ、"ぜひお世話をさせてくださいっ!!"ってさ。てか今ちょうど演奏公演でターミナル500にいるらしい。ターミナル500はっと・・・」


マーシャは地図を広げて
場所を確認する。


《オイラみっけ!!》


「・・お前起きてたのか。」


《なぁここじゃないのぉ!?》


「はいはいそーですよ。」


「・・・ってことは次の駅じゃないか?」


「本当だ。」


「・・じゃあそこで一旦降りてクロードを渡すか。でも2・3日は滞在するよな?」


「そうだな。いきなり引き渡すのもクロードが可哀相だし。いいかクロード?」


「・・・・・・・・うん。」


クロードは少し暗い表情で小さくうなずく。


しかしリオナは気にもとめず
フォルトとの再会を心待ちにしていた。


「・・・・フォルトさん元気かな。楽しみだ。」


嬉しそうに外の風景を見るリオナを
少し心配そうにマーシャは見つめていた。




・・・リオナのヤツ・・・あれから何にも言わないけど・・・




・・・・おかしすぎる・・・めちゃくちゃおかしすぎる!





マーシャはさらにジィっとリオナを見る。


「・・?な・・・なに?そんなに見てきて・・・」


「べぇつにぃ。」


「別にって・・・じゃあその顔やめてよ。気味が悪い。」


「やだ。ってかお前ら最近俺をなんだと思ってんだ。顔が変だとか気味悪いだとか。失礼しちゃうわ。」


「・・・じゃあまずその変態チックな口調をやめてくれ。」


「えーどうしよっかなぁ。もしリオナ君が俺にぃ、秘密なこと教えてくれたりしたら考えてやってもイイよ。」


マーシャは軽くかまをかける。


しかし
相手はリオナだ。
そううまくはいかない。


「・・秘密なことは秘密にしとかなきゃ秘密だとは言えない。俺トイレいってくる。」


そう言ってリオナは部屋を出ていってしまった。


チッ・・・逃げられたか。


「さすが俺のリオナ。」


「・・・・・!?」


勘違いしたのか、クロードは目を丸くしている。


「冗談だよ。てかなにその表情。そんなにリオナと俺って釣り合わない?」
「・・・・うん。」
「・・・・・・・・・・。」


おかしいな・・・


まぁ、リオナをイケメンに育てたのは俺なんたけど・・。


あっ・・そういやぁリオナの親ってどんな奴らだったんだろ。


リオナのおやじとは少し話したけど・・・顔はぜんぜん見えなかったからな。


あーなんか超気になってきた。


いや・・・だめだ俺。
もしかしたらまだ思い出してないかもしれないだろ?


あーあ・・・待つって言ったけどよぉ・・・待つのもつらいもんだなぁ・・・。


マーシャはリオナが座っていた席を見ながらため息をついた。













「・・・・ふぅ」


リオナは部屋を出ると
トイレには向かわず
ただまっすぐ続くファストライン内を歩き回る。


別にあの部屋にいたくなかったわけではないが、なんとなく部屋から出たかった。


とにかくリオナはまっすぐ進む。


「・・行き止まりか?」


しかし目の前には扉がある。


開けていいものかいけないものか。


リオナは悩みに悩んだが
好奇心に負け
扉を開けた。


「うわっ・・・すごい」


目の前に現れたのは
ガラス張りの空間だった。


ガラスは透明で、
外の景色が丸見えだ。


どうやらここはファストラインの最後尾らしい。


リオナは思わずガラスに張り付く。


周りに広がる景色が
ものすごいスピードで変わっていく。


緑が青に変わり青がまた緑に変わる。


まるで自分が景色に吸い込まれている感覚に陥る。


「・・・お兄ちゃん?」


「うぁっ・・・!!」


リオナは突然の声に思わず体をビクッとさせた。


「・・なんだ・・・クロードか。」


「・・・ごめん」


「いいよべつに・・。」


リオナはホッと胸をなで下ろしながら
手招きをする。


「・・・・こっち、おいで。」


「・・・いいの?」


「いいよ。」


クロードは緊張しながらも
表情には出さないが、少し嬉しそうにリオナの隣に行く。


「・・キレイ」


「そうだね・・。」


しばらく2人は景色に見入っていた。


すると突然
クロードがリオナをチラチラと見てきた。


「何・・」


「え・・・いや・・その・・・」


「はっきり言ってよ・・怒らないから。」


「・・・・・・」


「・・・・・?」


「その・・・お兄ちゃんには記憶がないの?」


まさかの言葉に
リオナは驚き、少し戸惑った。


「それ・・・誰から聞いた?」


「・・・マーシャとクロが話してるの聞いた」


クロ・・・?B.B.のことか・・・


「へぇ・・・。二人はなんて言ってた?」


「・・お兄ちゃんの記憶が戻ったとか戻ってないとか・・あと聞くか聞かないか」


・・やっぱりマーシャは気づいてたか・・・


「ふぅん・・・・そう。」


「・・・・・・・・・」


しばらくの間
沈黙が続く。


「・・・・・・・10年前だ」


「・・・・・・?」


クロードはリオナをジッとみる。


「10年前の・・・クリスマスの日。大魔帝国壊滅で記憶がなくなった。」


「・・・・・・・!」


「原因はわからない。恐らく家族を失ったショックじゃないかって医者には言われたけど・・・・・実際はどうだか・・・」


リオナは自嘲気味に笑う。


「僕と・・・・一緒だったの・・・?」


「そう・・。お前と一緒。俺は大魔帝国の生き残りだ・・。」


「・・・・」


クロードは顔を歪ませリオナから目を離す。


「・・・なんで・・・・・」


「へ・・・・?」


「なんでお兄ちゃんは・・・・そんなに強いの?」


クロードはリオナのズボンにつかみかかる。


「僕・・・・泣き虫なんだ・・・・いつも強がってるけど・・・本当は・・・・一人じゃなにもできないんだ・・・」


クロードは涙を浮かべながら
リオナの膝に抱きつく。


「・・・・クロード」


「僕・・・パパやママが残した世界で・・・ただ必死に生きることしかできないんだ・・・・」


「・・・・・・」


するとリオナは静かに問いかける。


「お前は・・・なんで必死になって生きようとするんだ?」


「・・・え・・・」


「こんな世界・・・壊れちゃえばいいって思わないか?」


リオナの冷たい表情に
クロードは少し体を離す。


しかし怯むことなく口を開いた。


「なんで・・?なんでそんなこと思うの?」


クロードはリオナの足を強くつかむ。


「だって・・・だってこの世界は・・・僕とパパとママが一緒に生きてた・・・」


「・・・・・」



「生きてた証なんだよ・・・?」





俺の中で・・・・何かが破裂した・・・・







・・・クロードは・・・まだこんなに小さいのに・・・








ちゃんと・・・現実を受け止めてる・・・・












一人取り残された世界で・・・必死に生きてる・・・















それに比べて・・・俺は・・・











「・・・何やってんだろ・・俺」



リオナはポンとクロードの頭に手を置き
優しい顔つきになった。



「俺も・・・・強くないよ」


「・・・・?」


「俺だって泣き虫だ・・・・いつも隠れて泣いてるよ。」


リオナはしゃがみ
クロードの顔をのぞき込む。


「・・・・それで、いつもマーシャが抱きしめてくれて。ほら、俺なんか全然強くない。」


「・・そうなの?」


「・・・・うん、そうだよ。でもね、泣かないように努力しなきゃダメだよな。」


「・・・・・なんで?」


クロードは必死に考える。


「・・・・なんでだろう」


キョトンとしたクロードの表情に
リオナは優しく笑いかける。


「強くいたいからかな・・。」


「・・・・」


「少しでも・・・強くいたいから・・・・。クロードだってきっとそうだ。俺から見ればクロードは俺より全然強いよ。」


「でも・・ずっと泣かないのは・・・辛いよ・・?」


「そうだな・・・だからまた隠れて泣くとか?あー・・・・俺って全然ダメだね。」


「ははっ・・・うん。」


「でも・・・誰かと一緒なら、頑張れるかも。クロード、一緒に頑張ってみる?」



「うん。」


クロードの表情が少しだけ明るくなった。







・・・そうだ。






俺なに考えてたんだろ・・・







・・・壊れるのはまだ早い・・・










俺にはまだやらなきゃならないことがある・・・










もう・・・壊れたいなんて思わないよ・・・







こんな世界壊れればいいなんて思わないよ・・・・








だってこの世界は・・・









クロードが言ってたように・・・・・・







父さんと母さんと・・・今はまだわからない兄弟と・・
俺が生きてきた













証だから・・・・











「・・よし。部屋に戻るか。」


「うん。」


リオナは手をさしのべると
クロードは照れくさそうに手を握った。













部屋に戻ると
ムジカもルナもB.B.も起き、
なにやらせわしく準備をしていた。


「おおお前ら。今呼びにいこうと思ってたんだ。てか長いトイレだことで。」


にやっと笑うマーシャに
リオナは一発バシッと叩いた。


「・・なにやってるんだ?」


「あと五分でターミナル500に着くんだって。」


「もう?降りる準備しなくちゃな・・」


リオナも急いで下車の準備をする。


その様子をマーシャがまじまじと見ていた。




・・・・リオナのやつ・・・なんかさっきよりスッキリした顔してんな・・・・




マーシャは無意識に顔をほころばせた。


「おいマーシャ・・今度はなにニヤニヤしてんだよ。」


「ナイショ。」


「あっそ・・・。あ・・・・そうだマーシャ・・・」


「はい?」


するとリオナは少し顔を赤くして
マーシャをちらっと見る。


「マーシャに・・・・・その・・・・・・聞いて欲しいことがあるんだ・・・。俺の・・・家族の話なんだけど・・・」


リオナは恥ずかしかったのか、
すぐに顔を逸らした。


「リオナ・・・」


マーシャははじめは目を丸くして驚いたが
すぐにいつもの表情に戻り
リオナの肩に腕を回した。


「いいよ、聞いてやる。でもそのかわりぃ〜」


「・・・・・?」


「ちゅー1回」
「殺す・・!」
「ジョーダンだよ」
「当たり前だ・・!!」
「ちぇー。ホントは本気だったのに。」



リオナはマーシャを振り払い
部屋を出て
出口に向かう。


しかしすぐに戻ってきて
マーシャに向けて舌を出した。


そして・・・


「約束だからな・・。」


「ははっ!はいはい。」




まずはマーシャに・・・・・話そうと思う














俺を育ててくれた・・・マーシャに・・・












俺の宝を










少し分けるよ










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