[携帯モード] [URL送信]

【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story40 再生と破壊





・・・・・・り・・・・・・・おな・・・・・・・・








リオナは服屋から出ると
突然足を止めた。


「・・・・・・・・・・?」


「どうしたの?」


「い・・・や。なんか誰かに呼ばれた気がしただけ」


リオナは一度止めた足を再び動かし始める。


「・・・それにしても人が多いな。」


先程から今日泊まるはずのホテルが見えているのだが、人混みのせいで近づけない。


しかも背の小さいクロードは
一度手を離してしまうと人の流れに巻き込まれ
見失ってしまう。


すでに3回やらかした。





結局ホテルの部屋に到着したのは日が暮れてから。


部屋は二部屋用意され、
男女にわかれた。


B.B.はもちろんルナにべったり付いていった。


「・・・・あの役立たずが。」


リオナは疲れた体でベッドをゴロゴロしながら
枕をB.B.だと思い、
思い切り殴る。


そもそもこんなに時間がかかったのはB.B.がわがまま言って暴れ回ったせいだ・・。


考えるだけでイライラしてきたリオナは、
今度は枕を蹴り上げる。


「こらこらリオナ君、枕に罪はないんだから。」


「・・・じゃあ今すぐあのバカウサギを呼んできて。」


「だって呼んできたらリオナ引きちぎっちゃうでしょ?」


「・・・引きちぎらないし。むしろ跡形もなく消し去ってやる。」


「いやいや怖いから。」


マーシャは苦笑しながら
リオナ達が買ってきたものを見始めた。


「おっ、いい色のコート買ったなぁ。よかったなクロード。」


「・・・・・・・・・・・・・うん。」


「あとマフラーと手袋か。うんうんセンスいいじゃねぇか。なぁコッチの袋は何だ?」


その瞬間、
リオナの動きが止まった。


「・・・・・見ればわかる」


「?」


マーシャは袋の口を開けてみる。


「ぁあ?なんだこれ?」


そこから出てきたものは
長いコードに色とりどりの電球がついた
クリスマスツリーにつけるライトだった。


もちろんマーシャの顔はヒキツる一方。


「ははーん・・・なるほどね。」


「・・・・俺は精一杯止めたんだ。」


「わかってる。あのクソバカアホでドブネズミ以下の生きる価値がないウサギの始末は俺に任せとけ。」


マーシャは目をギラギラさせ異様なオーラを放ちながら
クリスマスツリーのライトを引きちぎった。


「・・・・・・・・・・・・ツリー」


するとクロードがボソッと呟いた言葉に、
リオナが反応した。


「・・・クリスマスツリー見たことあるか?」


「・・・・・・・・・・・・たぶんない」


「・・そうなのか?うーん・・・そうだなぁ・・」


するとリオナは紙とペンを取り出し、
クリスマスツリーを描き始める。


「・・・まず凄く大きい緑色の木にだな・・・・いろんな色のこーゆー丸い飾りとか人形とかが・・・ぶらーんてぶらさがってて・・・・あっ、さっきマーシャが壊したあのコードを巻き付けたりして・・・あれにスイッチ入れると光るんだ・・・・・で、大抵のツリーにはてっぺんに星がついてるんだ・・・・・・・こんなもんかな。」


リオナは自分的に上手く描き終わった絵を少し嬉しそうにクロードに見せた。


「・・・・・・・・え・・・あ・・・・」


しかしクロードは逆に少し困った顔をしていた。


するとマーシャが後ろからリオナの絵を取り上げる。


「ん?どれどれ見せてみろ。」


「・・・どう?なかなかじゃない?」


しかしその絵はなんというか
新種の生物みたいなものに見える。


「・・・・あ・・・・ああ。いつも通り素晴らしい絵ですね・・。」


・・・白々しい・・・


「・・・・・。どーせ俺には才能がありませんよーだ・・・」


リオナは頬を膨らませ
ぷいっとする。


するとその光景をクロードは不思議そうに見つめていた。


「ははっ。クロードがびっくりしてるじゃねぇか。」


「・・・・・・・・・・・・・・・なんていうか」


「?」


「・・・・・・・・・・・・・・人は見た目じゃわからいな・・・って」


クロードは少し顔を赤らめながら目をそらした。


「ははっ。確かにそうだな。リオナって冷たく見えるけど話せばすんげぇおもしろいやつなんだぜ?しかも可愛いときた。」


「・・面白くないし可愛くない。」


「そこがウケるんだよ。」


リオナはケラケラ笑うマーシャを睨む。


「あっそーうだ。なぁ今からツリー見にいかね?」


唐突な発言にリオナは思わずむせる。


「・・・もうクリスマスは終わったぞ?」


「リオナ君はココをどこだと思ってる?ココは一年中クリスマスみたいなもんだぜ?」


「へぇ・・・。でも俺パス。」


「なんでだよ。」


「・・だって疲れた。」


するとマーシャはリオナの耳に口を寄せて小さくつぶやいた。


「お前クロードを見てろよ。あいつやっと口きくようになったんだぜ?」


・・確かに・・はじめはむしろ睨まれたりしていたけど・・


「・・でもなぁ」


「クロードはまだ子供だ。本当は寂しいんだよ。だからつい生意気言っちまう。な?可哀想だから連れてってやろう?」


・・・最近気がついたが
マーシャは何だかんだ子供好きだ・・・


そして俺はマーシャに甘い。


「はぁ・・・わかったよ。」


「そうこなくっちゃ。よーし男水入らずでデートいくぞぉ。」


デートって・・・・・・・


リオナはため息をつきながら
仕方なくマーシャのデートとやらにつき合うことにした。













「うぁー・・・・さむっ・・」


外はすっかり暗くなり、
冬の寒さが身にしみる。


リオナはマフラーに顔を埋めながら足ぶみをして体を温める。


「・・・・・・・・・・・・」


クロードはそのリオナの動きを見て
少し真似してみた。



なぜその動きをするのかが分からず、
クロードは眉をひそめながら足踏みを続ける。


「ははっ!なんか兄弟みたいだなぁ。」


マーシャはニヤニヤしながら後ろから眺める。


「・・・・誰とだよ」


「お前とクロード。だって動きが同じなんだもんよ。」


「・・な・・・!」


リオナはバッとクロードに顔を向け
ジッと見つめ合う。


「・・に・・・似てない!」


リオナは顔をプイッと逸らすと
さっさと先に歩いていってしまった。


「なんなんだよアイツはぁ。もっと優しさがないのかねぇ。」


「・・・・・・・・・きっと・・・・・・僕があの事言ったから・・・・・」


クロードは少し暗い顔をする。


「・・・・?あの事?」


しかしクロードは何も言わずにリオナのあとを歩いていってしまった。


・・・リオナとクロード・・・何があったんだ・・?


マーシャは不審に思いながも
なるべく表情に出さないよういつものようにおちゃらける。


「・・というか本当にツリーなんてあるのかよ。クリスマスはとっくの昔に終わってるのに。」


「だぁかぁらぁこの国は別なんだよ。」


「・・・でも前に来たときはなかったよ?」


「それは仕事で忙しかったから見れなかったの。」


「・・・ほんとかな」


確かに雪で埋まる真っ白い地面を見れば
クリスマス気分にはなってくるのだが・・・


「・・・・・・・・・・・・あ!」


すると突然
クロードが声を上げて走り出した。


「あっ・・・・おいクロー・・・って・・・」


リオナは思わず足を止める。


「本当だ・・・」


「だろ?だから言ったじゃーん。」


目の前には巨大なクリスマスツリー


キラキラと輝くライトは夜空の星よりもキレイだ。



ただ予想通りツリーの周りには大勢の人が。


しかしそんなのお構いなしにクロードは人ごみに押し入っていく。


「あーあーあんなに入って。追うぞリオナ」


「え・・・・・・・」


リオナは人ごみが大の苦手。


しかしマーシャに引っ張られるままに
中に突入させられてしまった。


「・・・ぅっ・・・・・キモチ悪っ・・・・」


リオナは思わず口を押さえた。





・・・・・あれ・・・?






なんだろう・・・・この感じ・・・




リオナは不思議な感覚を覚えながらも
マーシャにひかれるまま前に突き進む。






「おーいたいた。こんなとこにいたのかよ。」


ボウッとしているうちに
クロードのもとにたどり着いていた。


クロードがいた場所は
人ごみの先頭のツリーのすぐ下。


「・・・・キレー」


クロードは目を輝かせながらツリーを見上げる。


「コレが本物のツリーだ。」


「・・・・・・悪かったな下手くそで・・・・ぅぇ・・・・」


リオナが口を押さえてしゃがむ姿を見てクロードは少しビックリしたような顔をした。


「・・・・・・?」


「ああ大丈夫大丈夫。コイツ人ごみに酔いやすいだけだから。」


・・・・知ってるんだったら無理矢理つれてくるなよ・・・・


リオナが心で悪口を言っていると
ツリーのすぐ近くからなにやら声が聞こえてきた。


『さぁ今からスペシャルマジックをはじめるよー!!さぁさぁこっちにきたきたぁ!!』


「へぇマジックねぇ。おもしろそーじゃん。」


そう言ってマーシャは再びリオナとクロードの手を無理矢理引っ張ってマジシャンに近寄る。


クロードはすでに興味津々に身を乗り出していた。



しかしリオナはなぜか胸がもやもやしていた。


人ごみで酔ったせいではない。


『じゃあまずはトランプマジックから!!』


そう言ってマジシャンはトランプを取り出した。



・・・・トランプ・・・・・


その瞬間、
リオナは一瞬にして目の前が真っ暗になった。






・・・・賑わう町・・・・









巨大なクリスマスツリー











たくさんの人々・・・・・・














・・・トランプマジシャン・・・






そして突然
言い知れぬ頭痛がリオナを襲う


この・・・感覚は・・・・!!!!



い・・・・いや・・・・いやだ・・・・思い出したくない・・・・・!!!



やめてくれ・・・!!嫌だ嫌だ嫌だ!!!














"おおリオナ!ウィキ!!今起きたか!!"


・・・・・・父さん・・・・?




"二人とも顔洗ってらっしゃい"


・・・・母さん・・・・・・・




"コラッ!!散らかしたら片づけるの!!"
"そうだぞ!!俺なんか毎日残飯の片づけをしているんだぞ!?"
"ダン・・・それは片づけじゃないと思うけど・・・・"



"今日はリオナとウィキにプレゼントがありまーす!"
"なんと中央都市日帰りツアーだぁ!!!"




・・・・・ウィ・・・・キ・・・・・・・・・・?




"それにしてもすげー人だな"
"ねぇちょっと人混みばっかり見ないでツリーも見てよ!!"
"いいかお前ら・・・女ってのは面倒な生き物だからな"






"リオナは俺に似て人混みに酔いやすいんだなぁ!!ガハハハハハ!!!"



"またこようね!!"
"おう!!また四人で絶対こよう!!"






"・・・俺は金稼ぎさせるさせるためにお前らを育ててきた訳じゃねぇぞ!!"


"そんなに金が欲しいなら金持ちの養子にでもなっちまえ!!!"







"・・・俺・・・・リオナとウィキにはさ・・・親父みたいに金に溺れる人間にはなってほしくないんだ・・・・・・"










"リオナ・・・・・リ・・・・・オナ・・・・"








"・・・リオナは・・・・いつも素っ気なくて・・・・・冷たくて・・・・・・・弟が大好きな・・・・・どうしようもないやつだけど・・・・・・"











"・・・本当は・・・・すごく優しい子なんだ・・・・・・・・"











"・・・・・・・・息子を・・・・・リオナを頼む・・・・・・俺の・・・・・大切な・・・・大切な息子なんだ・・・・・"
















"・・・・・リオ・・・・ナ・・・・・・"























"お前は・・・・・・俺の誇りだ・・・・・"





















「・・・ぃ・・・ゃ・・・・・・・・・・」


リオナの異変に気がついた時には、遅かった。


「おいリオナ?どうし・・」
「ゃ・・・・やめてくれ・・・・!!!!!」


リオナはマーシャの手を思い切り払うと、
勢いよく走り出した。


「おい!!リオナ!!!」


マーシャは焦って後を追う。



リオナの姿はすでになかった。


・・・・マズいな・・・・記憶が戻ったのかもしれない・・・・


マーシャは珍しく顔をゆがませ舌打ちをする。


すると後ろから少し怯えたクロードがやってきた。


「・・・・・・・・・あの人は?」


「あ、ああなんか体調悪かったみたいだな・・・あはは悪いな気ぃ使わせてよ!んでさらに悪いんだけどよ、今日は一回ホテルに戻っていいか?またいつか連れてきてやるからさ!」


「・・・・・僕は大丈夫だけど」


「なんか・・・わりぃな」


そう言ってマーシャは焦燥感を抑えながらも
クロードの手を取ってホテルに向かおうとする。


「・・あの」


「・・・?」


「僕は一人で帰れるから・・・・・お・・・お兄ちゃんを探しに行って」


いつもは無口のクロードが
精一杯口を開く。


「でも・・」
「逃げないから・・・・ちゃんと部屋で待ってるから・・・」


「・・・クロード・・・・」


マーシャはかなり迷ったが、
状況が状況のため
リオナを優先した。


「クロード、お前を信じてる。」


「・・・・うん。」


「悪いな・・・あとでアイスおごってやっから!!」


マーシャはクロードの頭をクシャクシャっとなでてから
リオナが走り去った方へ走っていった。

















・・・・思いだした・・・・・・









思い出してしまった・・・・














父さん・・・・母さん・・・・・・












俺・・・・・・・何でこんな大切なこと・・・・・・忘れてたんだよ・・・・・・










・・・・・・・・ウィキって・・・・・













・・・・・・俺の兄弟・・・・・?











わかんないよ・・・・・・




















全然・・・・・・










なんで・・・・・












・・・嫌だった・・・











こんな記憶・・・・・・・思い出したくなかった・・・・












苦しい・・・・・・・











こんなにも・・・・苦しいなんて・・・・・・・・・












「・・・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・っはぁ・・・・・」


リオナは息を乱しながら、
どこなのかわからない森の木に体を預け、ストンと腰をおろした。








・・・・全部・・・・全部消えればいい・・・
















「リオナ・・!!リオナぁ!!」






・・・・マーシャ・・・・?







俺を・・・探してる・・・・








なんで探すんだよ・・・









探さないで・・・











お願いだから・・・・













今・・・マーシャに会ったら・・・・・俺・・・・・














「はぁ・・・はぁ・・・・・・あははっ、リオナみーっけ・・・!」


マーシャは柄にもなく息を切らしながらも
いつもみたいにニッと笑った。


「・・・・・・・」


リオナの頬は寒さで真っ赤に染まり
気がつけばその頬を透明の涙が伝っていた。


「どうしたぁリオナ・・・そんな顔されたら、襲いたくなっちまう・・」



「・・・・・・・・・・・・・」



「た・・・・頼むからツッコんでくれよ・・」


しかしオナは首をゆっくり横に振り、
下を向いてしまう。


「・・・・・リオナ・・・・・・」


マーシャはリオナの顎を掴み、クイっと上にあげた。


「お前が苦しいんなら・・・・・それを俺にも分けてくれよ・・・」


「・・・・・・・・・・」


しかしリオナはただただ首を横に降り続ける。


まるですべてを否定するかのように。


「・・・・・リオ・・」
「・・・・・マー・・・シャ・・・・・・・」
「・・・・・・・?」


リオナはマーシャの服をつかむ。


その体は小刻みに震え
涙は地面をぬらす。


そしてリオナは濡れた顔をそっとマーシャに向けた。


「・・・・人は・・・・なん・・・で・・・死ぬの・・・・・かな・・・・・・」



「・・・・・リオナ・・・・・」


「・・・・・・死ぬの・・・って・・・・どれくら・・・い・・・・・苦しいのかなぁ・・・・」



声はだんだんとふるえを増す




「・・・・・・マー・・・・・シャ・・・・・・・・・」




その声は心に突き刺さる・・・




「・・・・・・・た・・・すけて・・・・・・・・」



・・・・リオナの心の叫び



初めて出てきた・・・・・心のいたみ




「・・・・たす・・けてよ・・・・・もう・・・・・壊れそ・・・だ・・・・」




そして苦痛で歪んだ顔が小さく笑う。



「・・・・・お・・れ・・・・・おかし・・・く・・・なっちゃいそう・・・・・」



必死に堪えていた涙も
容赦なく一気に流れ出す。



「・・・・リオナ・・・・」



マーシャはそんなリオナを見ていられなかった。



だから気がついたときにはギュッとリオナを抱きしめていた。



「・・・・マーシ」
「・・・・壊れちゃえよ・・」



もう・・・半分壊れてるんだから・・・



・・・・いっそグチャグチャに・・・



「・・・・壊れて・・・・・狂って・・・・リオナがリオナじゃなくなればいい・・・」



「・・・マー・・・・・シャ・・・・・・・」



「大丈夫・・・俺がついててやるから・・・」



「・・ぅ・・・・・・・ぁぁ・・・・・・」














・・・・だから・・・・


















イヤだったんだ・・・・・・




















・・・マーシャに会うのは・・・




















マーシャは絶対にそう言うってわかってたから・・・・



















壊れていいって・・・・・・・



















イヤなんだ・・・・






















マーシャにそういわれたら・・・・・とまらなくなるから・・・・




















止まらなく・・・・なるから・・・・










「ぅっ・・・!!!ぁああぁぁぁぁあ・・・・!!!」



悲痛な叫びに似た泣き声は
静かな森に悲壮感を与える。





壊れかけていた俺の記憶は・・・・・・元の形を取り戻しつつある



でもその代償と言わんばかりに心はどんどん壊れていく・・・




・・・・このまま・・・世界も壊れてしまえばいいのに・・・・・・・






こんな苦しみだけの世界・・・・・








俺は欲しくない・・・・・・
























ザッ・・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・



マーシャはリオナを背負って
夜中の空の下を歩く。


街にはすでに誰もいない。



あれからリオナはずっと泣き続けていた。



そのリオナの悲痛な声がマーシャの脳裏に焼き付いている。



「・・・・・・・・」



ホテルの前まで来ると、
入り口に何かがうずくまる影が見えた。



マーシャはそれに近づく。


「B.B.・・・おいB.B.起きろ。」


B.B.は丸くしていた体をグイッと伸ばした。


《あっ・・・やっとかえってきたぁ!》



「しー!!リオナが寝てんだから。」



B.B.はピョンと飛び上がり
いつもの定位置であるリオナの頭にのる。



《リオナ・・・・・大丈夫か?》



「心配してたのか?」



《当たり前だっ!お・・・オイラはリオナの悪魔だもん!!心配くらいするさ!》



「はいはい。」



マーシャは少し笑みを浮かべる。


「このことルナとムジカは?」


《ルナは知ってるけどムジカは寝てて知らない。》


「そうか・・・。どうやら記憶が戻ったみたいだ。」



《ま・・・まじかよぉ・・・!全部?!》


「わからない。ただ泣いてただけだから。」


《何で聞かなかったんだよ!》


「聞けるかよ。」


《じゃあどうすんだよ!》


「どうするもこうするもリオナが話すまで待つ。それだけだ。」


《ぇえー!オイラだったら聞いちゃうのにぃ。》


「だろうな。」


するとマーシャは一度ホテルに背を向け
目の前に広がる街を目に映した。


「なぁB.B.。リオナの目には・・・この世界がどう見えてるんだろう。」


《うーん・・・・・》


悩むB.B.を見て
マーシャは少し自嘲気味に笑う。


「家族をなくして・・・記憶もなくして・・・・帰る故郷もない・・・・残ったのはすべての悪因であるローズソウルと深い心の傷だけ。」


《つらい・・・・かな》


「つらいもんじゃねぇよ。俺だったら・・・・こんな世界・・・」



壊してしまいたい・・・・


リオナを苦しめる全てのものも。


全部、この手でぶち壊してやりたい。


でもそう言って、
俺は結局何も出来ないんだ。


ただの偽善者。


だって、
さっきリオナの泣く姿を見て、


俺はリオナを
"美しい"と思ってしまった。


なんと扇情的なんだと。



俺はきっと、
この頃から、

もう引き返しが出来ないほどに、


リオナに依存していたんだ・・・・




[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!