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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story76 迷宮図書館




「ア゙ァー!!!ボクちん超不幸!リオナなんか落ちてこなきゃよかったのにッ!!!」


「・・・それこっちのセリフ。」


あれから半日歩いたが
クラッピーは未だに嘆き続けている。


マーシャに無理やり引っ張られながらクラッピーは鼻をすすっていた。


「おいピエロ。こっちであってんのか?」


「合ってるッチョよ〜。」


「てめぇ嘘ついてないだろうな?」


「まっさかぁ。だって嘘言ったらマーシャボクちんのこと殺すッチョ。」


「よくわかってんじゃねぇか。」


マーシャの脅しがこんなに効く奴は初めてみたと
リオナとB.B.は少し感心の眼差しを向けた。


「あっ!ほらあったッチョ〜!」


しばらくすると
広い草原に小さく建物が見えてきた。


だが近づいていくうちにだんだんとそれは大きくなっていく。


そして目の前まできた時にはすでにそれは"城"の規模だった。


《うわ!!でっかーい!!!》


B.B.は羽をばたつかせて飛び回ろうとする。


すぐにリオナに捕まえられるのだが。


「・・それにしてもすごいな。」


図書館ときいたから
ダーク・ホームにあった図書館のような平べったい感じを思い描いていた。


この城のような大きさなら世界中の本があってもおかしくない。


「ほんじゃさっそく入りますかー。」
「いってらっしゃーいッチョ!」


元気に手を振るクラッピー。


だがマーシャはごまかせない。


マーシャはクラッピーの頭を手加減なく殴り
襟元を持って引きずる。


「離すッチョォォォ!!!」
「いい加減諦めな。」
「嫌だッチョォォォ!!!」
「お前がいなきゃわかんねぇだろーが。」
「絶対絶対嫌だッチョォォォ!!!」
「カッチーン。」


クラッピーのわがままっぷりに
さすがのマーシャもキレる寸前。


顔が不気味に引きつっている。


こうなったマーシャは危ない。


過去B.B.が悲惨なことになったのをリオナは今でもはっきり覚えている。


その被害は関係のないリオナにも降り注いで。


全治二週間の怪我をおった。


だからリオナはマーシャがキレる前にクラッピーに近寄り
耳元でささやいた。


「・・おい。」


「リオナもボクちんを殴るッチョか!?」


「・・違う。お前、何が好き?」


「ボクちんはクロノス命だッチョ!」


「・・そうじゃなくて、好きな食べ物とか小物とか。」


「あっ!リオナさてはボクちんを物で釣るつもりだッチョね!髪どめがいいッチョ。」


「・・・・わ、わかった。後で買ってやるから今は大人しくしてな。」


「いくつ買ってくれるッチョ?」


「・・・いくつならいいんだよ。」


「14個。」


「・・!?おまっ・・・・・・・・わかった。その代わり黙ってマーシャに従え」


「了解だッチョ!」


リオナとクラッピーは立ち上がり
マーシャに笑顔を向ける。


「・・準備OK。早く行こう。」
「早く行くッチョ!」


急に態度が変わったクラッピーに
マーシャは訝しげな表情を向ける。


「どういう風の吹き回しだか知らねぇが、リオナに感謝すんだな。」


マーシャの堪忍袋も無事静まり
リオナは安堵のため息をつく。


子供は物で釣るのが一番。


B.B.は何年もこの手に引っ掛かっている。


「お兄ちゃん何したの?」


隣で少し目を輝かせて見てくるクロード。


はっきり言っては夢が崩れてしまうかも。


「・・ちょっと魔法みたいな、ね。」


「いいなぁクラッピー・・僕にもかけて!」


「・・・クロードはいい子だから効かないよ。」


「そうなの?」


「・・そう。悪い子限定。」


「なら悪い子になりたい。」


「・・・それは困る。俺はいい子なクロードの方が好きだけどなぁ。」


「じゃあいい子でいーや。」


「・・ははっ。それでいいよ。」


リオナはクロードの頭をポンポンとなでる。


《オイラもこのままでいいや!》


「・・・お前は変わるべきだと思うが。」



迷宮図書館は見た目は城でもやはり図書館。


厳重な警備もなく
かなり開放的な感じである。


その証拠に


「・・・入り口がない。」


どこから入っても本に囲まれるという開放的というより崩壊的。


「・・・不審者とか入らないのか?」


「それ館長に昔聞いたッチョ。そしたら"不審者はこんなつまらないとこにこない"って言ってたッチョ。」


確かにそうだが
館長自ら言わなくても。


それにしても驚くべきはこの本の量。


部屋をとびだし廊下の天井まで綺麗に揃えられている。


図書館内にはちゃんと利用者もいて、
人々はハシゴに登って本をとったり下から眺めたりしていた。


もちろん図書館ならではの静けさも漂っていて
リオナは心地よさに早速昼寝をしたいなどと考えてみたりしていた。


「いやーすげぇ数の本だな。これ探すの大変だろうな。」


「でも図書館内には係員が何人もいるッチョ。その人たちに聞けば一発だッチョ。」


そういえば先ほどから薄水色のポンチョを羽織った人たちを何人か見かけている。


恐らくこの人たちがクラッピーの言う係員なのだろう。


するとマーシャは顔をニヤつかせて呟く。


「エロ本とかあんのか?痛ッ」


案の定リオナに殴られてしまったが。


「・・・あのねマーシャ、クラッピーとクロードはまだアレなんだからそーゆーことは言うな。」


「ちぇ。リオナくんはエロ話とか嫌いだもんねぇ。それでも男か?」


「・・余計なお世話だ。大体あんなのの何が楽しいんだ。」


「そりゃあ性的快・・」
「・・もういい!!!わかったからだまれ。」


リオナは顔を真っ赤にさせ
クロードの手を引き先を行く。


「・・・クロードはあんな大人になっちゃダメだからな。」


「う、うん?」


リオナたちは書庫を抜け
一旦中庭にでて再び書庫を通り抜ける。


それを何度か繰り返していくと
ようやく上に繋がる階段とエレベーターにたどり着いた。


「館長ならここの最上階にいるッチョ。皆エベレターに乗るッチョ!」


「・・・エベレターじゃなくてエレベーター。」


本当に最上階で合ってるのか。


若干不安になってくる。


リオナたちはエレベーターに乗り込み
この迷宮図書館の最上階である5階のボタンを押す。


エレベーターがゆっくり動き出す。


するとB.B.がリオナの頭から離れなぜかクラッピーの頭に着地した。


《エレベーターもまともに言えないなんてバカだっちょ〜!ギャハハ!!》


「む!!またボクちんをバカにしたッチョねぇ!!!!!」


また始まったと誰もがため息をつく。


《バカにしてないっちょよ?ただ本当の事を言っただけだっちょ〜》


「もぉ怒ったッチョ!!!!!!」


クラッピーは勢い良くB.B.に飛び掛かった。


狭いエレベーターの中
ものすごい乱闘を繰り広げている。


いつもなら放っておくマーシャだが
さすがに今回はひどいと思い
止めに入る。


「おいやめろって!いい加減にしねぇとてめぇらまとめて殴り・・・」


ガコン・・・!!!!


だが最悪の事態はすでに起きてしまった。


突然エレベーターが止まり
中も真っ暗になる。


「ほらな。言わんこっちゃない。」


それでもまだ争いを続ける2人に
リオナもさすがにイラついて。


リオナは勢い良くB.B.の耳を掴んで目の前にぶら下げる。


《ちょっとリオナ!何すんだよ!》


「・・謝れ。」


《え!?》


「・・クラッピーに謝れ。」


《何でだよ!!オイラに手出してきたのあっちだぞ!?》


「・・その前にお前がクラッピーをバカにしただろうが。あんなこと言われて怒らない奴なんていない。」


《むー!!!最近リオナはクラッピーびいきだ!!》


「・・は?もしかして妬いてるの?」


《妬くかバーカ!オイラ謝んないから!!》


ベーっと舌を出すB.B.に
リオナは呆れてため息をつく。


ここまで精神的に子供だったとは。


「とにかくこれどうにかしねぇと動けねぇぞ。なんか非常ボタンみてぇのないのか?」


「ないッチョ。」


「じゃあせめて脱出できる穴があったらいいんだけど。リオナ明かりつけて。」


マーシャのむちゃぶりに一瞬戸惑う。


「・・え、明かりって・・これでいいのか?」


リオナは掌に魔力をためて火をともす。


それを見てクラッピーが目を輝かせて手をたたいた。


「すごいッチョすごいッチョ!!!もう一回やってッチョ!!」


「・・やらないし。てか早く探してよ。これ大変なんだからな。」


マーシャたちは火の光を頼りに出口を探す。


すると天井の方に小さな窓を見つけた。


「あの小窓から出れねぇかな?出て誰か呼んできてほしいんだけど。」


「・・・いや。たぶんあの大きさじゃ・・」


クロードくらいしか・・・


いやいや・・クロードはダメだ。


何かあったら大変だ。


《じゃあオイラが行くッ!!!》
「待てコラ。」


飛び出そうとするB.B.の羽をマーシャが掴む。


「お前はないわ。」


《なんでぇ!?》


「役にたたなそう。」


《ひど!》


B.B.の調子よさには飽き飽きする。


そんなことを思っていたリオナは突然クロードに腕を引っ張られ
かがんで耳をよせる。


「・・なに?」


「僕が行くよ。」


「・・え?」


「僕が登って誰か呼んでくるよ。」


そう言うとクロードはクラッピーの肩に飛び乗り
天井に手を伸ばそうとする。


もちろんクラッピーは目が飛び出すほどビックリしていた。


「クロノス!?」
「・・クロード待て!!!」


リオナとクラッピーが必死に止めに入った。


「・・・クロードは危ないからダメだ!!」
「そうだッチョ!!クロノスに何かあったらボクちん首吊るッチョ〜!!!!」


「だ、大丈夫だって・・!!僕木登り得意だよ・・!?」


「・・・木とエレベーターは違うんだぞ!?」
「そうだッチョ!!クロノスに何かあったらボクちん手首切るッチョ〜!!!!」


「え・・」


2人の必死さにクロードは苦笑を浮かべる。


だがその時
後ろからマーシャがクロードの腰をつかみ
持ち上げて自分の肩に乗せた。


「・・マーシャ!」
「何するッチョか!?」


マーシャは口元をニヤつかせついる。


こういう時は大抵何か企んでいる。


まぁ予想は付くが。


「2人とも過保護すぎだってぇ。ほら、"かわいい子には旅をさせよ"って言うでしょ?」


「・・それとこれとは違うだろ。」
「そうだッチョ!しかもこれは旅じゃないッチョ!!」


でもマーシャが言いたいこともわからなくもない。


これ以上この状況はまずい。


ここはクロードにかけてみるしか・・・


リオナはゴクリと唾を飲み
マーシャの肩にのるクロードを見上げる。


「・・わかったよ。でも何かあったら絶対にすぐ戻ってくるんだ。いい?」


「うん。」
「あぁッ・・!行かないでッチョ〜!!」


そう頷くクロードの横では
未だにクラッピーが嘆いていたが。



クロードは手を伸ばし
天井の小窓を開ける。


そしてその小窓からエレベーターの外にゆっくり顔を出した。


「おーい何か見えるか?」


「えーと・・エレベーターのひも。」


恐らくエレベーターを引っ張るベルトの事だろう。


「じゃあそれによじ登って上の階に行けるか?」


「やってみる。」


そう言ってクロードは体を全部エレベーターの外に出した。


姿が見えなくなると
リオナとマーシャは安心してため息をついた。


「・・というかクラッピーは何してるんだよ。」


なぜかエレベーターの床に大の字で寝転がっているクラッピーの頭を軽くつつく。


「何って決まってるッチョ!!クロノスが落ちてきても大丈夫なようにしてるッチョ!!!」


「・・・ふぅん。」


・・・こいつバカだ。


だれもが思ったが
もちろん口にはしない。


後がやっかいだから。


「大体ボクちんという存在がありながらクロノスがこんな目に合わされるなんて神様も罪深い方だッチョねぇ。あっ、神様は敵だったッチョか。」


「・・・元をたどればお前のせいだろ。」



「でもクロノスも成長したッチョねぇ。昔はあんなに木登りが嫌いだったッチョに。」


「そうなのか?」


「昔クロノスを背負って木に登ったッチョ。国で一番高い木だッチョ。てっぺんまで登ってきれいな景色を見たッチョよぉ〜?でもボクちん気持ち良くってうたた寝したッチョ。」


「・・・え。どこで・・」


「もちろんてっぺんだッチョ。」


・・・信じられない。


自分だったら怖くて・・ってちょっと待てよ。


「・・まさかお前・・・」


「うっかりしてクロノスをおっことしちゃつたッチョ。」


ぇえー・・


「・・・そりゃあ木登り嫌いになるよな。」


「ボクちんおっちょこちょいなんだッチョ〜。はははぁ〜。」


これがおっちょこちょいで済まされていいのか。


そもそもこんな奴を一国の王子の半身にしていいのか。


時々命の危機すら感じるのに。


《オイラの方が役に立つな。》


「・・・。」


まぁ否定はできないが。



そんな下らない話をしていたとき
上からクロードの声が聞こえてきた。


もう助けを呼んだのだろうか。


でもそれにしては早すぎる。


「・・・クロード?」


リオナたちは天井の小窓を下から覗く。


するとクロードの顔が暗闇にぼんやり見えた。


だがその表情はあまりパッとしない。


「・・なにかあった?」


「うん・・それが・・・」


クロードは一旦体を避ける。


その次に現れたものに
リオナ達は唖然とした。


「・・・な!!」
「ぇえ?誰だあんた。」


クロードの横から現われたのは白髪の老人・・いや生きたミイラとでもいおうか。


しわだらけの顔には満面の笑みが浮かんでいる。


その生きたミイラを見て
クラッピーは目をかっぴらいた。


「化け物だッチョォォ!!!」


『なぬ!?』


すると老人は床に寝そべるクラッピーの腹に思いきり着地した。


「グハゥ!!!!」


『バカなやつめ!ワシの顔を忘れよったか!!』


そう言ってクラッピーの頭を杖で突きだす。


「ま・・まさか!館長だッチョか!?」


『まさかとはなんだ。全くお前は何年たっても頭がポンカラカンなんだのぅ。』


いきなりの登場にリオナとマーシャは口をポカンと開けていた。


『そこの間抜け面の2人。』


杖で指摘されてようやく2人は我に返る。


だがマーシャは少しムッとして
向けてきた杖を握り返した。


「おい待てよクソジジイ。俺を間抜け面扱いだとは相当目が悪いようだな。」


『ワシをクソジジイとはよく言えたもんじゃ青二才。ワシは人間国宝じゃぞ。』


「なにが人間国宝だ。生きた死体の間違いだろ?それにお前が人間国宝なら俺はリオナ国宝だ。なぁ〜リオナ?」


「・・・。」


くだらない言い争いはもう十分。


リオナはクロードを天井から下ろして
とりあえず全員を床に座らせた。


「・・・でも、なんで館長がここにいるんですか?」


館長は優しそうな笑みを浮かべる。


『おぬしは頭がよさそうじゃのう。いやぁエレベーターの点検をしていたら途中で壊れてしまってのう。』


・・は?


館長自らエレベーター点検だと?


なんていい人なんだとリオナは少し感動を覚える。


『そしたらなんとクロノス様がいらっしゃるではありませんか。こりゃビックリだったのう。でも見た目があの時のままということは・・やはり"時"が止まってしまっているということか。』


人間国宝の名はだてではない。


すべてをわかっているようで。


リオナは思わず身を乗り出して尋ねる。


「・・・あの、"時"を再び動かすには・・やっぱりローズ・ソウルが必要なんですか?」


『うむ。クロノス様は恐らく盗まれたローズ・ソウル自体に"時の呪縛"をかけてしまわれたんだ。"時の呪縛"を解くにはすべてのローズ・ソウルを集めて神を復活させ、そこでクロノス様が呪縛を解かねばならぬ。』


やっぱり・・・


リオナは少し肩を落とす。


「けどよぉ、"時の呪縛"って解かなくてもいいものなのか?」


『そんなことはない。今ワシらが生きているのは架空の時じゃ。架空の時は歪みをつくり、その歪みが世界を無に還してしまう。例えばじゃ。今その歪みでローズ・ソウルの封印が解けてきている。その封印が解けてしまえば世界は破滅の一途をたどるじゃろう。』


確かにそうだ。


ムジカの体内に埋めたローズ・ソウルは赤からオレンジに変わっていたし
ルナの能力もなくなり、代わりに目が見えた。


これがすべてクロードの"時の呪縛"のせいだったとは。


「・・・実は俺たち、そのローズ・ソウルを封印しなおすために・・ローズ・ソウルを集めているんです。」


『ほう。なるほど。じゃがそれは難しいじゃろうな。』


「・・・?」


『封印しなおすには賢者である更夜の力が必要じゃろう。』


「・・はい。」


『更夜は恐らく手をかさんじゃろうな。』


「・・・なんでですか?」


『奴は気まぐれだからじゃ。』


やはり謎が多い男・・・


ルナを連れていったのも気紛れなのだろうか。


「じゃあ俺たちはどうすりゃいいんだよ。ただ世界が滅びるのを待つのか?その前にフェイターの奴らに神を復活させられちまうがな。」


このままでは今までやってきたことすべてが無駄になってしまう。


やはり神が復活するしか方法はないのか。


『おぬしら。』


すると突然
館長の表情が今まで以上に真剣になり
緊張が走る。


『おぬしらはこれからどうするのじゃ?世界をどうしたいんじゃ?』


これから・・・世界をどうしたいか・・・


そんなこと決まってる。


「・・もちろん、神がいない平和な世界を・・俺たちは創ります。」


『その命がなくなってもか?』


「・・・かまわないです。これくらい・・・いつでも差し出します。」


リオナは真っすぐに館長を見る。


そんなリオナに
館長は満面の笑みを見せた。


『よろしい。ではおぬしらにこれからすべきことを教えよう。迷惑かね?』


「ありがたいねクソジジイ。これで俺たちは救われるってもんでね。」


『だったらクソジジイと呼ぶのをやめんかいッ!!!ワシは貴様には教えんからな!!そこの銀髪美少年にだけ教えてやるんじゃからな!』


「てめえリオナを銀髪美少年だと!?案外見る目あんじゃねぇか。」


早く話を進めてくれと
リオナはせきを一つ入れる。


『えー、ところでおぬしらは今どれぐらいローズ・ソウルを集めているのじゃ?』


「・・・今俺たちが1個、フェイターが2個で残りの2個はまだ・・・」


『ふむ。なるほどな。なら今まで通りローズ・ソウルを集めるのじゃ。』


「まさか本気で神を復活させる気か?」


『それ以外は方法がない。神を復活させ"時の呪縛"を解き、神を倒すのじゃ。』


簡単に言い放つ館長に
リオナ達はため息をつく。


「・・神を倒せって・・俺たちそんなに強くないし。」


『ならあきらめるんじゃな。』


「・・・な!」


リオナは少しムカッとするが
すぐにマーシャに止められた。


「まぁまぁ。でもジジィ。仮に俺たちがうまく時の呪縛とやらを解いたとしよう。その後はどうなるんだ?」


「その後は誰もわからないッチョ。」


珍しく真面目なクラッピー。


クラッピーは指で床にお絵かきしながらつぶやく。


「大体"時"が止まること自体が初めてだッチョ。やらなきゃわからないッチョね。」


『ほう。少しは成長したようじゃのう。』


「まぁ〜ねぇ〜」


・・何が起きるかわからない、か。


「・・・でも、それしか方法がないんだよな。」


神を復活させることしか・・・今の世界は救えない。


それなら・・・


「・・・手段を選ぶまでもないな。」


マーシャもケラケラ笑いながらリオナの肩に手を回した。


「しゃあねぇよな。リオナ君も乗り気だし?俺も本気出しちゃうよ?」


《オイラは最強悪魔だぞぉ!?なめんなよぉ!》


そんな3人を館長は笑いながら見つめていた。


『頼もしいのぅ。おぬしらを見ておるとなんとかなる気がするのう。じゃが・・・』


館長は一瞬にして不安げな表情を浮かべる。


そしてそれはクロードへと向けられていた。


『クロノスロード様・・』


「は、い・・?」


『"時の呪縛"を解くにはあなたの力が必要です。もちろんクラッピーもじゃ・・。しかし神を復活させることは危険で満ちているし何が起きても不思議じゃない。それでもあなたはこの者達に付いて行く覚悟がおありでしょうか?』


慎重な物言いに緊張がはしる。


だがクロードは迷うことなくすぐに頷いた。


「はい。僕は皆についていきます。」


「・・・クロード」


「これは僕の責任でもあります。それに・・・」


クロードは満面の笑みでリオナ達を見る。


「僕、お兄ちゃん達と一緒にいたいんです。」


その言葉がどれだけうれしいか。


リオナとマーシャは目頭が熱くなるのを感じながら顔を伏せた。


『それならワシが止めるまでもないのぅ。ホッホッ!まぁ楽しくなってきたもんじゃ!』


「楽しくなってきたッチョねぇ〜!ははは〜!」


和やかな空気がエレベーター内を包み込む。


が、


ここで重要事項を思い出した。


「あ!!そうだクソジジイ!!」


『今度はなんじゃ。』


・・・"クソジジイ"に関してはもう一切ツッコミがない。


「俺たちサムライ・カウンティーに行きたいんだよ!」


『サムライ・カウンティーじゃと?またなんでそんなところに。』


「賢者さまに盗まれたものがあってよぉ。」


『更夜にか?確かにやつはサムライ・カウンティー出身じゃが・・・しかしここからサムライ・カウンティーに行くには海を渡るしか方法がないのぅ。』


「最短で?」


『海を渡るだけでひと月はかかるじゃろうな。』


ひと月・・・!!


気が遠くなる。


『まぁそう先を焦るでない。急がば回れという言葉があるじゃろうに。ホッホッ!』


回るも何も・・回るしかないじゃん。


『とにかく、道のりは険しいというわけじゃ。』


するとタイミングを見極めたように
エレベーター内の電気がついた。


そして再びエレベーターが動き出す。


「やっとかよぉ。」


長かったような短かったような。


エレベーターの扉の向こうからは館長を呼ぶ声が聞こえてくる。


「ボクちんお腹が減ったッチョ〜!!」


『仕方ないのう。今夜はここに泊まっていきなさい。』


《やったぁ!》


B.B.は嬉しそうに耳をピンと立てる。


暴れなければいいが。


《ごーはーん!!ごーはーん!!》
「ごーはーんッチョ!ごーはーんッチョ!」


こんなところで意気投合するな。


《ごーはーん!!ごーはー・・・》


だがその時
B.B.のやかましい声が一瞬にしてなくなった。


リオナはホッとしながらも
少し違和感を覚える。


腕をのばし
頭の上からB.B.を下ろす。


「・・B.B.?」


《・・・》


様子がおかしい。


目が異常なくらい真っ赤に染まっている。


「・・B.B.!?おいB.B.!!」


リオナが何度も揺さ振っているのを見て
ようやくマーシャも異変に気が付いた。


「どうしたんだ?」


「・・・わからない」


「コラ起きろバカウサギ!」


マーシャは思い切りB.B.を殴る。


するとB.B.はバッと目を覚まし
当たりをキョロキョロ見回しはじめた。


だが呼吸も若干苦し気。


瞳にはうっすら涙がたまっている。


「・・B.B.?お前大丈夫か?」


《え・・あ、うん。たぶん。》


だが未だに落ち着かない。


なにかあったのだろう。


リオナは落ち着かせるように背中を撫でてやる。


「・・どこ痛い?」


《ん。頭。あと・・・》


少し落ち着きを取り戻したB.B.はゆっくり口を開ける。


《ムジカの声がした。》


「・・・ムジカ?」


なぜムジカの声が・・・?


ムジカは今
フラワー・カウンティーにいるはず。


「それムジカからの通信じゃねぇか!?」


マーシャは驚いたようにB.B.をつかんだ。


「悪魔同士の電波信号だ。」


「・・・でもなんでムジカが・・」


マーシャは顔を歪ませる。


「何かあったのかもしれない。」


「・・・!!」


嫌な予感が頭をよぎる。


まさかフェイターにムジカのローズ・ソウルが気付かれたんじゃ・・・


そしたらムジカが・・・


「・・・ム・・ジカ・・・・!!」



リオナはエレベーターの扉が開くと同時に飛び出した。


「ちょっ!!おいリオナ!!」


その後をマーシャが追う。


が、
途中で足が止まる。


なぜなら
リオナが向かってる場所が窓。


そしてここは最上階。


まさか飛び降りたりはしないだろう。


しない・・はず。


「リオナくん!!ちょっとまって!!!ここ何階だか覚えてる!?」


時すでに遅し。


リオナはB.B.を抱えたまま窓から飛び出していた。


《ギャァァァァァ!!リオナのバカァァァァァ!!!》


B.B.の悲鳴が遠退く。


リオナはスタッと中庭に着地すると
一目散に駆け出した。


その姿をマーシャは窓から必死に目で追った。


「リオナのヤロー焦りやがって!!」


舌打ちをしながら窓を閉める。


「ジジィ。悪いが俺たちもう行くわ。リオナ追いかけなきゃ。」


その言葉にクラッピーは眉をハの字にしてブーイングした。


「ぇえ!?ボクちんお腹がすいたッチョォ〜!!」


「文句があるならリオナにいいな。」


そう言ってマーシャはクラッピーとクロードをかつぐ。


『もう少しおぬしらとは話がしたかったが。残念じゃのう。じゃが気を付けて行くんじゃぞ?』


「おう。世話んなった。」


『その前に1つ。』


「?」


館長はマーシャの腕をつかむ。


『ローズ・ソウルは5つだが、神を復活させるにはもう1つ、足りない。』


「は?」


『まぁ後はおぬしの無い脳みそを使って考えるんじゃな。ホッホッ!』


そう言って立ち去っていく館長を見ながら
マーシャはボケェとつったっていた。


「5つだけじゃない、だと?」


「ねぇ〜マーシャ。リオナ追わなくていいッチョか?」


「はっ!!しまった!!」


こうしてはいられない。


マーシャは走ってエレベーターに乗り込む。


「マー兄は窓からおりないの?」


「俺はもう年寄りなのッ」


「じぃちゃんだッチョ♪じぃちゃんだッチョ♪」


「歌うなバカ!」


「痛いッチョ!!叩くことないッチョ!!」


こうしてマーシャたちはギャアギャア騒ぎながら迷宮図書館をあとにした。





その頃

リオナとB.B.はすでに先まで行っていて。


リオナは無我夢中に走っていた。


「・・・フラワー・カウンティーはこっちか?」


《そもそも海を越えないと・・・リオナ聞いてる?》




・・・なにもなければそれでいい。



でも・・・



もしなにかあったら・・・



ムジカになにかあったら・・・



俺は・・・



「・・・・バカやろう」







きっと俺は・・・




・・・もっと早くに


コールに言われるもっと前に・・・


ムジカと別れたあの時に・・・



・・・彼女の手を放さなければよかったと



後悔するのだろう。




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