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Novel
★【男主夢】12星座と濃い物語11





〜夜空の廊下〜



顔の熱を冷ましたくて、手を団扇のようにしてひたすら扇ぐ。あー、あーあー。星月先生の、やたら恥ずかしい言葉を聞いてから、どうにも顔が熱かった。そもそも男に赤面すんなよ、と自分にツッコミを入れるが…色気溢れる星月先生には性別云々は関係無いような気がする。
……それにしても、


「…アイツ、いないのか…?」


神楽坂の姿が見えない。今までも何度か、神楽坂が廊下にいないのではないかと思う事があったがなんやかんや居た。しかし…今回は気配すらない。


「神楽坂ー!!」


名前を呼んでみても、声は夜空に吸い込まれていく。扉の近くにいるかもしれないと思い歩を進めるが、結局…扉が見えてきても神楽坂の姿を確認する事は出来なかった。「11」の標札を見て、やれやれと首を振る。もしかしてさっきの廊下での事気にしてんのか?別に、神楽坂が蛇だろうがなんだろうが構わないんだけどな…。


「つか、もし回復が必要だったらどうすんだよ…。バ〜カ」


俺は小さく悪態をつくと、蠍座の記号が刻まれた扉を開けた。
振り返ってみても、突然神楽坂が背後に立っていた、とかはなく…。その事が、少しだけ寂し……いや寂しくはない!!
首を振って辛気臭い気持ちを振り払い、俺は"蠍座の部屋"に飛び込んだ。


















〜11.蠍座の部屋〜





「うわ、暗っ!」


部屋の中は真っ暗で、さっきの"天秤座の部屋"に引き続き明かりが点いていない事に俺は唇を尖らせた。まったく、明かりくらい点けておいたらどうだ!?これじゃ扉を探せもしな……いぃ?


「……ちょ、待っ…」


なんだアレ…!?
暗い部屋をぐるりと見回すと、少し離れた所で緑色に光る物体が何個も蠢いているのを見付け、俺は目を見開いた。若干水色が混じっているような緑色のそれらに、恐る恐る近付いてみる。あと数mという所まで近付くと…それが一体なんなのか分かり、喉の奥が小さく鳴った。


「さっ、サソリ…!?」


ざっと五匹。"蠍座の部屋"だ、サソリがいたってなんら不思議ではないのかもしれないが…それでも普段の日常と比べたら明らかにおかしいのだから、驚くのも無理ないと思う。緑色に光るサソリが目の前に何匹もいるのは…些か不気味だ…。多分ブラックライトでも点いているんだろう。ブラックライトをあてるとサソリが光るというのは以前何かで知った。
じりじりと…サソリから遠ざかっていると、後ろから誰かに両肩を掴まれ、俺はいよいよ悲鳴を上げるしかなかった。


「名無し」


「ぎゃー!?」


「む…、すまん、驚かせたか」


ん?"む"?…まさかコイツ……。


「お前、…もしかして宮地?」


ビックリし過ぎて硬直したまま、俺は背後にいるであろう人物に声を掛ける。次第に部屋が仄かに明るくなってきて(相変わらず薄暗いが、取り敢えず見えるようになった)、俺がちら、と後ろを見るとそこには案の定…宮地が立っていた。


「待ちくたびれたぞ、名無し…。」


「お、おう…」


何で手…離してくれないんだよお前。
俺がその事を突っ込もうと思った矢先、突然喉元に何かが刺さるような痛みに襲われ、驚いた俺は反射的に首を捻った。


「いっ…!?」


「む……あまり動くな」


「宮地!?お前何して…っ、離せよッ!!!…ぐっ、ぁ、ああ!!」


今度は二カ所刺され、俺の身体はギクッと勝手に跳ねる。宮地が後ろから抱きしめるように俺の身体の動きを止めている間に、右の頬にも刺され…顔と首に何かがへばりついているような感覚に、まさか、と息を飲む。目だけ動かしソレを見ると、予想通りサソリがいて…それらが俺の顔や首を尻尾の毒針で深々と突き刺していた。俺はいよいよ青ざめる。何コイツら…目茶苦茶でかい!!


「ひ……っ!う、あ゙ッ…」


しばらくすると毒針は抜かれ、宮地もようやく俺を解放してくれた。力無くへたり込む俺の顔や首には最悪な事にまだ三匹のサソリが張り付いていたが、宮地が手を差し出すとサソリ達はその手から腕や肩へと移動していった。錫也の時と似た様な感じか…。
緑色に光る2、30cmもあるサソリが宮地の腕を登っていくのは、中々恐ろしい光景だった。


「コイツらはエンペラースコーピオンといってな、ペット用の大人しいサソリで毒性も低い」


へー、こんなサソリをペットにするなんて……って…


「毒っ!?はっ、ちょっ………」


俺思い切り刺されたけど!?


「…あぁ、安心しろ。サソリの毒は媚薬に変えてある。」


「ご都合設定きやがった…、っじゃなくて!!」


安心もへったくれもない!媚薬なんてもう勘弁だ、と心の中で叫んだ…が、刺されると回りが早いのか、首の辺りにぞくりと走った痺れに息を詰めた。


「、う……っ」


"双子座の部屋"で薬を飲まされたのとは違う、局所的な疼きに苛まれる。両手で首を押さえたが特に傷痕はなく、相変わらず不可思議な世界だと頭の片隅で考えた。首と顔が熱くて、勝手に呼吸が荒くなる。


「は、……ぁ…、んん…ッ」


「…まさかお前が、こんな顔をするなんてな」


宮地がしゃがみ、俺の顎を取って上を向かせる。指先が軽く触れるだけでも身体が異常にぞくぞくして、俺は口を閉じる事も出来ず声を漏らした。


「あ、んぅ…っ、…誰、の……せいだと…っ」


「ふ…、誰だろうな…」


「ふざけ…っ、ふっぅ、う!?」


突然宮地が俺の口の中に指を突っ込み舌を摘んだので、俺は思わず舌を引っ込めた。しかし反対の左手で喉を擽られ…俺は力が抜けてされるがままになってしまう。


「あ、う……ぅっ、うう…っ!」


唾液に濡れた舌を強く摘まれ、指の腹が擦れる度に上手く発声出来ず呻きが上がる。床に手をついて身体を支えていると、俺は宮地の腕からこちらに這い寄ってくるサソリに気が付きギョッとした。大きなハサミと尻尾を擡げた光るサソリを目の前にするのは下手なホラー映画よりも迫力があり、俺は金縛りに遭ったかのように動けなくなてしまう。すると、なんてこった……宮地の指まで移動したサソリの毒針が俺の舌に…!


「ゃめ、あ、あっ!……あ゙ぅ、…!」


抜けた力を引き寄せ抵抗をしたが間に合わず、俺は舌を刺される事を甘受するしかなかった。時間にして数秒だったが、物凄く長く感じる。サソリがまた宮地の肩まで戻る頃には、俺は間隔の短い呼吸しかできなくなっていた。


「はっ、はっ…ぁ……!…あ、つぃ……あ、ぁ……っ」


呼吸の時の空気の流れすら、直接媚薬を注がれた舌には苦しい程に快感だった。唾液を飲み込もうものなら、顔や喉にも刺されたせいでそれすらも辛い。そんな俺を見つめ、宮地は喉を鳴らした。


「名無し…」


「へ…っ?宮地…、あ……んんんっ!」


宮地は俺の頬を手の平で包むと、呼吸にすら感じてしまう唇にキスをしてきた。口を閉じられるはずもなく、あっさりと舌の侵入を許してしまう。舌や咥内を貪るように舐められ、俺はされるがままに身体を震わせた。キスだけなのに、何も考えられないくらいに頭が痺れて靄がかかる。舌を吸われると、鼻にかかった声が出た。


「ん、くぅ……は…あ、……や、め…っ……ぁんんっ」


「ん………、名無し…」


「はぅっ、ん…ぅぅ…」


濡れた下唇をやんわりと噛まれ、そしてようやく宮地が離れる。俺は握りこぶしを作り、身体の疼きに堪えながら宮地を見上げた。


「は、ぁ……お前の"お願い"って…、んん…っ、何…だよ…っ」


最悪な事に、キスされた事でより敏感になってしまったらしい。呼吸も、発声も…勝手に快感を押し付けてくる。涙目になってしまったので強くまばたきをして押し流し、宮地の目を見つめた。


「"お願い"はだな……、お前に俺の精液を飲んでもらう事だ」


「……ッ!?」


ちょ…っと待て…!男のなんか飲みたくないとかそういう基本的な問題じゃなく、俺は動揺する。飲むって事はつまり…口で宮地のをくわえなきゃならないという事だ。媚薬のせいで極限まで感度が上がった状態で…とか、そんな馬鹿な…!だが悲しきかな、俺に拒否権なんか無い事は百も承知だ。俺が弱々しく頷くと、宮地は俺に四つん這いになるように言ってきた。膝を立てて座る宮地の足の間に身体を入れ、腕を曲げて肘で支える。


「はぁ…はぁ……っ、…」


ズボンの上からでも、宮地が既に勃ってるのが分かった。その事に何故か身体が熱くなり、呼吸が乱れる。


「物干しそうな顔だな…、我慢できないか?」


「ちっ、違う…!」


「顔に書いてある。ふ、…ほら、舐めていいぞ?」


宮地が前を寛げ、既に勃起しているペニスを手で掴み俺の右頬に擦り付ける。サソリに刺された側をぬるついたペニスで撫でられ、俺はそれだけで泣きそうな声を上げてしまった。


「ふっ、んんんー…!や…、はぅ……そっ、そこ…駄目……ッ」


「あぁすまない、刺された所だったな」


全く誠意の感じられない謝罪に、気持ちだけでも宮地を睨む。だがそんな感情も、ペニスを唇から中に捩込まれた事で押し流されてしまった。


「んぐっ!んん…んっ」


唇、舌、頬の粘膜…ペニスが擦れる度に身体がひくつき、フェラをする側が快感に負けそうになるという不可解な状況に陥る。
口の中の亀頭をゆっくりと舐め、先走りと唾液をぢゅるぢゅる吸い上げる。舌が擦れるのが気持ち良くて、つい夢中になってより深くペニスをくわえこんだ。顔を斜めにすると頬の内側にペニスが当たり、俺は頭を上下させてその感覚を何度も味わった。


「ふぅ、…んっ、んっ………はぁ…」


「随分と美味そうにしゃぶるな、名無し…。そんなに好きか…?」


「あ、んん…っ、」


くわえてるせいで言葉が出なくて、俺は眉尻を下げ根本を手で扱きながら宮地を見上げた。しかしくわえたまま見上げたのは間違いだったようで、宮地は一瞬顔を険しくすると、突然俺の頭を押さえ付け強制的に根本まで喉に押し込んできた。


「んん゙!?ん、ぐぅ…っ!」


ところが俺を襲ったのは恐れていた吐き気ではなく…普通なら感じるはずのない快感だった。喉を刺したのはこの為だったのか…!


「んぅっ、ん……、ふぅ…!」


「…くっ、」


何度も何度も喉まで突き込まれ、その度にまるで身体の中まで犯されているような錯覚に囚われる。ぐちゅぐちゅという音すらも、敏感になった口を感じさせるには十分だった。


「はぅっ、あ……く、んんん!」


もうわけがわからなくて、俺は自分からも頭を動かしたり頭を上げる時に唇でより強く吸った。すると頭を押さえる宮地の手がぴくりと反応し、それがなんだか可愛く思える。俺の髪をくしゃりと握り、宮地は幾分荒くなった吐息を震わせた。


「名無し…っ、……く…」


あ…もうイきそうなんだな、というのがぼんやりした頭でも何と無くわかり、俺は先っぽを強く吸ってやった。宮地の手に力が入る。見計らって再び喉奥までペニスをくわえ込むと、宮地は声を殺すように歯を食いしばり、普段は聞けないような細い声を漏らした。


「あっ、くぅ………!」


「んんんっ!う、んぅ…っ」


俺は一旦顔を上げ、口の中に吐き出された精液を言われた通りに飲み込む。不思議と苦味はなく、甘くて…むしろ美味しかった。


「……甘い…」


「…苦いのは、お前も嫌だろう?」


「宮地お前…優し、っうぐ!?」


仕様変更とか優し過ぎる、と感動していたその時、突然込み上げてきた吐き気に俺は口を手で押さえた。


「うっ…、ん、んんぅ…ぁ…っ」


喉の辺りに何かある、と感じた途端、媚薬のせいで吐き気と快感がごちゃまぜになる。


「ひっ、ぅ……ううん…っ!」


びくびくと身体が跳ね、やっぱり精液なんか飲むんじゃなかったかとゼーゼーいいながら堪えていると、一際強い吐き気に襲われ俺は背中を曲げた。


「うう!…げほっげほっ!!、…ぁ、あ…ッ」


すると、咳込んだ瞬間喉に引っ掛かっていた物が吐き出され、その感覚にすら震えた。


「はぁ…!はぁ……、…」


「出たか」


「え…っ?…あ、鍵…!」


なんと、俺が吐き出したのは扉の鍵だった!これが喉に引っ掛かっていたのか…道理で苦しいわけだよ。俺が呼吸を整えていると、段々と呼吸自体も楽になっていく事に気が付いた。もしかして…媚薬の効果が切れた…?


「宮地…、」


「あぁ、もう効果が切れる頃か。
エンペラースコーピオンは毒性が弱いと言ったろう?媚薬にすると、そこまで持続しないからな。」


「そうだったのか…」


なんか、普通に呼吸と会話ができるって…何気ないけど目茶苦茶ありがたい事だな…。と、その時、座っている俺の視界の端を小さな影が横切った気がした。そちらを見るが、何もいない…。この部屋にはブラックライトがついてるからサソリだったら光るはずだし、まさかゴキブ………いやいやいるわけないよな。そしてふと宮地の肩のサソリを見、俺は息を飲んだ。


「っ!?み、宮地…!ブラックライトは!?」


どういう事だ…なんでサソリが光ってない!?


「もう消したが?」


「な…っ」


「暗い部屋では黒いサソリは目立たないからな、お前が誤って踏み潰さないように点けておいたのだが…もう消して大丈夫だと思ってな」


どういう仕組みでライトの調節をしたのかとかはもう突っ込まないぞ。というより、さっきの物体はまさか…!?俺は慌てて立ち上がると、後ろを振り返った。薄暗い部屋に目をやり、さっきの影を探す。


「………き、消えた…?」


気のせいだったのだろうか…、と俺が溜め息をついた、……その刹那。


「うあッ!?」


背中…いや、腰を何かに刺された!この痛み…まさか!?首をひねり後ろを見ると、薄茶色をした一匹の小さなサソリが、シャツの上からだというのをまるで無視して尻尾の毒針を俺に突き刺していた。俺が手で払おうとするより先に針を抜き、ぴょんと飛び降り宮地の腕に登る。


「くっそ、なんだよ…!」


苦々しい表情でサソリをにらむ。しかし大きさは4、5cm程度しかなく、なら毒も大した事なさそうだな…と安心した。…が、それを嘲笑うように、最初エンペラースコーピオンに刺された時なんかよりもずっと強い眩暈のような感覚に襲われ、俺はよろけてしまった。腰が疼いてしょうがない…!


「う、…く……!な、んで…っ」


「コイツはストライプバークスコーピオンといって、身体は小さいが、本来は猛毒を持つサソリだ。」


「本来は、って……じゃあ…!?」


「あぁ、これも媚薬に変えてある」


そんな…嘘、だろ…!いや、でも鍵は手に入れたんだ。これ以上宮地の言う事を聞く義務は無い!
俺は鍵を拾い上げると、少し離れた所に扉があるのを見付けた。宮地を睨み、もう行く事を告げる。


「…行く、からな」


「あぁ、俺はお前が堪えてる表情を見れれば満足だ」


「変態が…!!」


その為に毒針を刺したとか、精液を甘くしたくらいじゃ全然罪は償えないぞ宮地め…!
宮地に背を向け、歩く振動すらも腰に響くがなんとか堪える。俺は唇を真一文字に結び、やっとの事で扉に辿り着くと鍵穴に鍵を差し込んだ。
頼む、神楽坂……次は居てくれ…!
俺は目を閉じ、祈るようにして扉を開けた。















continue












2012.5.29

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