[携帯モード] [URL送信]


「あ・・、みんな、ここで待っててもらえる?」

診察室の前でみんなの顔を順に見ながら言う


「中まで一緒に行くで?」
侑士が心配そうに聞いてくれる


でも、

「ありがとう。でも、、1人で行ってくるね」
私は、みんなに笑顔を向けて診察室に入った











「こんにちは」
「はい。こんにちは」
お医者さんと挨拶を済ませて、ゆっくりと前までいく


そして、優しく聞いてくれる質問に答えながら足を見てもらった



「あの」


私の声に医師(せんせい)はふと顔を上げて、目線をあわせてくれる


その姿を確認して目を一度、静かに閉じて、心の中で決心をする


大丈夫・・


「私、、」




「車いすや松葉杖なしで生活したいです・・」

チラっと医師を見る

でも、私が言い終えると医師は眉をしかめた


「うーん・・この足じゃぁな・・」
医師は私から目を離し、足の方に視線を移す

「・・お願いします」

車いすじゃ、マネの仕事が遅くてみんなに迷惑がかかる
もう、これ以上迷惑なんてかけたくない

だから・・



私は願うように医師を見る

けど、医師の顔は変わらず、眉をしかめたままだった

「はっきり言わせてもらうが」
医師はさっきより声を重くして私の目をまっすぐに見る



「無理だ」



静かに放たれたその言葉に、少し体がこわばる


でも、ここで引いちゃ・・ダメだ

「・・・では、この薬を・・出して頂けませんか?」
そう言って私が見せたのは使いすぎて封印するようにしまっていた 痛み止め

「! 君の主治医からカルテをもらったが、もうこの薬は君には効かないのは分かっているかい?」
その薬をみて、医師は驚きの顔を見せながら私に目を向ける

「・・はい」

「君の体はもう壊れ始めてるんだ。足も・・内臓(なか)も・・」


そんな事・・自分が一番分かってる・・


「・・だから、医者として、この薬を出すわけにはいかないし、車いすを外して上げるわけにもいかない」

「・・お願いします」

「今、君にこれを許可したら君の未来は歩けなくなって、もしかしたらベットの上の生活かもしれないんだよ」

そんなの・・最初から覚悟してる


「私は、、」
一度言いかけて、もう一度言い直す

「・・・私は・・未来がどうなるかより、今を大切にしたいです。 今を我慢して、あるかどうかも分からない未来を待つのは嫌です。
それに、、今、頑張って、前に進むからこそ、・・未来があると・・私は、思います」


体がこうなりだした頃から、ずっと、、思ってた
『今』我慢したら、未来は土台がないままできて・・
もろくて・・

すぐに


崩れ落ちる



だから、今が大切なんだ

今がないと未来の私はいない

例え、いたとしても

もろく、崩れ落ちる・・─





だいたい、私の未来は・・


「・・だが」
医師は下唇をかみしめる

「お願い・・します」

「私は医者だ。君の未来を最優先に考えなくては、いけないんだよ」

「・・お願いします」

「・・・」

「医師(せんせい)」
私は拳を握りしめる

お願い

どうか・・

そう気持ちを込めて....



その姿を見てからか、医師は諦めたようにため息を吐いた

そして、すぐにさっきのようなまっすぐした目で私を見る


「・・週に5日・・いや、できるだけ毎日ここに来なさい。」


「それって・・!はい!ありがとうございます!」
パァァと効果音を付けて顔を明るくした私に医師はフッと笑みを向けた

「でも、痛み止めは出さない。これだけは・・譲らないよ?それと、できるだけ運動をしてはダメだ。今、君の足は『歩く』だけの物だと考えてくれ」
そう言う医師の顔は笑っていたけど、言葉を重たそうにしていた

・・これは、仕方・・ないか
OKが出されただけでも、感謝しなきゃだよね

「・・はい」

「うん。だから、痛みには堪えてもらうしかない。一応テーピング等は教えるけど・・」

「はい!お願いします!」














「princess、おっそいなぁ〜」

「そやな〜」

ガラガラ─

「みんな、ごめんね。おまたせ」
私は顔の前で手を合わせて、診察室を出た

「あ!princess、車いす取れたんですね!」
チョタがさっきの私のようにパァァと顔を明るくした

「うん!」

「やりましたね!」
そう言って私の両手をつかんでブンブンと縦に振って喜んでくれる

その姿は、なんだか犬を思い出させた

「ふふ、ありがとう」
チョタに、そして周りで喜んでくれてるみんなに私は笑顔を向けた
















「わざわざ送ってくれてありがとう。みんなも、今日はありがとうね」

「いえ」
「いや、気にすんなって」
「そうですよ」
「俺ら、princessのためなら何でもするからな!」
「せやな」
「ウス」

車の中から私に笑顔を向けてくれるみんなに私も「ありがとう」と笑顔を向けた


「princess、無理はするなよ?」
ふと、一番近くにいる景吾に心配そうな目でみられる

「大丈夫よ」
そう言う私に景吾はふんわりと大切な物を触るかのように優しく頭を撫でてくれた

あ、景吾にこうゆうふうにしっかり撫でられたの・・初めてかも・・ ・
いつもは、私が『princessだから』とか言ってこうゆう事してくれないのに・・

「ふふ」

「なんだよ」

「ううん。なんでもない。」

「・・そうかよ。じゃ、俺たち、行くからな。何かあったら即、連絡しろよ?」

「うん♪」

そう言って車のエンジンがかかる音がする


それから少しして車は走り出して、

中にいるみんなに見えなくなるまで手を振った











そして家に向き直り、


私は足の痛みに耐えながら家の建物へと向かって歩き出した









next⇒

[戻る]

[←]

2/2ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!