会えない距離と、近いキスの距離。
★構ってほしい臨也
王道ネタかもしれない
臨也視点、ちょっと幼稚な感じですが許せる方のみどうぞ
「ふあ、」
眠い。駄目だなあ。
最近は仕事に専念しすぎた。
シズちゃんが構ってくれないから、意地張って池袋に行かなくなって一週間。
…、ふん。
あっちから連絡が来るまで相手なんかしないんだから。
「波江、その仕事もやるからちょうだい」
「…、貴方寝てないんだから、寝たらどうなの」
「いいの、寝たくない、勿体無い」
「…、私の残業が無いのは嬉しいけれど」
「ほら、いいから」
痛む目を知らん振りして、波江から書類を貰う。
ああ、駄目だ。
末期なのは俺じゃないか。無理だ。
今日の日付が変わるまでに連絡が来ないなら、こっちから喧嘩をしに行こう。
…………さっき言ったことなんて、忘れたね。
★
久しぶりの池袋。
あのシズちゃんの場所なのに、何処も壊れてないなんて。珍しい。
まあ、あの平和島静雄を怒らせる奴なんて、この池袋に俺しかいないわけだけども。
たまーに居るんだよね、馬鹿な奴。
後はシズちゃんが俺を見つけるか、俺がシズちゃんを見つけるか。
さあ、久しぶりの殺し合いをしようよ。
★
…。
………。
おかしい。
池袋に入って四時間。
いつもなら一時間もせずにやってくるのに。
可笑しい。
…、もしかして、まだ仕事?
いや、シズちゃんは仕事とか関係無しに来るから違う。
じゃあ、何で?
死んではないだろう。
それなら噂はすぐ来るはずだ。
病気?
それでも新羅から連絡は来る(余計なお世話だけど)
…、もしかして、避けられてる…?
え、嘘。
あのシズちゃんが?
俺を?
高校からのこの関係を?
今更、否定しちゃうの?
…有り得ない。
その確証がある。
家に行ってみるか。
このままだと俺が過労死しちゃうよ。
そんな死に方は許さないでしょ。
★
池袋にあるシズちゃんが住むボロいアパート。
シズちゃんの稼ぎならもう少しマシなところに住めると思うんだけどな。
幽くんも居るんだから、一緒に住めばいいのに。
…、あ、駄目だ。
そしたら邪魔しにいけなくなる。
あんまり家に居ないみたいだけど、家ではゆっくりしたいだろうしなあ。
カンカン、と小気味のいい音。
階段が未だ鉄の奴って、今時珍しいよね。
そう思いながら、向かうは階段を上がって一番奥の扉。
隣の奴はシズちゃんを見てからすぐさま引っ越した。
あからさま過ぎてシズちゃん切れてたなあ。
トントン、と扉をたたく。一応ね。
合鍵作ってるから入れるけど、何か今日はいい。
少し待ってみるけど、シンとしていて何の変化もない。
………え、いないの?
池袋に居ないなら君、何処に居るのさ。
もしかして、誰かと会ってる…?
ああ、いやだ。
嫌な想像ばかり。
そんなに、会いたくないの、かな。
…、居ないなら少し上がろう。
会わなければいいんでしょ、それなら八つ当たりで部屋を荒らしたって文句は無いでしょ。
俺が死んだらシズちゃんに取り憑いてやる。
ちゃら、とあまり使わない合鍵を取り出す。基本的に新宿に来るしね。
ガチンと開く鍵。
ああ、ほんとに居ないのか。
荒らして帰ろう。
そして、俺に会いにくればいいんだ。
最早最初に来た意味すら忘れながら、扉を開ける。
ギシと軋む部屋の懐かしさに、どれほど無意識に寂しいなんて思っていたのだろう。
「シズちゃんの、ばーか」
一人だから何かむなしい。
リビングに続くすりガラスの扉を開けると、大きくゲホ、と聞こえた。
「え…」
誰もいないん、じゃ…。
「………、あ? 臨也…?」
「え、何、シズちゃん風邪なの?」
「…………」
そんなに広くない部屋だから、扉を開けるとすぐベッドが見える。
そこに寝転がるシズちゃん。掠れて発した声は酷くガラガラだ。
え、これ風邪なの?
「シズちゃん、風邪?薬は?」
「………、」
「ほら、薬飲まないと。って、風邪薬なんて無い、よね」
「…………、机に」
あるの。
嘘、俺の知ってる限りじゃ見たことないんだけど。
俺のほかに誰かきて、た?
苛、と汚い感情が俺を包む。
ああ、駄目だ。最悪。
シズちゃんは俺のものじゃないのに。
痛んだのは気付かない振りをした。
「……、新羅が、置いてっ、た」
「!」
新羅…?
変だな、いつもなら俺に連絡くれるのに。
「…、いつから風邪なの」
「…」
げほ、と辛そうに咳をするので飲み物を確認しようと冷蔵庫へと向かう。
開けた中にはミネラルウォーターが数本入っていた。
…シズちゃん、ビールしか飲まないくせに。
やっぱり誰かきてるじゃん。
「新羅と誰が来たの」
ああ、やばい。
これは、嫉妬、だ。
ミネラルウォーターを取り出してシズちゃんに向き直る。
聞こえたのか、シズちゃんが俺を手招きをする。
大人しくしてる俺なんて貴重なんだからね。
シズちゃんが寝るベッドまで近付くと、取り合えずミネラルウォーターを渡そうとして止まる。
あ、これストローとかあった方がいいかな。
でも無いだろうしな。
…。
別に口移しでもいい、けど。
シズちゃん絶対嫌がる。これは確実に。
どうしよう。
「…、新羅と多分セルティが来た、と思う」
記憶が曖昧だからわかんねえ、と言うシズちゃん。
俺より先にきてること事態が嫌なんだけど、しょうがない。
「…、臨也」
「なに」
「怒ってん、のか」
怒ってる?
いや、それはないよ、シズちゃん。
自分にイラついてるだけ、だよ、多分。
「んーん、ほらどうする?水飲める?」
「…」
「ストローないし、…飲めないなら、飲ませても、いいんだけど」
なんて、ああ、どうしよう。
顔が真っ赤な自信があるんだけど。
「……んー」
…。
ちょっと気分が落ちた。
何その興味無さそうな返事の仕方。
ドキドキした俺のときめき返せ。
内心で文句を言いながら、俺はパキとボトルを開ける。
こんなん、ただの治療、に過ぎない。
ぐい、と煽り勢いのままシズちゃんに口付けた。
「!」
ああ、もう。
大好きだ、畜生。
自覚したら、もう抑えられない。
開いた口に流し込む。ぬる、と舌も入れ込む。
びく、としたシズちゃんにはお構いなしに頭を抱きこむ。
俺がのしかかるような体勢だから、少しきつい。
でも、動くよりも熱のせいか熱い咥内を感じたかった。
「は、」
「…」
ツ、と伝う糸にキスをしたんだと実感した。
嫌いだったはず、なんだけどなあ。
「早く風邪治してよ、そして俺に構って」
一週間。
それこそ、シズちゃんのせいで働きすぎた。
休んだって波江は文句すら言わないだろう。俺がんばったもん。
今なら、ぐっすり眠れそうな感じ。
人の体温を感じるのは、何時振りだろう。眠い。
睡魔に襲われるように、シズちゃんに伸し掛かったまま寝てしまった。
★
「ん…」
差し込む光がまぶしい。
カーテン開けたままだっけ。なんてぼんやりと考えながら目を開けると鈍く光る金髪。
抱き込まれるようにして目の間にドアップのシズちゃんの顔。
思わず、びくついてしまった。不可抗力だ。
いやいや、そんなことよりも。
俺、どうしたっけ。
ああ、そうだ、シズちゃんが風邪引いてて、看病したんだっけ?
薬は飲ませたから、ご飯が居るかな。
ミネラルウォーターしかなかったし、仕方ない、コンビニかスーパーまで行ってくるか。
シズちゃんを起こさないようにゆっくりと起きると、温もりが離れる。
名残惜しいけど、まあ、仕方ないか。
内心で行ってきます、と言ってからアパートを静かに出た。
夕方より前にシズちゃん家に行ったけど、しばらく寝てなかったせいか朝方に起きるとは。
うーん、まだ寝れそう。
ふあ、と欠伸をしてから目的地へと急いだ。
★
ただいま、と静かに扉を開けるとシズちゃんはまだ寝ていた。
薬が効いてるのかな、シズちゃん、外的には強いけど中身は弱いからなあ。
そんなことを思いながら、冷蔵庫に食べ物やプリンなど突っ込んで行く。
「……………、」
あ、どうしよ。熱さまシート買うの忘れてた。
うーん、珍しいミスしちゃったなあ。
今から買いに戻るか、ついでに自分の飲み物とか買わないとな。
かた、と立ち上がってシズちゃんを見ようと近付くと、腕が伸びてきた。
「あ、」
ぼふ、と顔から突っ込んでしまった。
起こしたかな、と顔を上げるとばっちり目が合う。
「どこ、にいく」
掠れた声が耳朶を震わせるが、まだ本調子ではないことが分かる。
「シズちゃんの熱さまシート買ってくるから、まだ寝てていいよ」
片手を伸ばして汗で張り付く前髪を梳いてやる。
「いい、居ろよ」
ぼんやりとした視線が俺を見やる。
うーん、揺らぐなあ。
構って貰えなかったから、凄く触りたくて仕方ない。
「………」
「いざや」
ああ、俺本当に睡眠不足で思考が可笑しいんだ。
身体を動かして、シズちゃんを上から覆う。
「悪化しても知らないからね」
「……また看病してくれんだろ」
「……ばか」
苦笑するとシズちゃんからキスをされた。
驚きで目を見開くが、意地の悪い笑い方にからかわれた、と思いムッとしてしまう。
まあ、いいや。早く治して、俺に構ってよね。
終わり
〜100909
いつ書いたんだろ、これ
そして素晴らしく恥ずかしい
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