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だって会えないなんて、寂しいじゃないか。

★うざやから乙女。




「ねえシズちゃん、俺ね最近気になることがあるんだけど…嗚呼、いやシズちゃんが一番だからね?うん、まあ君の次に気になるものが出来たわけ」

いきなり現れて本能の赴くまま、いや条件反射で自販機を持ち上げた俺は臨也の言葉で止まる。
…………なんだ、コイツ。薬でも決めてやがるのか。
柄にも無く心配をしてしまった。普段なら今頃殺し合いをしているところだ。

「俺が他の事をしているのを黙認してくれてる辺りシズちゃんは優しいよね。その優しさは俺だけが知っていればいいんだと思ってたんだけど、最近になって其処までしなくても俺達は互いに互いのものなんだから気にすることないんだと思って、さ」

…最初に言っていたことから脱線している気がする。気になることがあったんじゃねえのかよ。
あと俺に対して何か彼女的な発想はやめろ。付き合ってねえんだからよ。
切れていた脳内が徐々に収縮していくのが分かる。自販機を元の場所に下ろす。バチバチと切れたケーブルが火花を散らしているが気にしない。

「で、何が言いたいんだよ」
「あ、そうだよ、シズちゃんについて語り始めてる場合じゃないんだよ、いや、好きだからね?」
「………で、」
「気になるものが出来ちゃってさ、俺明日から池袋に来ないから!それを伝えに来ただけ!じゃあね!俺に会えなくても泣いちゃ駄目だよ?」

………。
コイツ本当に薬でやられたか?毎回ブクロに来るなって言ってんだろうが。
いつも「そんな全開でツンデレをしなくても俺には君の愛を十分理解してるんだから!」と言って逃げるよな。
矛盾って言葉と、言語を理解しろよ。
まあ、来ないならいいけどな。俺もブクロを壊さなくて済むから。
了承したことを伝えようと煙草の煙を横に吐いて、正面に居る臨也に向き直ると腹に衝撃が来た。
やべ、腹刺されたか?そんなことをぼんやりと思いながら下を見ると腕は後ろに回っている。
何してんだ、コイツ。と言うかここが裏路地でよかったと今更に思ってみる。

「んだよ、」

等々頭をやられたか。此れは新羅に見せるべきだよな。つーかいつものコイツじゃないのは気持ち悪い。
臨也の頭に触れると意外にサラサラとして触り心地がよかった。
思わず撫で回すと臨也が方を震わせる。あ。しまった、ついやってしまった。
パッと離すと、臨也が俺の背中に回している腕が強くなる。何だ、不機嫌になりやがって。
顔はいまだ見せないコイツに俺は煙草を壁に押し付けて消す。
「臨也」
「………なに」
「離せ」
「…やだ」
なんなんだ、コイツは。今日は特に可笑しい。と言うか気持ち悪い。
日常、いつもの行動一つが変わるだけでこんなにも人は不安定になる。

「シズちゃんてさー、俺が居なくても普通に過ごしそうだよね。それって俺を嫌ってるから来なくて清々してるってこと、だから、俺は居ない方がいい、んだよね」

俺の胸辺りに顔を押し付けてるから、くぐもった声しか聞こえない。
語尾が段々と小さくなるから聞き取れないし。なんだ、これ。マジで…、ああ。
例えるなら、子供のようだ。不器用ながらの精一杯の甘え。
………自分で言っといてなんだが、こいつにそんな感情があるとは思わなんだ。
しかし、この行動を見る限りでは、それが一番妥当ではないのだろうか。

「臨也」

なるだけ優しく声を描ける。自分でも気持ち悪いほどに。
なに、と短く聞こえた。拗ねている子供の反応だよな。

「手前が居なくなったら泣くだろうよ」
「…」
「俺には手前以外殺したい奴が居ないからな」

この意味が分かれば、手前も少しは大人しくするだろうさ。
喧嘩するほど、なんとかって、な。
俺は少し笑って、嫌いな臨也を抱きしめた。

(嗚呼、何もかもが紙一重だ!)


終わり
100517
拗ねる臨也に思わず自覚したシズ。
いやもうかわいいなあ。




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