[携帯モード] [URL送信]
これからも君だけを愛していく。

★二人で旅行。付き合ってないけど甘い。
臨也が乙女。




何もして無いわけじゃない。なにもしたくないだけ。
なんて思っていると、シズちゃんから頭を軽く小突かれる。
ジロ、と見るとそ知らぬ顔をされた。何その子供染みたアピール。
今時流行らないよ、俺はときめくけど。なんて。

しゃがんでいる俺の傍でタバコを吸いながら立っている。畜生かっこいいな。
何時ものバーテン服ではないから普通にかっこいい。グラサンはついてるけど。
だってさっきから女の子たちがこっち見てるからね。あ、シズちゃん好きそうな子発見。ちょっと空しい。

でもいい加減ここから動かないと、待ちぼうけしてる彼氏っぽいよね。
だから女の子たち動かないのかな。狙ってる?そんな浅ましい考えの人間が好きな俺はどうしようもない。
どうしようか。大体俺たちが二人で旅行ってのも受けるよね。笑える冗談だ。現実だけど。

「何処かいくか?」
「うーん、悩んでる」

ごめん、嘘です。
シズちゃんとなら何処でもいいんだけど、ちょっとこの優越感に浸らせて。
シズちゃんは俺しかみてないんだから、其処の女の子達はどこかにいきなさいよ。
なんて、ね。

「ふーん」

基本的に俺がベラベラと喋らなければシズちゃんが切れることはまず無い。
根は優しいもの。ちょっと短気なだけ。俺には特に。
そんな二人が旅行だなんて、ねー。凄いよ、天変地異だよ。

「さっきから、手前見られて無いか?」
「んー、気のせいじゃない?だってここ池袋じゃないんだし、野次馬って居ないはずだし」

なんて嘘を言ってみる。と言うか、見られてるの君ね、シズちゃん。
ああ、もうタバコを踏み潰す姿もかっこいいってどういうこと。

「あのー」

ああ、来ちゃった。これは誰もがわかるパターンだよねえ。
シズちゃんは鈍いからわかんないんだろうなあ。

「なあに」

俺が応えてあげるから、タバコでも吸ってなさいよ。
シズちゃんは俺に任せるのか、少し下がってまたタバコに火をつけた。
視界の端でソレを捕らえながら俺は女の子達に営業用の笑顔を向ける。

「あの、お暇ならお茶でもしませんかあ?」

ああ、媚びるように上目遣いに計算された男受けする喋り方。気持ち悪いね。
こんな人間でも人類ならば俺の愛のカテゴリに入るのだから面白い。

「ごめんね、俺たち暇じゃないから」
「でもー、さっきからここに居ますよねえ?」

しかもしつこいタイプか。面倒だな。

「うん、だから暇じゃないんだよ」

構ってる暇なんかないんだ。これは俺とシズちゃんさえ居たらいいんだから。

「行くぞ」
「え」

二本目のタバコを吸い終えたのか、シズちゃんが俺の腕を後ろから引くもんだからちょっと仰け反った。
歩き出した俺達に女の子が慌てる。

「え、ちょっと」
「うぜえ」
「なっ…!」

あらら。
女の子達かわいそうに。でも同情なんかしない。自業自得って知ってるかな?
俺たちは暇じゃないんだよ。我ながら性格が悪いと思う。

「いいの、シズちゃん。折角の女の子だよ」
「興味無え」

まあ普通の女の子じゃ壊しちゃうからね、扱えないよねえシズちゃんには。
ねえ、どうしてもって言うなら信者の子を紹介してあげるけど。
サキちゃんみたいな盲目的な子は外してあげる。

「臨也」
「何」
「何処か行くか?」

君となら何処でもいいって言ってしまおうか。
どんな表情を見せてくれる?驚くよねえ。見てみたいけれど。

「何処か、ね。いっそ一緒に逃げようかシズちゃん。池袋なんて戻らずにさあ」

なんてちょっとばかりふざけたことを言ってみる。シズちゃんは情に厚いから上司のことを裏切ることはしないのを知っている。

君の中は、俺で一杯にはならないんだよ。悔しいことに。

まあ、半分は俺が嫌いってなってるからまだいいけどね。
空を仰ぎ見る。
澄んでいる空の蒼は、何処までも綺麗だ。俺が見上げるにはまぶしいくらいには。
例えるなら、俺は夜であって、シズちゃんは太陽。照らす意味で。

「シズちゃん、何故太陽は夜から逃げてしまうのか知ってるかい?」

まあただ地球が回転してるから当たらないだけなんだけど。
それを如何にロマンチックかつメルヘンチックに言えるのかが試されるよね。

「…さあな」

案の定答えてくれなかった。
シズちゃんって意外なリアリストだもんね。
自分は非現実な存在に近いのに。

「…俺はね、月が太陽を嫌ってると思う。だってまぶしいし熱いでしょ?温度の高さに耐え切れなくて涙を零す。ソレが雨に為れば素敵かもね」
「それなら夜にしか雨が降らねえよ」
「あ、そっか」

シズちゃんが少し空を見ながら応えてくれた。しかも正論。ちょっと悔しいな。

「ま、俺には太陽さえ居たらいいよ」

さり気無いアプローチに気付いてくれるかな、でも恥ずかしいね。
そして痛いって気付いてるから。あー、もういや。

「…俺は夜だな」

ぽつり、と零された言葉に俺は俯いた。

(不意打ちは卑怯だ!)

赤くなってなんか、ないんだからな。此れは熱いからだ。




終わり
100514
中途半端。そして何故二人が旅行に出てるのかと女の子とかの描写はしょり。
ちなみに東京から離れて地方に居る設定。だからバーテン服ではない。




[*前へ][次へ#]

64/86ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!