多々ある平和な日常の中の出来事。
★風邪引きシズちゃん。別人臨也。
確かに、俺は人を好きだ。愛している。
だけどね。
そんな俺でも、人とあの男を一緒には出来ない。
だって、人じゃないでしょ?
「シズちゃん」
「あ?」
「今日は何時にまして不機嫌だね」
「手前が池袋に来なきゃ機嫌はよかった」
「あ、そうなの?残念、今日は普通に仕事なんだよ。だから、見逃してよ」
ナイフを構えながら薄く笑う。
これはシズちゃんが嫌いな笑い方らしい。
全く、失礼だよねえ。
これは、俺の仮面なのだから。
「………」
あれ?
どうして、シズちゃんは俺に向かって来ないんだ?
何時もなら自販機やガードレールや標識を持って、俺に投げるか振り回すくせに。
「………?」
どうして?
「シズちゃん、どうしたの?まさか喧嘩人形ともある君が俺に何もしないなんて、新羅風に言うなら、天変地異でも起きたかい?」
「………」
「………」
おかしい、可笑しい。
何時ものシズちゃんじゃない。
よく見てみれば、顔が少し赤い。
………まさか。
「風邪、引いてる?」
フラフラと覚束ない足取り。
赤い顔に、焦点の合わない視線。
これは完璧に、風邪の症状じゃないか。
うわ、こんな体調で池袋居たの?
いくら丈夫でも、不意打ちされたらオシマイじゃないの。
シズちゃんは俺が殺すんだから、他の奴に殺されちゃ駄目なんだ。
しょうがない。
「一時休戦だね、これは」
いくら化け物でも、症状が風邪ならつんけんにはしないさ。
そこまで鬼ではない。
風邪拗らせて、なんて死に方は許さない。
ふらつくシズちゃんの腕を掴むと、じっくりと汗が滲んできた。
「シズちゃん、帰ろう。今日はもうお開きだよ」
「…………」
喋るのも億劫なのか、何も言わずに自宅への道を歩き出す。
俺は少し考えてフードを被った。
噂は広まるのが早いからね、シズちゃんのイメージを悪くするのは得だけど、今回は俺も絡んでるし、そういう訳にもいかない。
シズちゃんの家に着いた。
しかし、冷蔵庫を見ても食べれそうな物がない。
よく生きてるよね、全く。
ベッドに沈む金髪を見ながら少し苦笑する。
「シズちゃん、何か欲しい物があるなら買ってくるけどいる?」
「…………」
「適当に買うよー?」
返事無し。
否定が無いから適当でいいらしい。
肯定もしないのか出来ないのか。まあ、いいや。
こんなに尽くすの、俺だけなんじゃないかな。
人を愛してる俺が、人以外の君を世話するなんて、ね。
ま、たまにはいいけど。
財布を持ちながら笑う。
(嗚呼、なんて可笑しな日々!)
100323
続くかもしれない。
風邪引きシズちゃんは可愛いと思います。
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