アクマ * 器用にナイフを操って缶詰をひとつ空にし、主は考えているようだった 二つ目の豆の缶詰に手を伸ばし、それを半分平らげるとゆっくり言葉を選んで話始めてくれた 「…聞いた話だが、」 それは、噂話 「むかし近衛騎士のご子息が、出世のために悪魔を手に入れたそうだ、 彼は ある実験に手を出したが、それは手に負えるものではなくてな」 ゴクリと豆を飲み込んで、主は私を見つめる 「ほう、うわさ話ですか、それから?」 「ああ、結果だけ言えば、彼は死んだそうだ。悪魔の力をコントロール出来ずに」 よく聞く話だと、とぽつりと思う。だが私の知っている話は近衛騎士ではなく貴族で、 …彼は、王族に連なる尊いお方だった。 「アクマは、力の固まり、異世界から呼ばれたもの」 「それから?」 いつの間にか話が終わって、それくらいかなと呟いた主に噂話だけかよ、と落胆する 実質、何も知らないに等しいじゃねーか。 「チッ とりあえず、アクマにもランク付けが在ることからお話いたします」 機嫌が悪そうな私に、食べるのをそっと止めて主は音を立てずにテーブルにナイフを置いた。 [*前][次#] [戻る] |