マオユウ
05
その驚きも、すぐに頭の中に水のように流れ込む映像にかき消された。
スカイブルーを貫き、あるいは支えるような尖塔や建造物。灰色の柱に絡む線が張り巡らされた狭い空。
鉄の枠組みを連ねた、妙な道を駆け抜けていく箱を連ねたような乗り物に、黒く固められた地面。
アスファルトやらビルやら電柱やら聞きなれない言葉と共に、知識を共有する。
とくに学校、というものに驚かされた。義務付けられたものらしい。
彼女の話が事実であることを飲み込んだ後、呆然と固まっている内に身をひいた勇者はまた頭にすっぽりと鎧をはめていて、
ショックから立ち直った魔王は、鎧で顔が見えなくなった事を少し残念に思った。
「それまたかぶるの?」
「…あー…、落ち着かないんだ、不安になってな」
何気なく聞いた言葉。
何の事か、すぐ思い当たったのだろう。バツが悪そうな声が返ってくる。
「ふーん?」
先を促すようにじっと見詰めれば、視線に負けた彼女が鎧の下からぐもった声で
「いやあ、勇者っても歴代、最弱らしくてな…」
とつぶやいて、連戦を重ね何度も命が危うかった記憶が抜けず、いつの間にか脱げなくなっていたらしい。彼女の居たところは、ひどく平和だったのだろう
「こっちに来るまで、剣も握ったこと無くてな」
盾って、すんごい重いのなーと気楽な声で口にするが、雰囲気はどこか暗い
声をかけようか、しばし迷って、口を開こうとした時
「なんか、こっちばっか喋ってるからそっちも何か喋って」
と誤魔化されたのであった。
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