マオユウ
04
それを聞き漏らさず、関心をもったらしく魔王が聞いた。
「どこの生まれなの?」
勇者はすこし顔を魔王に向けた後、また空を見る。
空気を微かにゆらすだけのため息をついた後、ぽつり、帰れないと答えた。
それに眉間にシワを寄せ、ちゃんと答えてよと子供らしい拗ねた顔と怒った声をあげた魔王に、カシャカシャと音を立て肩を揺らし鎧ごと勇者は笑いだした。
ますます、魔王のご立腹に拍車がかかり、ぷいとそっぽを向く。
ようやく笑いがおさまった勇者が、悪い悪いと軽く謝りながら起き上がる。
「たぶんな、言っても余計に怒らせるだけだと思うんだがな…」
笑いを滲ませた声は、どこか心細げで
そっぽを向いていたものの、ちらと視線をやり耳を傾ければ
鎧で表情はわからないが、どこかうつ向きながら
「異世界って、知ってるか?」
と勇者は口にした。
ふざけた答えに一瞬、絶句するが、
「どういうこと」
ぎりぎり踏みとどまって、勇者に声をかければ
少し首を傾げ考えた後、おもむろに頭の甲冑を外しむしり取る
そして、汗で顔に貼り付いた髪もそのまま、コツンと魔王の額におでこを当てた。
象牙色の肌。あごまでのびた黒い髪がふわり魔王にかかる。
日に当たると茶色い瞳は光の加減で黒く輝き、そこでようやくショタ魔王は勇者が女だと気づいたのであった
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