Story-Teller【裏】
篠原×相楽 甘々

肩が寒い。

そう隣から聞こえたので視線を下ろせば、うつ伏せで枕に顔を埋めている相楽が、片目だけをちらつかせて見上げて来ていた。

相楽が占領している自分のベッドの端に座って、苦い煙草を堪能していた篠原は眉を寄せる。

「起きてたのか」

「今起きました。寒い」

掠れた声で言う相楽は、言いながらも動く気配は無い。

布団から出ている肩と背中は衣服を纏わず、白い素肌が暗い部屋の中でもはっきりと見えた。

篠原は指に挟んでいた煙草を口にくわえてから、布団を引っ張って相楽の顔まで埋めてやる。

ぷるぷると首を振って、頭だけを出した相楽は、やはりうつ伏せのまま篠原を見上げた。

「篠原さんは寒くないんですか?」

時折切な気に掠れて途切れる声に、小さく息を吐く。

「充分運動したからな」

「…おじさん臭い」

目を細めて睨む相楽の髪を撫でれば、擽ったそうに布団に潜り込んで避けた。

しかし、不意に身体を起こして篠原の隣に座る。

体から落ちた布団を見下ろしていた相楽は、そのまま篠原の肩に上半身を預ける様に倒れ込んでくる。

煙草を持つ手を離して、空いた手で相楽を支えれば、相楽はゆっくりと目を伏せた。

「腰、痛い」

「だろうな」

「声、出ない」

「声枯れるのが嫌なら我慢すればいいだろ」

「……我慢なんかさせてくれないくせに」


不満そうに見上げてくる瞳から目をそらし、煙を肺一杯に吸う。

普段は健康を気にして吸わない煙草は、相楽が眠っている間だけ吸う。

相楽相手だと普段の余裕が無くなるらしく、いつも気を失わせてしまう。

どれだけ相楽が懇願して抵抗しても、最後は悲鳴にも似た喘ぎ声で快楽に溺れさせるまで追い詰める。

ぐったりと伏せてしまう相楽を見ながら煙草を吸い、またやり過ぎてしまった、と軽く反省するのが篠原の情事後の常だ。

相楽も起きたことだし、とベッド脇から携帯灰皿を手に取ると、不意に相楽がその手を掴んだ。

「俺、煙草は嫌いだけど、篠原さんが煙草吸ってるのは好きです」

「……あぁ、そう」

「だから、まだ吸ってていいですよ」


気だるさが抜けない表情でトロンと見つめてくる相楽を見下ろし、灰皿に煙草を押し付けた。

少し不満そうにした相楽の顎を指で引き上げて、下唇を軽く噛んでやる。

きょとんと見つめてくる瞳に微笑を返して、今度は舌を絡め取った。

びくりと肩を揺らした相楽は、それでもすぐに応え、ザラリとした舌で篠原の口内をなぞる。

口を離せば、薄く銀糸が繋がり、それに相楽が顔を赤らめて視線をそらした。


「煙草吸ってたらキス出来ないだろ」


ケロッとあっさり言ってやれば、眉を寄せて見上げてくる。


「…篠原さんはエロい」

「今更だろ」


言いながら、相楽の細い身体をベッドに押し倒した。

滑らかな肌に散らばる紅い跡は篠原が着けたものだ。

存外マゾっ気のある相楽は、噛まれるのが好きらしい。

篠原が着けた痕を舌でなぞれば、相楽は息を飲む。


「……もう無理ですよ?腰痛いし」

「明日休みだろ」

「…篠原さんなんか嫌いだ」

小さく呟かれた言葉に軽く笑ってから、腰を引き寄せる。

それから首筋に口付けて、耳許で囁いた。


「好きだ」


途端に真っ赤になった相楽に再度笑えば、ぎゅうっと唇を噛んだ相楽が背中に腕を回してくる。



ふわりと抱き締め返すと、相楽はゆっくりと目を伏せた。



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あきゅろす。
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