True Rose
〜灰の降る世界〜
5
群衆から歓声が上がる。早く魔女を殺せと。神に、自分に仇を為す者を殺せと。
それに応えるように炎の灯された松明が、女へと向けられる。
赤々と燃え盛るそれは一体何度になるだろうか。近付いてくるそれの熱さに、女は表情を歪めた。
「やれ」
騎士団団長の短い命令に、部下である騎士は女の足元へ炎を付けた。
「ひぃっ!や、いやぁぁぁ――――ッ!!」
喉ももう枯れていただろう。それでもその熱さに女からは悲鳴が漏れた。
かすれすぎたその声はあまりに痛々しい。息も絶え絶えに、それでも声が収まらない。
炎は足元から上へと勢いよく上る。服が、肌が、髪が燃える。肉の焼ける臭いが辺りに立ち込めた。
それでも人々は笑っていた。己に訪れるだろう神の祝福を信じて。目の前で同じ人間が人としての尊厳もなく、焼き殺されているというのに。
――愚か過ぎる光景に、吐気がした。
「………っ!」
耐えられなくなったローズは、その場に背を向けて走り去った。
急いでいたせいで処刑の見物人にぶつかり、迷惑そうな顔をされるがそれ所ではなかった。一刻も早く、この場から立ち去りたかった。
←→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!