心の絆《06》 少年と出会って数日後、レイは再び湖に行った。 そこでレイは見た。数日前には確かに何もなかった湖の湖畔に毅然と建つ社を。 『これは……何事だ……?』 一体何故、何がどうなっているのかレイには知る術もなかった。 とりあえず社に近づいてみる。 まだ人間の気配が残っていた。 『人間が建てなのか? 一体何のために……』 社を覗くと中に信じられないものが入っていた。 最奥にきちんと置かれたそれは、最高級の強度と透度を持つ銀塊だったのだ。 『何故こんなものが……!?』 銀山の全てが溶けて流れたはず。残っていたとしても泥に汚れるか削れるか……いずれにせよ、この様に完璧な状態で存在することはありえない。 誰が、何の目的でここに? 「気に入ったか? シルバーレイ」 レイの耳を優しく触るその声は、やはりまだ幼かった。だが、何より心地よく安心できた。レイは、そっと振り返る。 「溶銀の中から最高の物を取り出して精製した。それが精一杯だったが、無いよりはましだろう」 『アモン……お前が……』 アモンと呼ばれた少年は、嬉しそうに笑った。きっと名前で呼んでもらえた事に満足したのだろう。アモンはレイに近寄った。レイは、逃げなかった。そんな素振りも見せなかった。既にこの少年の瞳に囚われていた……。 『これだけのものを用意するのに、幾日もかからなかったとは……』 「俺の父が精鉄に通じている。これくらいのこと、もっと早く済ませる予定だったのだが……」 アモンは少し間をおいて、「鉄と銀は全然違うんだな」と可笑しそうに笑った。 「あ、今、レイも笑ったな」 『……? わらう? オレが?』 「そんな不思議そうにしなくていいだろう。普通の事なんだから」 ――普通、だと言うが、オレにとっては実は初めてのことだった。だから、よく理解できなかった。 だが、今まで感じたことがないくらい、とても愉快な気分だった。 ←前へ|次へ→ [戻る] |