20話 港町リノア08 フレアンを先頭に、私、カルロと続く。ルーンは籠の中でお休みだ。様々な店に目移りしながらも、活気溢れるこの街が少し気に入っていた。フレアンさんは歩幅を気にしてくれているらしく、時たまこちらを振り返る。彼の優しさが、嬉しくなる。 「……何を笑ってる」 「えー……別に?」 照れくさそうに顔をそむける彼。ああ、幸せ。こんな旅がこれからしばらく続くなんて。 でかしたヘルトさん! 「コウ、船券を換えてくる。この辺で待っててくれ」 「うん……一人で行くの?」 「? ああ、何か問題があるか?」 フレアンさんは、いつも一人で先先行動する。そういう所は尊敬するんだけど、ちょっと寂しいなぁと思う。もう少し周りを頼ったらいのに。 はっ!私が頼りないんだっ!! 「フレアンさん! 大丈夫! 私ルーンとここで待ってるから、カルロ連れて行っていいよ」 よし、言えた! まぁ案の定、彼は意味判ってないけど。 「……何の事だ?」 『そうですよ、コウ。何で私がこの男と一緒に……』 「駄目! フレアンさん一人じゃ寂しいでしょ!? 一緒に行ってきなさい!」 コウは何を原動力にしているのか、自分でも判らない程のパワーが出た。その勢いに気圧され、カルロも言葉に詰まる。フレアンは……コウの言いたい事はよく判らなかったが、彼女がそこまで言うのには何か訳があるのだろうと考えた。 「まぁすぐそこだからな。カルディアロス」 『……はぁ、判りましたよ』 カルロはちょっと嫌そうに青年に近寄る。それを確認し、フレアンは交換場へと向かった。しばらく二人の後姿を見守る。 「うん……やっぱり一人になっちゃ駄目だよね。フレアンさんだって誰かといる方が楽しいと思うし」 などど、呑気に思っていたコウ。実際はきっと毒舌大会みたいになってるんだろうな。二人はすぐ言い争うから。でもそんなコミュニケーションも大切だと思うから。余計なお世話でも何でもいい。人との接触を拒む彼に、少しでも触れ合う幸せを感じてもらえたら、それでいい。 ←前へ|次へ→ [戻る] |