古の恋人《09》 〜冬が続き〜 窓の外を覗くと、真っ白な雪が一面を覆っていた。吐く息も白い。 そうやってルーンはぼんやり外を眺めていると、背中に暖かさを感じた。そっと振り返ると、優しくルーンを見つめる青年がいた。 『ルシア、もうすぐ冬が終わるな』 「そうだね」 『? どうかしたのか?』 「……ルーン」 ルシアは真剣に目の前の可愛いい女を見つめた。ルーンは思わず顔を反らす。 だがその刹那、ルシアに抱き寄せられて声も出せなかった。 「ルーン」 ルシアは愛しそうに金の少女を見る。 ルシアの腕にすっぽり納まったルーンは咄嗟にその身を固くしていた。それに気付き、彼はそっとルーンを離す。 「急に、ごめんね」 『いや』 ルーンの顔が赤い。しかし対するルシアの表情には影があった。 『ルシア、そろそろ寝るぞ。明日になったら雪が溶けてるかもな』 無邪気なルーンに、ルシアは優しく微笑んだ。心中に潜む欲望をひたすらに隠して。 ルシアは優しい。 誰にでも優しい。 深い物欲もなく、地位や名誉へのこだわりもない。 そんな彼を仏の様だと言う者もいたが、彼の事は彼にしか分からない。 そう、彼、ルシアは……傍で眠る精霊を、小さな少女を、深く、深く愛していた。 もし誰かに彼女を奪われようものなら、恐らくは世界を敵に回してしまう程に。 彼は、ルーンに溺れていた。依存していた。 だがそれを知る者は、やはり彼しかいなかった。 共に時を過ごす中で、ルーンの存在はルシアにとって消す事の出来ない不変のものとなっていた。 ←前へ|次へ→ [戻る] |