21話 海賊船
21話 海賊船
「何で私が男装なんかしなくちゃならないのよ。花の乙女なのよ?」
誰にでもなく文句を並べた。
その時の顔は結構険しいものだったに違いない。すれ違う一般人に少し距離をあけられた。
その事に少しショックを受けながらも海賊船に近づいた。この時ものすごく幸運な事に、海賊団は丁度この町で新しい船員を補充したらしい。
辺りをきょろきょろと見回している新人がいた。
コウはその少年に近づいて声をかけた。
さすがに少年も驚いていたが、私が女だとは判らないらしい。
「君、この町の子?」
「えっ!? はい……本当は海賊なんていやなんですけど、僕、人数合わせに巻き込まれちゃって」
素晴らしい偶然だと思った。
「いいよ、俺が代わってあげる、君は早く逃げろ」
「そんなっ! 無関係な人間を巻き込めないよ!」
「君だってそうだろ? 俺はこの海賊船に用があるんだ、見つかる前にさっさと行って!」
そう声を張り上げると少年は急いで駆けて行ってしまった。それを見届けた後再び船に近寄る。
すると船員らしき男がこちらに向かって何かを叫んだ。
「おいっ! そこのお前、新人だろ!? さっさと来ねぇか!」
「はい!」
なるべく低い声で元気よく返事をし、その男の元へ走る。荷物を渡され倉庫へ運ぶように言われたが、これが結構重たい。
コウは倉庫へ行き、荷物を降ろして一息ついた。
今は誰もこの倉庫にはいない。埃っぽくてむせ返りそうだ。
日差しは小さな窓からしか入らないので昼間でも充分暗い。
一通り探してみたが、ここにはルーンの姿はなかった。
「やはり、船員が持ってるか」
出航は夕方5時。あと3時間だ。
それまでにルーンを見つけて脱出しないと大変なことになる。
私は倉庫から出て、さり気なく他の船員に探りをいれ、ルーンを探し始めた。
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