[携帯モード] [URL送信]
15話 後夜


 機関の外へと出たコウ。
 周りを囲うのは8人の男達。
 これは至上最悪の状態。

「さて、あっちの壁に手ぇついてみな」

何を言ってるんだろう。このまま為すがままにされる?
 ……冗談じゃない。武器はないけど、だからって諦めるほど愚かじゃない。

「い、や」

「あのさぁ、自分の立場判ってね?」

「判ってないのはあんたでしょ、サカリ野郎」

「……威勢いいのは嫌いじゃねぇよ、やれ!」

 8人の男は一斉に向かってきた。逃げ場なんかない。黒く大きな影が迫ってくる。
 恐い。
 恐い……?

「!?」

「捕まえた、じゃ始めよっか」

 一人の男に後ろから両腕を掴まれた。体を締め付けられた様な感覚が襲う。
 これだけで、たったこれだけの事で動けなくなるなんて。身が竦むってこんな感じなのだろうか。

 コウは冷静だった。自分でも解らないほどに。
 けれど、今すぐこいつらを殴ってやりたいのに体が動かない。
 後ろから抱きすくめられてるから……
 そう、動かないのは、この男の所為。

「ぐぇっ!」

 コウの肘が、男の腹を突いた。その衝撃で、男は前のめりになる。
 自然とコウを縛る手も弱まった。

 コウはサッと離れ、ふらふらの男に一発、蹴りをいれる。
 男は地面に膝を立て、うずくまってしまった。

「おい! 何やってんだよ!」

 仲間の一人がそう叫んだ。コウは近くにいた奴の後ろへ回り、両腕で男の首を殴る。
 骨が上手い具合に急所に当たったのか、その一撃で男は気を失った。

 残り、6人。

 そのうちの、2人の男がコウに覆いかぶさろうとした。
 その迫力は大したものだが、冷静に見てみればなんて事はない。
 本試験の闇族のほうが何倍も早い。

 コウは俊足を生かし、その場から飛び退いた。
 2人の男が激しくぶつかる。お互い頭を打ったのか、損傷部を押さえていた。
 コウがいないことに気付き、後ろを振り返った途端、視界は逆さになり、男は宙を仰いで倒れた。
 その正面には、男を蹴り上げたコウ。
 その足をスッと下ろし、次の相手に備える。

 残り、5人

「あんまり悪さばかりしてると痛い目見るよ?」

 そう言って、この状況でにこりと笑ってやった。



←前へ次へ→

8/39ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!