修行13
===4号館 中庭===
「よっ! 元気かぁ?」
そう元気よく叫んだのは、同じチームのケイン=レセプト。体格が良く、声もよく通る。背も高いのでコウは一発でわかってしまった。
「ぼちぼちよ、それよりリナは?」
「あー、なんか昼のお祈りがどうとか言ってたぜ?」
「ふーん……」
リナは見習いシスター。毎日のお祈りはかかせないのだろう。彼女が終わるまで暫く待つことにした。その間、ケインと他愛も無い話をして暇を潰していたのだが……。
「調整は上手くいったか? 剣士さんよ」
「まぁまぁね、そっちは?」
「俺はその必要もねぇくらい強いんだよ!」
「えー何それ、信じれない」
「何だと!? 見てろー! 俺のスーパースペシャルアタックをっ!」
安易なネーミングの攻撃を繰り広げるケイン。とっても鬱陶しかったので、相槌もそこそこに明日の試験について考えていた。
今日は試験前日。念のためチームで作戦らしきものを立てておくことにしたのだ。
一次試験は各自で突破。問題は二次試験だ。彼らが恐れる相手、闇族は、とても強いらしい。その情報は上から漏れてもおかしくないと思うのだが、意外に初心者は何も知らない。コウもその中の一人であったが、チームの二人が前回の試験を受けていたため作戦を立てやすかった。
「闇族か……厄介よね」
コウは精霊の王であるがために、その強大な力に悩まされていた。
精霊の王−アムリア−は、全ての精霊に等しく力を与えることが出来る。だが、闇族はそれを糧にして現物化し、襲ってくる狂者だった。それに彼らだけは例外で、精神や欲望といったものに、他の精霊よりも強く反応してしまう。
コウは初め、力を与えることしか知らなかったため、闇族に勝てないと意気消沈していた。だがカルロやルーンの協力を得て、なんとか力を奪うことも出来るようになった。
――ただ、
なるべくは、その力を使いたくは無い。身をもって教えてくれたカルロには悪いが、相手から奪うというのはやはり気持ちのいいものではなかった。
なるべくはセーレン・ハイルのみで終わらせたい。
それがコウの望みでもあり目標でもあった。
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