9話 消せない過去
少しして、アモン教皇が天の間にやって来た。
クリスは素っ気無く挨拶を返す。とても知り合いには見えなかった……。
今度はフレアンが「お久しぶりです、アモン教皇」なんて言って挨拶した。
つまりフレアンもアモン教皇と知り合いだということになる。
コウは不思議そうに3人を見ていた。
本当はこの三人が腐れ縁、旧友だということに気付かずに。
「アモン、議長は何て?」
「ああ、色々説教たれてたけど……簡潔に言うと『溜まった仕事してください』だそうだ」
アモンは笑いながら楽しそうに答えた。反してクリスは深くため息をつく。フレアンとダイスも、半ば呆れ顔で笑っていた。
コウは今この時が嬉しくてしかたなかった。
何故なら……このティレニアへ来て、こんな風に大勢で笑いあったり冗談を言ったりすることが無かったからだ。
サラやアークがたまに一緒に居てくれていたけど、お互い訓練もある。どこかへ出かける事も無かったし、ゆっくりおしゃべりする時間も無かった
だから、こんなささやかな安らぎでも、コウはとても幸せに感じていた。
こんな風に優しい時間がいつまでも続けばいいのに……。
膝の上でちょこんと座っているカルロを撫でながら、そんなことを思っていた。
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