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古の精霊04


 引き続き本を読んでいたコウは、その中に何かを見つけた。
 それは……

「フェザールーン? 古の神の一つ、風の精霊……?」

 記述の中に見慣れない言葉があった為、私も少し興味を持つ。
 更に読んでいくと、驚きの事実が記されてあった。

 フェザールーン・風の精霊。
 古の時代、最も心優しい精霊だと伝えられている。
 彼女の根源は『リストの森』の最奥に存在し、ある日を境にそこで眠ったままだそうだ。

「え? リストの森……!?」

 その森はつい先日、金髪の少年とリラの花を取りに行った森だった。
 その最奥に、あの果てまで続く森の奥深くに、古の精霊が封印されているというのか。
 あまりの事に、一瞬言葉を無くした。

『……行きますか?』

 窓の方から知った声が聞こえた。

「カルロ!」

 窓際から遠慮がちに顔を出している、小さな精霊。
 カルロは少し躊躇って、そして一気にコウの元へ飛んできた。

「私、行ってもいいの?」

『何を躊躇うんです。あなたは精霊の王なのに』

「だって、いくら私がアムリアでも、何処にでも勝手に入っていいものでは無いと思うわ」

『風の精霊に遠慮でもしているんですか?』

「遠慮というか……彼女も自分で自分を封印したんでしょう? 誰にも会いたくないんじゃないかなって」

 少し寂しそうな表情を見せるコウに、カルロは心苦しくなった。
 彼女の悲しい顔は見たくない。いつも笑っていてほしい……。
 カルロはいつの間にかそんな事を思うようになっていた。

『精霊はあなたを待っています』

 突然、真剣に話し出すカルロ。
 その言葉には切なる願いが込められていた。

『何百年もずっと、アムリアを待っていたのです。ですから貴女は早く皆を見つけてあげてください』

「見つけるって……他にもいるの? 隠れてる精霊は」

『はい、まだ帝国や西国にも。ですから貴女は会わなければならないんです、古の精霊達に』

 会わなければならない。そうはっきり言うカルロの言葉は、無条件で信用してしまいそうになる。
 だが、本当に……本当に私なんかに会いたいと思いのだろうか。無知で無力で、こんな私に……

 いいえ、こんな私でも出来ることがあるというなら。

「彼らが、私に会いたがってるって事よね?」

『はい、勿論』

 カルロは再度はっきりそう応えた。
 その時、コウは自分がやらなければならない事を見つけた気がした。
 少し間を開け、そして……ゆっくり言葉にしていく。

「分かったわ。私にしかできない事、すべき事なのよね。それなら私……古の精霊に会いにいくわ」

『マスター……!』

「ただ、カルロ、貴方も連れて行くよ、いいね?」

 コウはニコリと笑ってみせた。
 その表情を見たカルロは心の奥を大きく揺さぶられ、そして言い様もなく嬉しくなった。
 当然に彼女の傍に居られる事が、カルロにとって何よりの幸福だから。

『はい、いつでも御側に』

「宜しい。では明日から出発よ、フェザールーンに会いに」

 コウはそう元気に言い放つと、古の本を手に図書館を後にした。


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