長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その30
――――――――――。
僕は今、硫ちゃんちのリビングのソファに座り、硫ちゃんのお母さんから傷の手当てを受けている。
硫ちゃんは、さっきまで三人相手に鬼の様な暴力を振るって居た時とは打って変わって、心配そうなそれでいて申し訳無さそうな顔で、僕の手を握っている。
僕の頭に包帯を巻き終えた硫ちゃんのお母さんは、硫ちゃんに僕から離れる様、静かに促すと冷静な口調で硫ちゃんに語り掛けた。
「硫介…私やお父さんは、いつもアナタに何て言ってたかしら?」
肩を竦め、上目遣いで目の前にそびえ立つ母親をチラ見する硫ちゃん。
なんだかとても可愛い♪
「…自分の友達くらい自分の力で守ってあげられる…強い男に成りなさい…です…」
「そう…分かってるわよね……?」
「……はい」
「アナタが俊介との思い出を大切に想う気持ちは、とても大事だし私も嬉しく思うわ。
でも、あのバイクは俊介じゃないわ。
俊介との思い出を守る為に、勇輝ちゃんに怪我をさせて…………。
………アナタは満足?」
意外にも硫ちゃんのお母さんは、容赦無く厳しい人でした。
とにかくココは、僕が硫ちゃんに助け船を出さなくちゃ!!
「あ…あの………。
この怪我は、僕が勝手に硫ちゃんの前に飛び出した結果と言うか…。
何と言いうか……。
とにかく、硫ちゃんのせいでは無いんです…」
僕の言葉を、最後まで聞いた硫ちゃんのお母さんはふと、微笑んで硫ちゃんの頬を平手で思い切りひっぱたいた。
バチィィン!!
そして、硫ちゃんの頬を両手で優しく挟み、抱き寄せた。
「こんな良い友達に、もう余計な心配を掛けちゃ駄目よ…?」
「……うん」
窓から降り注ぐ夕日が、硫ちゃんと硫ちゃんのお母さんを照らして、寄り添う二つの長い影を作って居た。
僕はそれを見て思わず…
「綺麗…」
と、呟いた。
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