長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その29
「硫ちゃん!!もう止めるんだ!!」
声がした。
少し甲高い、澄んだ美しい声…。
ハっとして気が付くと、俺の視界に両手を広げた勇ちゃんが、飛び出して来ていた。
俺は、必死でママチャリを振り降ろす手を止めようとしたが、間に合わず…
――ガシャッッッ!!
―――――――。
「勇ちゃん!!勇ちゃん!!
大丈夫!?……ねぇ!!大丈夫!?」
吹っ飛ばされて、こめかみの辺りから一筋の血を流す勇ちゃんに、俺は全速力で駆け寄った。
お…俺が…勇ちゃんを…殴って…傷つけて…勇ちゃん…勇ちゃん…。
勇ちゃんの背中に手を回して上体を起こしてやると、勇ちゃんは苦笑いして俺の頬を撫でながら言った……。
「硫ちゃん…もう止めとこ?」
俺が何度も頷き、謝罪を繰り返すと、
「大丈夫だって。
それより早く逃げよ?」
と言って、少し辛そうな足取りで、単車のリアシートにちょこんと座り、
「早く♪早く♪」
と、笑顔を作り俺に逃走を促した。
この時俺は、こめかみから血を流して何事も無かった様に、気丈な笑顔を見せてくれる勇ちゃんの姿を………凄く愛おしいと感じた。
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