長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その15
十朱が別室に消えると、男性はデスクから腰を上げ、勇輝にソファーへ座る様に促した。
「あ…はい!!」
言われるまま、ソファーに腰を下ろす勇輝。
それを見て取った、この理事長とおぼしき男性は、目の前のソファーが空いているにも関わらず、わざわざ勇輝の隣へ、体を密着させるように腰を下ろした。
「?????」
この男性の不可解な行動に困惑し、目を丸くする勇輝。
すると男性は、ニコリと微笑み、勇輝の瓶底眼鏡を取り払った。
「ん〜〜〜〜!!
勇ちゃん久しぶり〜♪」
そう言うと、男性は勇輝を力一杯抱き締めた。
「〜〜〜〜〜っ!!!!」
顔を赤くして、苦しそうに男性の肩を叩く勇輝。
「ああ。ゴメンゴメン…あんまり嬉しかったもんで…つい、力が入っちゃった…」
「ぶはっ〜〜〜…し、死ぬかと思いましたよ…理事長さん…」
この勇輝の台詞に、男性は一転して不機嫌な表情を作った。
「征二……」
「はい…?」
「征二って呼ばないと……もう一度、ハグするよ……全力で……」
勇輝の顔面に集まった血液が、サーっと音を発てて下がって行く。
「じゃ、じゃあ、征二さん?…で、良いですか…?」
「あ〜あ…【さん付け】なの〜?
小さい時は、『征ちゃん、征ちゃん』って可愛く懐いてくれてたのにぃ〜」
「だ、だって…覚えて無いですし…」
「くぁ〜〜〜時の流れは無情だな〜〜〜!!
……所業無常の響き在り…か…。
小さい頃は添い寝してやると、喜んで抱き付いて来てくれたのになぁ〜」
征二が後半を大声で言うと、十朱が待機している部屋から『ゴッ!!』と鈍い音が聞こえた。
『聞いてる、聞いてる……ケケケ♪』
どうやら征二は、十朱の反応を見る為にワザと大声で言った様だ。
暫くして含み笑いを止めた征二は、顔を赤くし俯く勇輝の腰に、さり気無く手を回し問掛けた。
「ところで勇ちゃん?それってカツラ?」
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