〜龍と刀〜 三色の暴徒T ***** −−同日、午後八時過ぎ。 すっかり夜に覆われた街には、昼のように明るいイルミネーションが飾られている。それもそのはず、後一カ月もすればクリスマスというイベントがあるからだ。 中心街となるこの場所は人の出入りも多くなる。客からの注目を浴びるため、どの店もこの時期から準備を開始するのだ。 そんな中を歩く二つの人影。 一つは学校の制服に身を包んだ学生、もう一つは白髪混じりの髪を後ろで束ねた老人。老人と言っても、隣に居る学生と同じくらい背筋はしゃんとしているし、足取りも軽やかだ。 「あ〜疲れた〜」 「だらしがないぞ幸輔。たかだか三時間程歩き回っただけではないか」 「いやいや、別に体力的には問題ないんだよ〜?ただほら、人間って単純作業ばっかりだと精神的にくるじゃない?そういうアレだよ〜。じっちゃんとは違う〜」 「……それと、その語尾を伸ばすのはどうにかならないか?誰に似たんだ……」 だらだらとした受け答えは、祖父は好きではない−−好きという人間も少ないだろうが−−。何度も、何年も言い続けても変わらない。両親がそういう喋り方な訳でもないのだ。 「何が、あったのだろうな……お前に」 「あ〜それはボクにも分からないんだよね〜。気付いたらこれだったからさ〜」 「治そうという気は−−」 言いかけて首を振る。どうせ言っても無駄なのだ。 「さて、後少ししたら帰るとするか。粗方確認出来たしな」 「やっと終わる〜……今日はさっさと帰って風呂だね〜。寒いし〜」 気のせいか先程よりも軽くなった足取りで進んでいく幸輔。溜め息を吐きながらも付いていく祖父。 その二人がピタリと歩くのを止めた。同時にだ。 理由は簡単。悲鳴、怒号、爆発音が飛び交っているからだ。 「行くぞ幸輔」 「はいは〜い。結界はじっちゃんにお任せするよ〜」 「ああ。まずは敵方の顔を拝んでからだ」 行き交う人の流れを遡るように、縫うように向かう。この騒動を起こした張本人の元へと。 「ホラ、逃げないと死んじゃうぞー!あっははは!爆発楽しいな!むしろこの姿最高!」 「遊んでないで早く終わらせようぜ。厄介な奴らが集まって来るんだからさ。なあ?」 「……僕はどちらでも。好きであなた方と組んでる訳でも無いので」 「ホンっトお前ってつまらない奴だよなぁ。欲ってねえの?」 赤、黄、黒の三色をしたローブを纏う者たちが、そこには居た。爆発を起こしているのは赤らしく、手元には小さな魔法陣が浮かんでいる。 「もう一発だけ−−」 新たに魔法陣を作り出した赤が、街に向けて魔術を放とうとした時だ。 「なるほど……君たちがこの騒乱を勃発させた犯人か?」 「いや〜普通は赤、黄と来たら青じゃないかな〜とボクは思うんだけどなぁ。セオリー的に〜」 声と共に、両腕を何らかの力で落とされた。消滅の方が正しいか。 「な、んだ……これ……!?」 「敵襲!」 「……いつの間に?」 三色の魔術師が驚きを隠せない中、戦闘は開始。 [*前へ][次へ#] |