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〜龍と刀〜
十二月第一週の休日W
『ゾンビパニックU』。良くあるゾンビを撃っていくゲームだ。画面は半分に分かれており左側に井上、右側に陽のプレイ状況が表示されている。ほとんど見ている画面として変わらないのだが、時折出て来る驚かせ要員を撃つ時だけは画面が統一されるようだ。

「意外とぬるいなこれ……ハードでも余裕じゃん」

「まあ最初はそんなもんだろ」

意外にも才能があるらしく、第一ステージをクリアして井上は無傷。対して陽がほんの少し体力を削られているという状態。これについて陽の言い訳は、こんな精度の悪い銃は知らない、だそうだ。
ステージクリアによって再びストーリーが入る。どうにか脱出出来たが、数も多いゾンビを切り抜けるのは困難。そして徒歩での移動も危険だからと何か乗り物を探しに出るらしい。

「結局徒歩のままじゃねえか」

「ストーリーも微妙だなぁ……」

そして二人は順調に、且つ騒ぎ、ストーリーの不審点を突きながら進んでいく。やはり井上にはこのゲームの才能が見られるようで、的確にゾンビたちを駆逐していく。上方に表示されている討伐数も井上の方が上であるという珍しい事実。しかし、陽も負けているのは気に食わない。途中で入手した機関銃のお陰で引金を引きっぱなしに。これでようやく五分五分と言ったところ。残るは最終ステージ。

「おっかしいなぁ……何で俺ら宇宙人と戦ってるの?」

「知らねえよ……おい何か爆弾解除するとか書いてあるぞ」

「もう訳わからん!でもここまで余裕だったし最後も行けるだろ!」

会話から状況は把握できないが、とにかく今画面に映っているのは時限式の爆弾を解除するというミッション。パスワードを打ち込む、と表示されているが。

「は?パスワードぉ?」

「そんなくだりあったか?」

「い、いや記憶に無い……」

「だよな……」

戸惑っていると画面には新たな文字が浮かび上がる。それは衝撃の内容だった。今から流れるアルファベットを並び替えて単語にしろ、文字は三回流れる。そしてそれからカウントダウンの開始。

「……無理だな」

「まだだ!諦めちゃいけない!……と思うけどさ」

その言葉を見た途端に意気消沈。そしてカウントダウンが終了しアルファベットが現れ――

「んん!?」

「速過ぎるだろ……!」

「龍神でも見えないの!?無理ゲーかよ!」

「だけどあと二回ある……こんなやり方されたら負けたくねえな……」

――消えた。ほんの一瞬。瞬きすら許さないその速度。これがゲーム難易度を上げる難問なのだろうか。だとしたら、この理不尽な状況に抗いたくなるのが陽の性格。再カウントダウンが始まる。次は見逃さない。感覚を研ぎ澄ます。今やらなくてはいけない事はこの画面に表示される物を見逃さない事。雑音は遮断する。そして、カウントが終了した瞬間、暴走車のように過ぎ去る何か。井上にはやはり見えなかったらしい。しかし、陽はどうだろうか。最後のカウントの前に携帯を取り出し、何やら打ち込んでいる。三度流れる。流れ星も驚きの速度。これではクリア出来る人間などかなり絞られてくるだろうに。

「よし……大丈夫だ」

「おぉ!さすが龍神!頼りになるぜ!んでパスワードは?」

「言うぞ?並び替えないで“EAILN”だってよ」

二度目でどうにか捉える事に成功し、三度目で確認するという技をやってのけたのだ。これには待ちの客も驚きを隠せない。

「でも……あれ……最後だってのにクイズしてね……?」

これは一体どういうゲームだったのか。根本を揺るがしかねない。

「ま、まあ良いか。さっさとクリアしようぜ!」

「だから並び替えろって言ってるだろ。時間がねえ」

「なんだこれ三十秒って……!えあいらね?空気はいるだろ?」

「何だこれ……まったくわからん」

考えている間にも制限時間は過ぎていく。残り二十秒、無い頭を捻ってもどうにもならないのか。残り十秒、周囲の客も固唾を呑んで見守る中、井上が銃を構えた。

「分かったのか?」

「いや分からねえけど……今の気持ちは……あーりーえーんー!」

ローマ字読みで“ALIEN”と入力。するとどうだろうか。爆弾のタイマーが止まり、宇宙人たちも去っていくではないか。これはつまり――

「……クリア?」

「なのか?」

スタッフロールとリザルトが流れる。訳のわからないままゲームをクリアしてしまったらしい。引金を引くと、別画面へ。

「ほら名前打つ画面じゃん。良かったな」

「何かすっごく微妙な気分だけど……」

アルファベットで和真、陽と打ち込む。そして表示されたランキングはなんと。

「一位だけど……これ誰もクリア出来てないからじゃんかよ!あ、でも誰にもこの情報流さなきゃ勝ちじゃね?」

陽としてはそれよりも総合成績で負けていた事が不満だったらしいが、微妙な雰囲気になりつつあったので『ゾンビパニックU』の筐体から離れる。もう二度と、関わる事はないだろう。

「謎のゲームだったな」

「やっぱりメジャーなやつの方が安定してるよ……もうやらねえ!」

こうして、『ゾンビパニックU』はこの二人意外に誰にもクリアされず撤去されてしまうのはそう遠くはない未来の話だ。

「そう言えばあれ何て意味だったんだろうなぁ」

「さあな……覚えてたら誰かに聞こうぜ」

「そうすっかー」

相変わらず、英単語に関しては適当な二人であった。

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