〜龍と刀〜
夢の中]W
リーザの腕っぷしの強さはマーワルドの予想を遥かに越えていた−−先程も数人の屈強そうな男たちに囲まれたが、あっという間に戦闘不能に追い込んだのだ−−。
「残ったのはもう、ここしかないわね」
「これは……分かり易くて助かる。これまでの苦労がいらないぐらいさ」
目の前。
この場に来るまでの質素な木造の扉ではなく、金属をふんだんに使った、豪華とは言えなくても金の掛かった代物が鎮座している。
「くぅっ何、この重さ!こんなのどうやって出入りしてんのよ!」
腕を押し付けてもピクリとも動かない扉に向かって奪った槍で何度も突き刺して怒りを露わにするリーザ。
「なるほど、こんなのがあるから騒ぎが少ないんだな……まさしく鉄壁ってやつか」
顎に手を当て、冷静に分析を開始するマーワルド。どうにかしてこの強固な扉を破って中に入り、領主を懲らしめてやらねばならないのだ。
「……」
「このっ!さっさと出てきなさいよ悪質領主!」
火花を散らす槍の矛先も大分削れてきている。そろそろ耐えきれずに壊れてしまうだろう。
「主、人間には砲と呼ばれる兵器があるそうですが……それの威力とはいかほどの物なのでしょうか?」
奮闘中のリーザには聞こえないと判断したらしいアスラが耳元でこっそりと話し掛けてきた。
「火薬の力で爆発を起こして弾を飛ばす兵器。破壊力は確かにあるとは思う……でもここにあるのかが問題だし、そうこうしている内に逃げられる可能性だって考慮しなきゃならない」
熟考し、導き出した解答。
「いや……砲が無くてもここには破壊力の高い物があるじゃないか」
「何か思い付きましたか?」
「もちろん。とっておきのがあるはずだ!」
マーワルドの頭に浮かんだのは、ここには絶対あるであろう物だ。破壊力も高くて、軽量で。しかもこういった厚さや重さのある物体には強烈な威力を発揮してくれるのだ。
「なあ、警備の人なら知ってるだろ?鉱山で使う爆破用の爆弾があったりするよな?それはどこにある?威力はどれくらいだ、この扉を壊せるか?」
「っ……」
右肩を貫かれ、壁に縫い止められて痛みに呻く男の傍で膝を曲げると、連続して質問を投げまくる。
マーワルドのやろうとしていることが伝わったのか、まだまともに動かすことの出来る左手を自身の懐に突っ込み、ごそごそと漁る。どうやら手元にあるらしい。
「確か、一つで……分厚、い岩盤を粉砕したのを見たことが、ある。だ、から……威力に関してはぁ、心配いらない」
痛みを堪え、荒く乱れた呼吸を取りながらも正確に情報を伝える男にマーワルドは感謝の言葉を述べ、それ−−手榴弾とでも言えばいいだろうか−−を両手で受け取る。
「領主様を、とっちめてやってくれ……」
その言葉を口にすると、男はがっくりとうなだれた。驚いて首筋に手を当てると、弱々しいがまだ生命の動きが感じられる。
「それでも、このままで良い訳じゃないんだ。早く、終わらせなきゃ」
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