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〜龍と刀〜
夢の中[
連れて行かれた場所もあまり広くは無いが、先程よりは空気が軽い。少なくとも、この場に居るのが二人と一羽だけというのも関係しているのだろうが。

「はい、これに座っててくれる?今飲み物を持ってくるから」

差し出されたのは木製の椅子。使い古されているのか、所々に傷やへこみがある。
ギシギシと軋ませながらマーワルドは座り、肩に乗っていたアスラも、特に理由は無いが、目の前にある丸テーブルへと移動。

「……どう思う?」

棚をひっくり返して漁っている女性を横目に小声でアスラに話し掛ける。

「このような得体の知れない輩と組むのはいささか賛成は出来ないです」

「やはりか……だが、脱出もままならない状況だ。顔もあれだけの人数に見られてしまったし」

「いつどこで捕まるかわからない、という事ですね」

「なら、決まりだ。機を見てあいつらを乗っ取るしかない。そろそろ二人だけで動くのも辛くなってきたからな」

そこで会話は終了。女性がグラスと飲み物を持って近付いて来ていたからだ。

「何かあったのかしらね?妙に雰囲気が落ち着いているから気になったわ」

「いえ、腹を決めただけです。それでは本題に入って頂きましょうか?帝国兵のお姉さん」

「ふふっ。いいわね、その目……全てを射抜こうとしている眼差し。その奥で揺れているのは野望か希望か」

グラスに注がれたのは、どうやら果実酒みたいだ。淡く酸っぱい香りが鼻に届く。
女性はそれを、唇を湿らせる程度に含み、再び笑顔を作る。

「この町のお酒はやっぱり酸味が強いわ……さて、何から話そうかしらね」

「では、あなた方が集まっている理由から聞きましょう。こんな、見つかったら即処刑という危険に身を投げ出している理由を」

酒が好きでないマーワルドは、勧められた果実酒に手を出さなかった。しっかりと女性の瞳を捉え、どんな嘘も決して見逃さないように。

「理由は簡単。今の王がやっている事が原因よ」

「キィス王が?」

「そう。彼はね、極度の争い好きで近々戦争を起こすらしいの」

「……それは噂で聞きました。しかし、これだけじゃないでしょう?」

マーワルドはグラスに手を伸ばしたが、やはり飲もうとはしない。ここで酔ってしまえば頭も回らないし、体も動かなくなる。のどが渇いてきたが、致し方ない。

「たかが王の変わった嗜好ぐらいでこれだけは集まらない。……この町では鉱山の開発が盛んらしいですね。そして噂じゃ武器を大量生産するためだとも聞くじゃないですか……噂の真偽はともかく、それに関係していると俺は見ます」

ある程度、答えに近いものは導き出せていたがまだ確証にまでは至っていないのだ。だからどのような相手の動き−−微かな視線の揺れさえ−−も見逃さない。

「その噂は正解ね」

「なるほど……話は飛躍しますが、あなた方の狙いは、その武器の強奪とでもいったところでしょう?謀反を起こすための」

女性はゆっくりと目を閉じ、溜め息混じりに一言。

「ふぅ……それも、正解よ。君、なかなか頭が回るのね」

「これが取り柄ですから。あなたは考えが読み取れない」

「伊達に女で帝国騎士なんかをやってないわよ」

「俺も伊達にこの年で旅に生きていませんから」

そう言ってお互いに不敵に笑う。
マーワルドは自分のペースで話が進んでいると思い、女性はキレる子を拾った、と心中でほくそ笑んでいる。
駆け引きはもう少し続きそうだ。

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あきゅろす。
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