〜龍と刀〜 夢の中\ 「では、続きといきましょう」 「あなたの憶測はきっとどれも正解になるわ。だから私がまとめて喋ってあげる」 「そいつは助かりますね」 半分くらいとなっていた果実酒を豪快に飲み干した女性が口を開く。 「私たちは都で贅と暴虐の限りを尽くし、あまつさえ別の国の民にも被害を加えようとする腐った王家を壊滅させるために集まった義勇兵よ」 「それを倒して、新たな王を立てようと?」 「違うわ。王なんていう概念を取っ払って別の態勢を作る……強いて言うなら議会をちゃんと立てることね」 「っ……」 マーワルドが初めて言葉に詰まった。彼女たちがやろうとしている事の大きさに驚きを隠せなかったのだ。 「……それは、世直しって言うんじゃないですかね」 「そうね。この世界はいつか変わらなくちゃいけないのよ」 「改革、ですか……」 「ええ。今の−−古い態勢がダメなら新しい物に変えるべきなの。腐った物が他の物に伝搬しないように」 マーワルドは、この組織がやろうとしている事に軽くではあるが、共感を受けてしまった。彼女らの目的達成はイコールすると自身の目的の達成に繋がる可能性があるからだ。 「そのために私たちはこの町を牛耳っている領主の家から王都に搬送される武具を奪おうと作戦を立てていたの」 「なるほど……」 今、頭の中で渦巻いているのは簡単な選択肢が二つ。 一つは、最初の考えを貫き通し、この組織を乗っ取ってしまうこと。 もう一つは正反対。逃げてしまうことだ。ここまで聞いてみて、彼女らがやるのはやはり謀反であって、捕まればそれで終了。人生そのものが終了してしまうというリスクがある。 「悩むのは自由よ。私だってすぐに結論を出せ、とは言わないわ。ただ、聞いてしまったからには逃れることは適わない。地の果てまでだって追いかけるんだから」 「そいつは厄介だ……いっそ見逃してくれませんかね?」 「どれだけのお金を積まれようが、私の心はちょっとしか揺らがないからそれだけは覚えておいてよ?私も人間なんだから」 「ちょっとは揺らぐんですか……そんな大金はこの一生涯持つことはないでしょうけど」 皮肉だが、きっとその通りなのだろう。 自分が持てる金額などたかが知れている。 その日暮らせるだけの金があればそれで充分、というのがマーワルドの金銭感覚だ。だから金に対する特別な思いなどは抱いていない。 「それじゃ、今日はこのくらいでお開きにしましょうか」 「いいん、ですか……?」 「言ったでしょ?答えは急がないって……その代わり、一つだけ言っておくわ」 女性は立ち上がり、マーワルドの目をしっかり見ながら告げる。 「私たちが行動を起こすのは、次に日が昇る頃よ。奇襲を掛けるには一番良い時間帯だからね」 答えは急がないとは言ったが、答えを待つ気も無いらしい。考える時間はほとんど与えてもらえなかった。 [*前へ][次へ#] |