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〜龍と刀〜
奔走U
*****


「くそっ……完全に逃げられたか!」

全てが去った後も、陽と幸輔は街の中を走り回っていた。残党が居ないか調べるためだ。

「そのようだね〜。してやられたよ、まったく……協会の方もなんか繋がらないしさ〜?この後、どうしようか?」

「修復−−はまた混乱を生むだろう。大人しく引き下がっておくのが定石ではないか?」

「そうするしかないかな。月華と紗姫も戻ってるといいけど……」

「あ、じゃあボクもお邪魔させてもらうよ〜?根気よく協会に通信を繋いでようと思ってね〜」

ただ、ほぼ廃墟となってしまった街を見つめていても事態が好転する訳ではないのだ。しかし自分たちだけで何が出来るかも見当が付かない。
こんな時こそ大きな組織による決定に身を任せてみるのも良いだろう。何と言っても魔術のエキスパートが集っている場所なのだから。

「それじゃ、残党探しも続けながら龍神の家に行こうか〜」

相変わらず暢気な声で出発を促した。


*****


「ん、やっぱり全部帰ったみたいね。生き物の気配が無いわ」

「こっちもだ。ワタシの探査にも引っ掛からないのだから、何も居ないと見るのが妥当な判断だろうな。狐種の−−」

「あー月詠さん、その呼び方やめてくれないかしら?何か嫌だわ」

影で創られた大剣を消滅させた紗姫が、月詠の言葉を遮りそう言うと、月詠は月華の表情を借りて不思議そうに首を傾げる。

「何故だ?別に事実を言っておるだけだし、今は一般人も居ない故良いだろう?」

「あのね、そういう問題じゃなくて……せっかく仲良くなったんだから名前で呼ぶのも良いんじゃないかしら?」

「ふむ……しかし、馴れ合いは好きではない。それにワタシは元神族で、配下とも言える獣族と親しくなど」

そこで月詠がふと言葉を切った。何事かと紗姫も身構えてしまったが、特段何かが起こっていたりもしない。

「依り代がそう言うなら仕方ないか……ん?依り代の事も名前で呼べ、と?むぅ……」

何やら独り言とも取れるような事を呟き始めた月詠。
話の内容から察するに、意識を借りている月華と会話のやり取りが行われているのだろう、と推測出来る。

「善処も努力もするつもりだが……という事だ」

「いきなり言われても話の結果が分からないからどうとも言えないじゃない」

「つまりだな、ワタシは名前で呼べるように努力をする、という事だ。他に説明は必要か?狐−−いや、何でもない」

彼女の言う通り、努力はしようと思っているみたいだ。何とも律儀な元神族だろうか。
そう思うと自然と笑みが零れてしまう。

「な、なんだ?何を笑っている!?」

「何でも無いわよー」

「明らかに何かを隠しているぞ!ワタシの元神族の眼力は誤魔化せんからなっ」

あたふたと対応する月詠。そんな中、紗姫のズボンに入っていた携帯電話が鳴動した。
激しい戦いだったはずだが、どうやら無事なようだ。

「む、それの使い方は知っている!貸すのだ!」

照れ隠しのように紗姫の手元から奪い取り、一瞬考えて耳に当てる。

「おお繋がったぞ。特に理由は無いが、ワタシが使っている……ふむふむ……わかった。よし、少年の家に帰るぞ」

「そういう電話ね。ま、作戦会議ってとこかしらね?」

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あきゅろす。
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