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〜龍と刀〜
奔走T
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あの戦いが腑に落ちない形で幕を下ろした後、協会は事後処理に逐われていた。
それもそのはず、あれだけの大規模な干渉が行われたしまったのだから人々の混乱は避けられない。
いつものような範囲の狭い記憶操作だけでは事が足りないし、数人で成し遂げられるような状況でもないのだ。かと言って流暢に時が過ぎるのを待つ事も出来ない。
ならば同じように“大規模な魔術による干渉”を行えば良いのではないだろうか、それが協会で出された最善策。

「しかし、大規模な干渉とは簡単に言うが……具体的には何をどうするつもりなのだ?」

残って会議を開く頭首陣−−もちろんこの場に十六夜は居ない。全てが片付いたと見ると全力で帰って行くのを何人かが目撃している−−。
十六夜のように帰らず残っているのは、家族の無事を確認した者たちだけだ。

「巨大な魔法陣を展開し、その範囲内に記憶操作を行う、というのは……?」

「それだと距離によっては効果が薄くなってしまうだろうに」

「では他に方法があるのですか?今のが一番手っ取り早いでしょう」

「まあまあお二方、そう気を立てなさるな。仲間内で喧嘩していては決まる物も決まらんのではないかね?」

こうやって仲を取り持とうとしてくれる者が居なければ、ここは今や半戦場と化していただろう。

「確かにそうかも、しれないな……悪かった……」

「いえ、こちらも少々気が立っていたので」

「さてさて皆さんも議題に戻りましょうよ?……っと若輩者が失礼致しました」

「君はなかなか人をまとめるのが上手いな」

場は少しずつだが和やかに。和やかになるべきかは分からないのだが、方向としては良いのかもしれない。
しかし、事態は悪化する一方であるという事を忘れてはいけないのだ。

「案としてはそれが一番であるのは変わらないのじゃが……それをどうやって全域に広げるかが課題」

長が自慢の髭を撫でつつ続ける。

「威力を変えず、範囲を広げて記憶を操作する。過去に前例の無い大規模な魔術を使えば、どうなってしまうかも分からぬの」

「失敗すれば記憶を消滅させてしまう可能性すらある、と……?」

「それだけで済めば良いんじゃが。とにかく、まずはここの近辺一帯を操作して様子を見るとしよう。御門の、頼めるかの?」

視線はじっと正座で佇んでいた『御門流』頭首へと投げられた。

「長のご命令とあらば……」

「うむ。では、何名かを率いて記憶操作を命ずる。それと記憶操作後の内容じゃが……」

「そこは私の方で何とかしましょう。長は引き続き対策を。では、失礼」

音も無く立ち上がり、颯爽と退出。影も残さず、自身に与えられた命令を果たすため目的地へ。

「それでは、戻るとするかの……何か、何か無いかの……?」

熟考。
しかし、衰えてしまった頭で新しい案を作るのは難しい。

「あ、あの……良い考えが浮かんだのですが、発言しても……?」

おずおずと挙手した小太りの男性が言う。これぞまさに現代だからこそ出来る魔術の使い方だ。

「なるほど……早速実行準備を!確実に成し遂げるのじゃぞ!」

長の号令により皆が皆動き出した。事態をほぼ数十分で解決出来るであろう方法を取るために。

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