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〜龍と刀〜
真相は……
*****


「あの野郎、嘘吐いてやがったのか……」

砕けたガラスを蹴って退かし、座り込んでいた十六夜が小さく舌打ち。

「てっきりワタシは気付いているて思っていたのだが……宝刀白銀よ、前の使い手は、ワタシの事を何と伝えたのだ?」

月華の姿をした月詠が、隅に置かれている白銀へと視線を投げる。
当事者であった白銀はもちろん知っているのだが、その場に居たはずであろう陽には覚えが無い。

「ふむ。達彦は、二度と目覚めぬような強力な封印を施した、これは人間と種族の共存のためだとも言ってあったはずだが」

「なっ……!?そんなの俺様は聞いていないぞ!白銀、貴様も騙そうという魂胆なのか!」

「覚えてないあんたが悪いじゃねえか。人の話はちゃんと聞こうぜ」

蚊帳の外な状態に飽き飽きした陽が軽々しく割って入った。ガラスの後片付けも面倒になってきた、というのもあるのだが。

「何はともあれ、貴様が月華の中に封印されていたという訳か」

「そうなる。目障りであるなら、消してくれ。元はあの時に失うはずだった命、今更消えたところでどうとも思わん」

「あれ、スルーされたよ……?」

珍しく、陽が井上のような立場に置かれているみたいだ。なかなか酷い状況である。

「ふん……言われなくともそうするつもりだ。月華の中から出て行ってもらうぞ」

即席で術式を組み上げる十六夜。時間にして約三秒。さすがは一流の魔術師と言われるだけの事はある。

「待つのだ、二人とも。月詠とやら、貴方に問うぞ?」

制止を掛けたのは白銀。達彦の意志を尊重するつもりだろう、と十六夜は踏んでいたのだが、

「当の本人は、月華はこの事を聞いているのか?」

「意識自体は眠りに付いている、が……記憶は共有されているはずだ。それが何か?」

「ならば、月華に聞いてみれば良かろう?月詠自身が聞くのか、それとも十六夜が聞くのか。そこが重要だな」

白銀が尊重しようとしているのは、月華らしい。
しかし、十六夜としては娘をわざわざ危険に曝すなどという無様な事は御免だ。

「白銀、貴様は月華を戦わせようと言うのか?月華に、戦う力など不要だ」

「別に今すぐ結論を出せと言っている訳ではない。しかし、事情を知っている我らが道を断つのも後味が悪いであろう?」

「月華は望んで魔術から離れた。それを今更戻りたいなどと言う訳がない!」

木刀を叩き付け、床に穴を開ける。陽としては、先程から良い迷惑だ、と思っているが口には出さない。

「だから聞いてみろと……」

「はぁ……見てられぬな。今から意識を返すから、親子水入らず語らうと良い」

「水入らず、って……ここ俺の部屋だからな?忘れてない?」

呆れた月詠が目を閉じる。金色の腕輪が一瞬だけ光を帯び、陽の部屋全体を包み込む。

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