〜龍と刀〜
本来は……
「まったく……頭割る気かよ」
あの後、しばし拷問を受けた。しばし、と言うか小一時間程。段々と個人的な質問が増えた。当初の目的は忘れられていたのだろう。
「何があったのだ?」
「ああ白銀、実はな……」
壊に決闘を申し込まれた事、その手紙のせいで二人に拷問を受けた事を洗いざらい話した。白銀にとって重要だったのは当然、前者の話だったようで。
「……決着をつける、と?」
「そうだ。俺は飛澤と、白銀は封牙と。明後日の夕方頃に」
白銀の前に座り、腕を組む。何か思うところがあるのか、白銀は黙ったままだ。
「ついに、ついにこの因縁を断ち切れる時が来たか……」
「あー、喜んでるとこ悪いが、ちょっと封牙について教えてくれないか?戦ってる時のだけじゃ情報が足りない」
「ふむ。確かに……奴の能力は話したな?」
陽は無言で頷き、白銀に、続きを話すように促す。
「昨日も言った通り、我らは魂だけの存在。外部から魔力を吸収し続けなければ消滅してしまうのだ」
「だから、封牙は持ち主と斬った相手の魔力を食うんだな」
「うむ。そして奴の元の姿こそがそれを助長する原因でもある」
白銀や封牙が魂だと言うのなら、本来の姿があるのが普通だ。どうして今まで気が付かなかったんだろう、と首を傾げていると、
「人を喰う虎、だったか……血に飢えた獣。誇りを捨ててまで力を欲したという化け物だ」
封牙の事を語り出した。陽は黙って聞く事に徹する。
「自身が頂点に居なければ気に入らないという奴だった。自身を従えようとするならばそれを喰い、下に付くなら力を示せと無茶を言う」
「王様気取りだったんだな。俺は絶対イヤだね」
「力こそ絶対、喰らう事こそ王の証。……そんな奴だ」
最後は吐き捨てるようにし、話は終わりだと言わんばかりに沈黙。
陽としても次に何を聞けば良いのか思い付かず、二人の間に静かな空気が。
「ん、そうだ。白銀はどうだったんだよ?その頃は」
ポン、と手を叩き白銀に聞く。少し白銀の過去を知ってみたかったからだ。
「……我か?面白い話は無いぞ」
「だってよ、俺は白銀の過去って何も知らないんだ。お前は俺の過去を知ってる、なら教えてくれても良いんじゃねえか?」
若干興味本意だが、知りたいのは事実である。例えば、白銀の本来の姿など。
「ぬ、正論を……仕方ない。簡単に話させてもらう……」
「お、待ってました〜」
パチパチと拍手。やはり興味の方が勝っていたみたいだが、優しい白銀は気に留めはしなかった。
「我の姿は……」
「うんうん」
「紗姫いつから……?」
陽の隣で、いつの間にか長い金髪を揺らしていた紗姫。本当に気付かなかった。
「龍神君が、過去を喋れ!って脅迫してる辺りから?」
「脅迫なんてしてねえよ。第一、白銀に通用する訳ねえだろ」
「まあまあ、細かい気にしないの。さ、白銀さんどうぞどうぞ」
「……」
白銀、沈黙。
どうやら紗姫の介入のせいらしい。
「紗姫、お前が悪いぞ?俺がせっかく白銀との仲を深めようと……」
「わ、私?違うわよ!あんまり言うと、手紙の話広めるから」
「うぐっ」
急に冷たい口調に変化。この様子だと、月華も相当根に持っていそうだ。
「仕方ねえ……白銀、また今度頼む」
「そうだな」
「あ、その時は呼んでよね?」
白銀の姿を知る事になるのは、もう少し先になりそうだった。
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