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短編小説
I could hear a your beat.
久しぶりに来たんだ、この砂浜に。

何年ぶりだろう、ここに来たのは。

ただ、久しぶりに来て思った事は、おかしな事に、つい数日ぶりに来たような気持ちがあったこと。

懐かしいとは、思えないこと。

昨日だって、一昨日だって。
それくらい近い日に、ここに来たみたいだ。

おかしいな、ここには何年も来てないのに。
来れなかったのに。


潮風が吹いた。
風が髪を揺らす。

それは暖かく、まるで、貴方を思い出させるようで。


ああ、だからか。だからなのか。

この砂浜は、貴方を思い出させる。

――数年前、一緒に来た貴方を。



“貝殻を耳にあてると、風の音がするって言うだろ?”

“それがさ、違うんだよ。
貝殻を耳にあてると、
一番大切な人の、心臓の動く音が聞こえるんだよ”

“ほら、聞いてみろって”


“どう、俺の音心音、聞こえた?”




笑って言う貴方が眩しくて。

その笑顔はまるで、いつか描いた絵の太陽の様で。

恥ずかしくて俺は、“聞こえない”と返したんだ。


でも、聞こえてたんだ、本当は。

壊れるくらい、強く早く打つ貴方の鼓動が。



「……聞こえませんよ」

頬を伝う涙。

聞こえる筈の、貴方の鼓動。

茶化した様に言った癖に、目が真剣だった。

分かってたんだ、本当は。
貴方が馬鹿みたいに、照れていたことなんて。


「馬鹿だな…俺……」




ああ、あの時、何で言えなかったのだろう。

貴方の鼓動が、聞こえていたことを。


















I could hear your a beat.

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