[携帯モード] [URL送信]

短編小説
Shake my finger.
寒い、部屋に入りたい。

急いで歩く足で向かうのは、温かい馬鹿の家。



“俺ん家、今、暖房壊れてんだわ”



口実は持ってきた。
あとは、お前の家に転がりこむだけ。
あとは、震える指で、インターフォンを鳴らすだけ。

この震えは何だ?

そんなに寒いのか、今日は?

まさか、お前の家に行く緊張で…?

頭の中で色んな考えが過ったが、答えが出ぬまま、馬鹿の家に着いた。


ゆっくりと、ポケットから冷たい手を取り出す。

インターフォンまであと数センチ。

やばい、震えが止まらない。

馬鹿野郎、何で震えてんだよ。

何で押せねぇんだよ。

悴んで押せないだけ?

いや、それだけじゃない。

本当は……。



ガチャ



「あ……」


間抜けな顔して、出てきた馬鹿。

何ていいタイミングなんだろう。


「いいタイミングですよね」



ばーか、同じ事考えてんじゃねぇ。



「暖房、壊れたんですよね?
寒い中、わざわざ俺の家に来てくれたんですよね、他にもっと近い人が居ただろうに」



何だその勝ち誇った顔。

しかも何で口実まで当ててるんだよ。



「早く入って下さい、寒いのにご苦労様です」



ばーか、笑ってんじゃねぇ。



「寒い。暖房壊れた」



「知ってますよ」



「温かいもの欲しい」



「すぐ温めますから、俺が」




ばーか、調子に乗んな。



何て思っても、温かい部屋に全部吸い取られてしまった。



いつの間にか止まっていた震えは、まだ気付かない。




















Shake my finger.

[*back][next#]

6/29ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!