キミのトナリ A 「おい!勝手に人の部屋入んなっていつも言ってんだろ!!」 「だって、生柊ちゃんが見たかったんだもの。」 怒ってる朔弥はもちろん恐いけど、女の子は無表情なまま。 ちっとも朔弥に負けていない。 そんな二人のやり取りを、僕はただハラハラしながら見つめていた。 「乃絵!」 朔弥の口調が一層強くなると、仕方なさそうにその子は立ち上がり、ゆっくりとした足取りで部屋を出て行った。 「…ったく、何か言われた?」 「…あっ、アト…付けられたのって…。」 「ああ、結構目立つな。」 そういって鎖骨近くを確かめるようにスーッと指でなぞると、そこへキスを落とした。 「あっ」 ただ触れられただけなのに、どうしてこんなにも一瞬で身体が熱くなるんだろう。 変な声を抑えようと慌てて口を押さえても、すぐにその手は捕まり、今度は唇を優しくついばむようにキスされる。 もう僕の頭の中は朔弥でいっぱいで、さっきまでの疑問すら考えられなくなる。 朔弥から与えられるこの甘く痺れる感覚の中に、いつまでも浸っていられたらいいのにと、心の底から思った。 [前へ][次へ] [戻る] |