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キミのトナリ
K
サラサラと流れる髪を愛しさを込めて優しく撫でる。
ふいに上げられた潤んだ瞳には、俺と同じ気持ちが書かれていた。
ゆっくりと縮まる唇の距離。
長く感じるこの感覚は嫌いじゃない。
そして、もうすぐ触れるというところで甘い雰囲気を壊すように、俺の携帯がうるさく鳴り出した。
画面に表示された相手に舌打ちしてから出ると、やっぱりイラッと来る内容の電話で…。

「…兄貴の所行くけど、行く?」

一瞬戸惑いの表情をするも、すぐにコクンと頷いた。
どうやら、まだ会っていない兄貴の存在が気になるらしい。
俺以外の人間、特に兄貴に興味がいくのは、若干…いや、キスの邪魔されたし、かなりムカつくが仕方がない。

「続き、してからな。」

また邪魔が入らないようにと、少し強引に抱き寄せて、可愛い唇に触れる。
真っ赤になった柊がめちゃくちゃ可愛かったからすぐに上機嫌を取り戻せ、柊を連れて兄貴の所まで行くことにした。



「やあ、いらっしゃい!」

「…こっ…ここここんにちは!!」

やっと解けたはずの緊張感が、再び柊の身体を固くした。
声を上擦せるのは、初めて会った頃から変わってない。
それも愛おしく思いながら、柊を来客用に置かれたソファーに座らせ、電話で頼まれた資料を兄貴に渡した。

「へぇー。」

「何だよ?」

「お前も、そんな顔するようになったんだな。」

どんな顔だよ?と聞いてやるのをあえてやめた。
どうせろくな答えは返ってこない。
ここは兄貴の事務所で、俺が将来働くであろう場所だ。
兄貴は建築士で、ここの主、つまり社長。
と言っても、小さな工務店だけど。
いつもは顔見知りの従業員が数名いるが、今日は誰の姿もなかった。

「はい、ご苦労。今日はみんな休みだからゆっくりしてけよ!ハルも来るって言ってたし。って、柊ちゃんカワイイなぁ!!ねぇ、お兄ちゃんって言ってみて!お願い!!」

「ええっ!…おっ、お、お兄…ちゃん?」

「クー!!良いね!ヤバい!!可愛すぎて鼻血出そう!!」

確かにカワイイ…けど、首をコクンと斜めにしながらとか、鼻血出そうってか、このまま押し倒したい気分だ、兄貴のハイテンションにはため息が漏れる。
今の顔、ハルさんに見せてやりてぇ。
そう思った矢先、そのハルさんの姿がちょうど入口のガラス扉から見え、
俺はひそかにほくそ笑んだ。



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