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キミのトナリ
L
―柊 Side―

朔弥のお兄さんに会うのに緊張して、口の中がカラカラなまま、恋人だと紹介された本田くんのお兄さんとの挨拶で、ますますパニックだった。
とても綺麗な大人な雰囲気の二人に圧倒され、お茶を入れるという朔弥の後を、この場所から離れたい一心で追った。
そんな僕の様子に気づいた朔弥が心配そうに顔を除き込んできたので、気を使わせまいと引き攣りながらも精一杯笑ってみせる。

「…クソッ!あのバカ兄貴。何がお兄ちゃんだ!」

ブツブツ文句を言いながら、僕を安心させようとしてくれたみたいに優しく抱きしめてくれる。
言葉だけじゃなく、こうやって態度で示してくれることが嬉しくて、ますます好きになってしまう。
ギュッとされてると少し落ち着いて来て、散らかった頭の中をなんとか整理するよう努めた。
えっと、本田くんのお兄さんが朔弥のお兄さんの恋人って事は、つまり男同士って事で、僕達と一緒なんだ。
ちょっと心強いな。
それにしても、どうして急に僕のまわりにこんなカッコイイ人達ばっかり集まっちゃってるんだろう?
なんか自分が見苦しく思えてくる…なんて軽くへこみながらお兄さん達のところへ戻ると、今まで食べた中で1番美味しいカツサンドと、優しいハルさんとの話が、いつの間にか落ち込んだ気持ちを和らげてくれた。


お兄さんはすごくノリが良くてしかもヒゲが似合っててカッコイイ人だった。
ちょっとワイルド系だ。
朔弥と目元が似てるから、何年後には朔弥もこんなふうになるのかな?と未来の朔弥をちょっとだけ想像してみた。
ハルさんは、男の人に言って良いのか分からないけど、綺麗ですごく美人な人だった。
本田くんとはあまり似てないかな。
優しい人で、僕なんかにすごく気を使ってくれていろいろ話かけてくれたのに、緊張し過ぎてうまく話せなかったなぁ。
でも、僕の話すことをちゃんと聞いてくれて、すごく嬉しかった。
お兄さんにはちょっと怒ってるみたいだったけど、さりげなくおかわりのお茶を出したり、何気ない2人のやりとりを見ていて、とてもお似合いな2人だなと思った。
朔弥の家族やハルさん、それから本田くん、もちろん朔弥も、急にたくさんの人たちとの関わりが広がって嬉しいけど、どう関係を築けば良いのか分からない。
誰にも知られたくない自分を知られないために、今まで他人を避けて生きてきた自分、それとは対照的に本当は誰かに知って欲しいと叫んでいる自分。
僕のことを知ってもらって仲良くなりたいけど、…全ては知られたくない。
だから自分からも相手に踏み込めない。
それは朔弥にも同じで、そういう僕を知られて嫌われたくない。
ずっと朔弥が好きな僕でいたい。
今まで知らなかった朔弥を知って、もっともっと好きになって、僕の中にまた大きな不安が広がっていた。

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